
相続人(法定相続人)とは,相続の開始によって,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する者のことをいいます。要するに,相続財産(遺産)を受け継ぐ人のことです。
誰が法定相続人となるかは,民法によって定められています。具体的に言うと,法定相続人となることができるのは,被相続人の配偶者,子,直系尊属,兄弟姉妹です。第1順位が子、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹です。配偶者は常に相続人となります。
相続人(法定相続人)とは?
遺産相続の場面において,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになるのは「相続人(そうぞくにん)」です。
すなわち,相続人とは,被相続人が遺した相続財産を受け継ぐことになる立場の人のことです。
誰が相続人となるかは,法律(民法)によって定められています。そのため,法的には、相続人のことを「法定相続人」と呼んでいます。
法定相続人は,相続財産,すなわち被相続人に属していた一切の権利義務(ただし,被相続人の一身に専属していたものを除く)を包括的に承継することになります(民法896条)。
そのため,プラスの財産(資産)だけでなく,マイナスの財産(負債)も引き継ぐことになります。また,形のある財産だけでなく,被相続人が有していた法律上の地位も受け継ぐことになります。
法定相続人となるのは誰か?
前記のとおり,誰が相続人となるかは,民法によって定められています。法定相続人と呼ばれる所以です。
法定相続人となるのは,相続開始時点において存在している「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」「配偶者」です(民法887条、889条、890条)。これら以外の方は,親族であっても法定相続人とはなりません(ただし,遺贈を受けることは可能です。)。
この「子」には,養子や非嫡出子も含まれます。
かつては,非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の半分とされていましたが,最高裁判所によって,そのようは差別は憲法違反であるとされました(最大決平成25年9月4日)。
そして,上記判例を受けて平成25年12月5日に民法が改正され(施行は平成25年12月11日から),嫡出子であろうと非嫡出子であろうと,法定相続分は「子」として同じ割合であるということになりました。
尊属とは,自分の先祖にあたる人です。そのうちの直系の人が直系尊属です。例えば,父母,祖父母,曽祖父母・・・が,この直系尊属に当たります。
もっとも,これら「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」「配偶者」の全員が相続人となるわけではなく,これら法定相続人間には優先順位が定められています。
すなわち,「子」が第1順位,「直系尊属」が第2順位,「兄弟姉妹」が第3順位となっています。配偶者には順位はなく,配偶者がいる場合,その配偶者は,他の相続人とともに必ず相続人となります。
簡単にいえば,配偶者は常に相続人になるので,優先順位はありませんが,その他の法定相続人については,子がいれば子が,子がいなければ直系尊属が,子も直系尊属もいなければ兄弟姉妹が法定相続人になるということです。
例えば,被相続人に配偶者と子がいる場合,相続人となるのは,この配偶者と子です。子に劣後する直系尊属や兄弟姉妹は相続人となりません。
子がおらず,配偶者と直系尊属がいるという場合は,この配偶者と直系尊属が相続人となります。
また,法定相続人となる人が,相続開始の時点で死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失っていた場合には,その法定相続人の子が代襲相続人となり,相続権を失った人に代わって相続を受けることになります(民法887条2項)。
なお,相続開始の時点でまだ胎児であった場合であっても,民法886条によって,生きて出生した場合には,相続開始の時点にさかのぼって相続人となるとされています。
法定相続人となる「子」
民法 第887条
- 第1項 被相続人の子は、相続人となる。
- 第2項 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
- 第3項 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
子は、第1順位の法定相続人です(民法887条1項)。子は,嫡出子に限られません。非嫡出子であっても,「子」としての相続権を有します。
前記のとおり,かつては民法において,非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の半分になるという規定がありましたが,これを違憲とする最大決平成25年9月4日を受けて民法が改正され,現在では,非嫡出子であっても,嫡出子と同等の相続分を有することとなっています。
また,相続人である子が被相続人よりも先に死亡している場合などには,その子の子が(代襲)相続人となります。
法定相続人となる「直系尊属」
民法 第889条
- 第1項 次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
- 第1号 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
- 第2号 被相続人の兄弟姉妹
- 第2項 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。
尊属とは,血がつながっている人(血族)のうちで,,先祖に当たる人のことをいいます。その尊属のうちでも,直系の人のことを「直系尊属」といいます。例えば,父母,祖父母などが直系尊属に当たります。
相続人となるのは,この直系血族のうちで最も親等が近い人です(民法889条1項1号)。
例えば,父母と祖父母がいたとすれば父母が,父母がいない場合には祖父母が,父母も祖父母もいない場合には曾祖父母が,それぞれ相続人となるということです。
なお,優先順位としては子に後れますから,子がいる場合には,直系尊属は法定相続人にはなりません。
法定相続人となる「兄弟姉妹」
文字どおり,兄弟や姉妹です。なお,兄弟姉妹は,子・直系尊属に次ぐ第3順位の法定相続人ですから,子や直系尊属がいる場合には,法定相続人となりません(民法889条1項2号)。
また,相続人である兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡している場合などには,その兄弟姉妹の子が(代襲)相続人となります(民法889条2項、887条2項)。
法定相続人となる「配偶者」
民法 第890条
- 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。この場合において、第887条又は前条の規定により相続人となるべき者があるときは、その者と同順位とする。
被相続人の配偶者も相続人となります(民法890条)もっとも、配偶者には、前記の「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」と異なり、順位というものがありません。つまり、配偶者は、常に相続人となるということです。
具体的には、以下のようになります。
- 相続人として配偶者と子がいる場合には,配偶者と子らが2分の1の法定相続分を有することになります。
- 相続人として配偶者と直系尊属がいる場合には,配偶者が3分の2・直系尊属らが3分の1の法定相続分を有することになります。
- 相続人として配偶者と兄弟姉妹がいる場合には,配偶者が4分の3・兄弟姉妹らが4分の1の法定相続分を有することになります。