
パチンコ・パチスロ・競輪・競馬・競艇・オートレースなどのギャンブルによって,著しく財産を減少させたか,または,過大な債務を負担した場合,免責不許可事由に該当し(破産法252条1項4号),自己破産をしても免責の許可を受けられないことがあります。
ただし,必ず免責不許可になるわけではなく,諸般の事情を考慮した上で,裁判官の裁量により免責(裁量免責)が許可されることも少なくありません。
自己破産における免責不許可事由
自己破産を申し立てる最大の目的は,裁判所に免責を許可してもらうことです。免責が許可されると,借金・債務の支払義務が免除されます。
もっとも,自己破産を申し立てれば必ず免責が許可されるというわけではありません。破産法252条1項各号に列挙された一定の事由がある場合には,免責が不許可となることもあります。
この破産法252条1項各号に列挙された一定の事由のことを「免責不許可事由」と言います。
この免責不許可事由の1つに、「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」があります(破産法252条1項4号)。
ギャンブルは免責不許可事由に該当するか?
破産法 第252条
- 第1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
- 第4号 浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
免責不許可事由の1つに「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」があります(破産法252条1項4号)。
ギャンブルをすることは、上記のうちの「賭博」に該当します。例えば,パチンコ・パチスロ・競馬・競輪・競艇・オートレース・宝くじ等の購入などは「賭博」に当たります。
ただし,ギャンブルをしたら常に免責不許可事由となるのかと言うと,そうではありません。
ギャンブルをしたことによって、「著しく財産を減少させ」たか、または、「過大な債務を負担した」場合に、免責不許可事由に該当することになります。
どの程度が「著しい」財産減少なのか,債務負担が「過大」なのかは,一概にはいえません。債務者の収入や資産の額,生活状況,その他の負債の状況などから個別具体的に判断するほかないでしょう。
とはいえ、少なくとも、収入の範囲内で、生活費を支出した後の余剰を使い、借入れをしないでギャンブルをしていたのであれば、免責不許可事由にはならないということです。
ただし、借金は生活費に回していたので、借金をギャンブルに使ったわけではない、という言い訳は通らないでしょう。
これは、単に借金の使い道を生活費に充てていただけです。トータルで見ると、ギャンブルによって生活費が不足したため借金しているのであって、結局は、ギャンブルが原因で借金していることに他ならないからです。
ギャンブルが原因でも免責が許可される場合
破産法 第252条
- 第2項 前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。
前記のとおり,ギャンブルによって著しく財産を減少させたか,または,過大な債務を負担した場合には,免責不許可事由に該当することになります。
もっとも,免責不許可事由があると必ず免責が不許可になるわけではありません。
免責不許可事由がある場合でも,「裁判所は,破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは,免責許可の決定をすることができる」ものとされています(破産法252条2項)。これを「裁量免責」と言います。
したがって,一般的に,ギャンブルで借金を増やした場合は,自己破産できない(免責を許可してもらえない)と言われていますが,それは正しくありません。
ギャンブルによって債務を増やしてしまった場合でも,裁量免責の制度により免責を許可されることがあるということです。
むしろ,ギャンブルによって債務を増やしてしまった場合でも,債務額が数千万円など過剰なものでない限り,免責が許可されることは少なくありません。
ただし,裁量免責を受けるためには,ギャンブルを完全にやめた上で今後もギャンブルをしないことを誓約し、ギャンブルの内容や借金をした経緯、持っている財産等を正直に申告して、真摯に破産手続に協力していく必要があります。