この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

自己破産をしても処分しなくてよい自由財産には、破産管財人によって破産財団から放棄された財産も含まれます。
自由財産とは
自己破産の手続においては,破産者が有していた財産は,破産管財人によって管理・換価処分され,それによって得られた金銭が各債権者に弁済または配当されることになります。
もっとも,個人(自然人)の場合、自己破産した後もその破産者である個人は生活していかなければなりません。
すべての財産が処分されてしまうと,破産後の生活ができなくなってしまい,債務者の経済的更生を図る破産法の趣旨に沿わない結果となってしまうおそれがあります。
そこで、個人の破産手続においては,生活に必要となる一定の財産は処分しなくてもよいとされています。この破産をしても処分しなくてもよい財産のことを「自由財産」といいます。
自由財産にはさまざまなものがありますが、その1つに、破産管財人によって破産財団から放棄された財産があります。
破産管財人による破産財団からの放棄
破産法 第78条
- 第2項 破産管財人が次に掲げる行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。
- 第12号 権利の放棄
自由財産となるのは、基本的に、破産手続後の債務者の最低限度の生活を維持するための財産です。
ただし、破産手続を円滑に遂行するために自由財産として扱われる場合もあります。それが、破産財団からの放棄された財産です。
換価処分が困難または不可能な財産の取扱い
破産財団に組み入れられた財産であっても,簡単に換価処分できないものは少なくありません。
例えば、かなりの山奥にあってまったく価値がなく、誰も買ってくれそうもない不動産や、一部のマニアにしか売れなさそうな物などは、換価処分が容易ではありません。
むしろ、これを売るために買主を探したり、保管費用をかけたりする方がお金がかかる場合があります。無用に時間がかかり、いつまでたっても破産手続が終わらないおそれもあります。
また、換価処分のための調査や保管の費用も破産財団から支払われるので、破産財団を増やそうとしているにもかかわらず、かえって破産財団が減少する矛盾が生じることもあるでしょう。
そこで、このような換価が困難な財産を破産財団から除外するための制度が、破産財団からの放棄です。
破産財団からの放棄の手続
破産財団からの放棄とは、破産管財人が、裁判所の許可を得て、換価処分が不可能ないし困難な財産を破産財団から除外する措置をとることです(破産法78条2項12号)。
破産管財人によって破産財団から放棄された財産は、自由財産となり、自己破産しても処分されないことになります。つまり、破産者の手元に返ってくるのです。
破産財団からの放棄がされる場合
前記のように,換価処分が不可能ないし困難な場合に破産財団から放棄されるのが通常ですが,破産者の経済的更正のために、生活必需品が破産財団から放棄されることもあります。
もっとも,経済的更正のために特定の財産を自由財産として扱う措置は、自由財産の拡張によるのが筋です。そのため、経済的更生のために破産財団から財産を放棄する場合はあまり多くないでしょう。
なお、破産財団からの放棄は、あくまで破産管財人が裁判所の許可を得て行うものです。自由財産拡張と異なり、破産者の申立てによって破産財団から放棄してもらうことはできません。


