
自己破産において免責許可を得るためには、まず裁判所に対して免責許可の申立てをしなければなりません。免責許可の申立ては破産手続開始の申立てと一緒に行うのが通常です。免責許可の申立ては、管轄の裁判所に、免責許可の申立書を提出する方式で行います。
免責許可の申立ての方式
破産規則 第1条
- 第1項 破産手続等(破産法(平成16年法律第75号。以下「法」という。)第3条に規定する破産手続等をいう。以下同じ。)に関する申立て、届出、申出及び裁判所に対する報告は、特別の定めがある場合を除き、書面でしなければならない。
破産手続と免責手続は、破産法上、一応別個の手続とされていますから、それらの手続を始めてもらうための申立ても別個であり、破産手続開始の申立てとを免責手続を開始してもらうための申立ては同じものではありません。
免責手続を開始してもらうためには、破産手続開始の申立てとは別個に、「免責許可の申立て」をしなければなりません。
この免責許可の申立ては、書面でしなければならないとされています(破産規則1条1項)。
この書面を「免責許可の申立書」といいます(ただし、後述のとおり、破産手続開始の申立書と免責許可の申立書は一体とされているのが通常です。)。
免責許可申立書の記載事項
破産規則 第2条
- 第1項 破産手続等に関する申立書(破産手続開始の申立書(法第21条第1項に規定する破産手続開始の申立書をいう。以下同じ。)を除く。)には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
- 第1号 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所
- 第2号 申立ての趣旨
- 第2項 前項の申立書には、同項各号に掲げる事項を記載するほか、次に掲げる事項を記載するものとする。
- 第1号 申立てを理由づける具体的な事実
- 第2号 立証を要する事由ごとの証拠
- 第3号 申立人又は代理人の郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)
- 第3項 第1項の申立書には、立証を要する事由についての証拠書類の写しを添付するものとする。
- 第4項 法第125条第1項に規定する破産債権査定申立て、法第173条第1項に規定する否認の請求、法第178条第1項の規定による役員責任査定決定の申立て又は法第244条の11第3項において準用する法第178条第1項の規定による受託者等若しくは会計監査人の責任に基づく損失のてん補若しくは原状の回復の請求権の査定の裁判の申立てをする者は、当該申立てをする際、申立書及び証拠書類の写しを相手方に送付しなければならない。
- 第5項 裁判所(破産裁判所(法第2条第3項に規定する破産裁判所をいう。以下同じ。)を含む。)は、必要があると認めるときは、破産手続開始の申立てその他の破産手続等に関する申立てをした者に対し、破産財団(法第2条第14項に規定する破産財団をいう。以下同じ。)に属する財産(破産手続開始前にあっては、債務者の財産)に関する権利で登記又は登録がされたものについての登記事項証明書又は登録原簿に記載されている事項を証明した書面を提出させることができる。
破産規則 第74条
- 第1項 免責許可の申立書(破産手続開始の申立ての後に免責許可の申立てをする場合の申立書に限る。)その他の免責手続において当事者又は利害関係人が裁判所に提出すべき書面には、破産事件の表示を記載しなければならない。
- 第2項 法第248条第2項の規定による申立てをするときは、免責許可の申立書には、同項の事由及びその事由が消滅した日をも記載しなければならない。
- 第3項 法第248条第3項の最高裁判所規則で定める事項は、破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権(破産手続開始の決定後に免責許可の申立てをする場合にあっては、破産債権)であって第14条第1項第2号又は第3号に掲げる請求権に該当しないものを有する者の氏名又は名称及び住所並びにその有する債権及び担保権の内容とする。
免責許可の申立書には、破産規則に規定された事項を記載する必要があります。
破産規則第2条第1項、第74条第1項・第2項に規定する記載事項は、必ず記載しなければならない記載事項です。これを「必要的記載事項」といいます。
他方、破産規則第2条第2項に規定されている記載事項は、必要的記載ではない者の、免責手続の円滑な進行のために記載することが望ましい記載事項です。これを「訓示的記載事項」といいます。
免責許可申立書の添付資料
破産法 第248条
- 第3項 免責許可の申立てをするには、最高裁判所規則で定める事項を記載した債権者名簿を提出しなければならない。ただし、当該申立てと同時に債権者名簿を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる。
免責許可の申立書には、債権者名簿を添付しなければなりません(破産法248条3項)。ただし、破産手続開始の申立てにおいて債権者一覧表を提出している場合には、別途、債権者名簿を提出する必要はありません。
また、免責許可の申立書や債権者名簿には、各種の証拠書類を添付しなければならないとされています(破産規則2条3項~5項、74条3項)。
免責許可申立ての実務
前記のとおり、免責許可の申立書には、各種の記載事項や添付書類が必要となります。
もっとも、実務では、個人の自己破産の場合、破産手続開始の申立てと免責許可の申立ては、同時になされるのが通例です。
そのため、裁判所でも、「破産手続開始・免責許可の申立書」として、破産手続開始の申立書と免責許可の申立書が一体となった書式が用意されています。
添付資料も、破産手続開始申立書と免責許可申立書は重なる部分が多く、一方で添付している資料があれば、他方で同じ資料を添付する必要はありません。
この添付資料についても、裁判所ごとにどのようなものを添付すればよいのかが決められています。
また、個人破産の場合、(通常は考えられないのですが)仮に、免責許可申立てをせずに破産手続開始申立てだけしてしまったという場合でも、免責許可申立てがあったものとみなされます。
そのため、実務上は、免責許可申立書を独立のものとして考える必要は、あまりないといってよいでしょう。