この記事にはPR広告が含まれています。

破産管財人等の業務を妨害すると自己破産しても免責されないのか?

自己破産の画像
point

免責不許可事由の1つに,「不正の手段により,破産管財人,保全管理人,破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと」があります。破産管財人等の業務を不正な手段で妨害した場合、免責不許可事由となります

免責不許可事由となる破産管財人等の業務を妨害する行為

破産法 第252条

  • 第1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
  • 第9号 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。

自己破産をする最大の目的は、裁判所に免責を許可してもらうことです。免責が許可されると、借金の支払義務がすべて免除されます。借金を支払わなくてもよくなるということです。

もっとも、自己破産を申し立てたからといって、必ず免責が許可されるとは限りません。破産法252条1項各号に列挙された免責不許可事由がある場合には、免責が不許可とされることもあり得ます。

破産法252条1項9号によれば,破産管財人・保全管理人・破産管財人代理・保全管理人代理の職務を妨害することは,免責不許可事由に該当することになります。「管財業務等妨害行為」と呼ばれる免責不許可事由です。

破産手続において免責が許可されれば,破産者は借金などの債務の支払を免れることができるという大きな効果を得ますが,その反面,債権者は大きな損失を被ってしまうおそれがあります。

それだけに,債権者からある程度の理解を得るためには,破産手続を適正に進行させ,債権者の利益を少しでも図れるようにする必要があります。その役割を担うのが,破産管財人や保全管理人(または破産管財人代理・保全管理人代理)です。

それにもかかわらず,これら破産管財人等の職務を妨害するという行為は,破産手続の適正な進行を妨げる行為であり,破産手続への信頼を大きく損ないます。そのため,破産管財人等の業務を妨害する行為は,免責不許可事由とされているのです。

破産管財人等の職務を妨害したこと

破産管財人は,裁判所から選任されて破産者の財産を調査・管理・処分し,債権者に対する弁済または配当等を行う人のことで,破産手続の中心的役割を担っています。

他方,保全管理人とは,債務者の財産を管理する人のことをいいます。破産管財人との大きな違いは,債務者の財産を処分する権限がないということです。

破産手続の開始前に,債務者が勝手に財産を処分したり,債権者が勝手に債務者の財産を持って行ってしまったりするのを防止することが業務の基本です。

ちなみに,個人の方の自己破産において,保全管理人が選任されるということはほとんどないと思われます。

この破産管財人や保全管理人は代理を立てることができます。代理とは言っても,一般的な意味での代理人ではなく,補助者というべき立場です。こういう人たちのことを破産管財人代理・保全管理人代理といいます。

言うまでもなく,債務者財産の管理・処分は破産手続においてもっとも重要な事項ですから,それを行う破産管財人等の職務妨害は,破産手続そのものの妨害と言っても過言ではありません。そのため,免責不許可事由とされるのです。

例えば,管財人が引き渡すように要求した財産を引き渡さなかったとか,管財人が取り寄せようとした書類を取り寄せられないように邪魔をしたなどという場合などが,管財業務等妨害に当たります。

その他にも,上記のような明白に妨害といえる場合でなくても,管財業務に協力しない場合には,比較的広く,「妨害」に該当するものとして扱われることがあります。

不正の手段の意味

破産管財人等の職務妨害行為はがあったとしても,それが「不正の手段」によって行われたものでなければ免責不許可事由には当たりません。逆に言うと,正当な手段によって管財業務を妨げることになったとしても,免責不許可にはならないのです。

たとえば,管財人の法律解釈が間違っていたり,あまりに非常識な業務を行っている場合には,正当な手段をもって反論することができるでしょう。

しかし,少なくとも,現在は,破産管財人に選任されるのは弁護士だけという運用になっていますので,そういう場合はあまり多くないでしょう。

仮に法律解釈に争いがある場合でも,管財人と議論することで,あるいは裁判所を交えて協議することで妥当な解決がされる場合が通常です。

したがって,正当な手段で管財業務を妨害するということは,実際にはかなり少ないといえるでしょう。

裁量免責の可能性

少なくとも,破産・免責手続の実務において,この破産管財人等の業務妨害行為は,浪費ギャンブル換金行為などよりも,よほど免責が不許可となる可能性の高い免責不許可事由であるといってよいでしょう。

浪費・ギャンブル等の免責不許可事由があっても,それが異常なほど高額とはいえず,しかも,真摯に反省して生活態度を改めようと努力していれば,裁量により免責が与えられるのが通常です。

しかし、破産管財に等の業務妨害行為は、破産手続そのものの妨害です。したがって、上記のような反省も努力もないということのもっとも明確な現れと言えますから、裁量免責も認められず、免責不許可となる可能性が高いでしょう。

タイトルとURLをコピーしました