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推定計算で算出した過払金は訴訟で認められるのか?

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推定計算によって算出した過払金の返還を請求した場合、推定計算に合理性が認められなければ、その過払金返還請求も認められません。

推定計算とは

貸金業者が取引履歴の全部または一部を開示してこなかった場合、その取引履歴の不開示部分については、消費者側で取引の経過を再現しなければいけません。

全部を開示してこない貸金業者というのはかなり減少していると思いますが,一部は廃棄してしまったなどの理由を言って,一部を不開示とする貸金業者は今でも少なくありません。

とはいえ,消費者の側で,1回1回のの貸し借りの記録をとっておくことなどほとんど考えられません。

そもそも,貸金業者との取引の態様自体が,1つ1つの貸し借りを重視しない態様であるのですから,当然と言えば当然です。

しかし,いざ債務整理をする場合には,そうもいっていられません。貸金業者が開示をしない以上,現実的には,消費者側で取引経過を再現しなければなりません。

そこで,厳密に1つ1つの取引を再現することは難しいという現実を踏まえ,ある程度,推定によって取引経過を再現し,それに基づいて引き直し計算をすることになります。

これを「推定計算」と言います。

この推定計算は,不開示部分の取引の経過を純粋に再現しようというものですが,さらに,推定計算の一種として,一部不開示の場合に,取引履歴の当初の残高を0円とする冒頭ゼロ計算(残高無視計算)という推定方法もあります。

なお,残高無視計算については,推定の一種では無いという考え方もありますが,多くの裁判官が残高無視計算は推定計算の一種であると考えているため,実務上は推定の一種と捉えられてしまうのが一般的です(そのため「ゼロ推定計算」と呼ばれることもあります。)。

推定計算によって過払金が算出された場合

推定計算が最も争われるのは、過払金返還請求の場合です。

推定計算によって過払金が算出された場合、貸金業者に対して過払い金返還を請求します。しかし、推定計算の場合、交渉で返還してもらうことはまずありません。訴訟によって回収することになります。

推定計算はあくまで推定です。したがって,推定の根拠を示さなければ,貸金業者も納得しないでしょうし,裁判所も認定ができません。

そこで、過払金返還請求訴訟では、推定計算の根拠を示す必要があります。要するに,その推定計算に合理性があるということを、消費者の側で主張立証していく必要があるのです。

そして,その場合に重要なことは,どれだけ証拠があるのか,ということになってきます。

推定計算の合理性を立証するための証拠

純粋な推定計算(完全推定計算)の場合には,できる限り,個々の取引の参考となるような証拠を提示する必要があります。

貸金業者との取引において交付された書類は有力です。特に契約書は参考になります。貸付金額,利率,毎月の支払日,支払金額等が記載されていますので,取引を再現するのに役立ちます。

また,貸金業所から交付された領収書やATM取引明細書も,個々の取引の日付や支払い金額等の情報が記載されていますので,それを基にして他の取引を推定することが可能となります。

決定的な証拠となる場合が多いのは,銀行の通帳や口座の取引履歴などです。

仮に,貸金業者との間の貸し借りを銀行振り込みで行っていた場合,貸し借りの記録が逐一記録されているのですから,取引履歴そのものを再現することも可能となりますし,そうでなくとも,かなり推定が可能となるでしょう。

通帳そのものがない場合には、銀行等に取引履歴の発行を求めることになります。ただし、あまりに古いものは、廃棄されてしまっていることもあります。

証拠となる書面(書証)がない場合

実際には、前記のような各書類が見当たらないという場合は少なくないでしょう。その場合には,消費者本人の陳述をまとめた陳述書を作成することになります。

要するに,いつころに契約して借入れを開始し,利率はこのくらいで,毎月いくらくらい支払っており,このころに借り増しをし,いくらくらい支払っていた・・・などを文書にまとめておくということです。

裁判でも,陳述書は一応の証拠になります。さらに,その陳述書の内容を裏付けるような補助証拠が提出できれば,さらに陳述書の内容の信用性を担保することができ,裁判所も心証をとりやすくなります。

例えば,子どもが私立学校に入学したため入学資金〇〇円を支払いきれなかったので,〇〇から〇〇円を借りたというような場合,子どもの年齢や入学した学校,その入学資金,それを支払った記録などが用意できれば,陳述に信用性があると認められることもあります。

場合によっては、陳述書提出の上で、当事者尋問が行われることもあります。

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