
自己破産をする最大の目的は、借金・債務について「免責」を得ることです。免責が許可されるかどうかは、破産手続とは別個の免責手続において決められることになります。
ただし、別個の手続とは言っても、実際には、破産手続と免責手続は同時に申し立てられ、同時並行的に手続が進行していくのが通常です。
免責手続とは
免責とは、債務を履行しなければならない責任を免れることです。つまり、借金等の債務をもう支払わなくてよくなるという意味です。
この免責の効果は、裁判所による免責許可決定の確定によって生じます。自己破産を申し立てる最大の目的は、この免責許可決定をもらうことにあるといってよいでしょう。
そして、この免責が許可されるかどうかについては、免責手続によって決められます。
免責手続とは、この免責許可決定を与えてよいかどうかを審査し、免責許可または不許可の決定をする手続です。
免責手続と破産手続の関係
破産手続は、破産者の財産を換価処分して金銭に換え、それを債権者に弁済または配当するという手続です。免責については、何の調査も判断されません。
免責については、破産手続とは別の手続である免責手続において調査や判断がなされるのです。つまり、厳密にいえば、破産手続と免責手続は、まったく別の手続なのです。
もっとも、免責手続は単体で行われるものではありません。免責手続は、破産手続に付随する手続ですから、破産をせずに免責だけ許可してもらうことはもちろんできません。
破産手続によって資産を処分するなどした人だけが免責手続を受けることができるのです。
これは、考えてみれば当然のことです。自分の財産は手放さないけれども借金は支払いたくないなどということが許されるわけがありません。
そのため、まず破産手続によって全財産を処分し、それでも支払いきれなかった部分のみ免責が許可されることになっているのです。
そういう意味で言うと、免責手続と破産手続は、一応別個の手続ではありますが、実質的には不可分一体の手続と言えます。
現に、この2つの手続は、いずれも破産法に規定されており、実際の運用上も、免責手続と破産手続は、同時並行的に調査や判断が行われていきます。
免責手続の流れ
前記のとおり、免責手続は、破産手続と同時並行的に手続が進んでいくのが通常ですが、あくまで両者は違う手続ですので、手続の内容は異なります。
免責手続の開始
破産手続が破産手続開始の申立てがなければ始まらないのと同様に、免責手続も免責許可の申立てがなければ始まりません。
自己破産の場合には、この破産手続開始の申立てと免責許可の申立ては同時に行われるのが通常です。ただし、破産手続開始の申立てしかしなかった場合でも、同時に免責許可の申立てもしたものとして扱われます。
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免責の調査
免責の審理は、通常破産手続と並行して行われます。破産管財人が選任されている管財事件の場合には、破産管財人が破産の調査・処理と並行して、免責に関する調査を行います。
免責に関する調査とは、具体的に言うと、免責不許可事由の有無です。免責不許可事由があると判断された場合には、破産管財人はさらに、裁量免責を与えてもよいかどうかについて調査を行い、裁判所に意見を提出します。
なお、破産管財人が選任されない同時廃止事件の場合には、裁判官または裁判所書記官が免責に関する調査をします。
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免責審尋
免責手続においては、免責審尋という手続が行われます。これは、裁判官が直接破産者に質問をして、免責を与えるのが妥当かどうかを判断するという手続です。
免責審尋では、債権者も免責に関する意見を述べることができます。また、管財事件の場合には、破産管財人が裁判所に対し、免責に関する意見を述べることになります。
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免責に関する決定
免責の調査が終了すると、最後に、裁判所による免責に関する決定がなされます。裁判所による決定ですから、この免責に関する決定も裁判の一種です。
免責を与えることが妥当であると判断された場合には、免責許可決定がなされます。反対に、免責を与えることが妥当ではないと判断された場合には、免責不許可決定がなされます。
免責許可決定がなされた場合、この決定に不服がある債権者や破産管財人は、即時抗告という手続によって不服申立てをすることができます。
免責不許可決定がなされた場合は、債務者(破産者)が、即時抗告よって不服申立てをすることができます。