民事再生手続とは,再生計画を定めて債務を整理することによって,破産を回避しつつ債務者の経済的更生を図る手続です。この民事再生手続を簡易化し,個人でも利用しやすいようにした手続が「個人再生(個人民事再生)」です。
個人再生(個人民事再生)の記事一覧
個人再生(個人民事再生)の記事一覧は、以下のとおりです。
- 住宅資金特別条項(記事一覧)
- 個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは?
- 住宅ローンの残っている自宅を処分せずに借金を整理する方法とは?
- 住宅資金特別条項を利用できるかどうかが問題となる事例とは?(まとめ)
- 住宅資金特別条項の要件(記事一覧)
- 個人再生で住宅資金特別条項を利用するための要件とは?(まとめ)
- 個人再生の再生計画に住宅資金特別条項を定めるための要件とは?
- 個人再生で住宅資金特別条項を定めた再生計画が認可されるための要件(不認可事由がないこと)とは?
- オーバーローンでなければ個人再生の住宅資金特別条項を利用できないのか?
- 諸費用ローンがあっても個人再生の住宅資金特別条項は利用できるか?
- 住宅資金特別条項の「住宅」(記事一覧)
- 住宅資金貸付債権(記事一覧)
- 住宅ローンの巻戻し(記事一覧)
- 住宅ローン以外の債権の担保が設定されている住宅でも個人再生の住宅資金特別条項を利用できるか?
- 住宅以外の不動産に共同抵当権が設定されている場合でも個人再生の住宅資金特別条項を利用できるか?
- ペアローン(記事一覧)
- 住宅資金特別条項の内容(記事一覧)
- 住宅ローンの一部弁済許可(記事一覧)
- 住宅資金特別条項の効力(記事一覧)
なお、その他債務整理に関する記事は、以下のページをご覧ください。
個人再生(個人民事再生)の概要
前記のとおり、民事再生手続とは,再生計画を定めて債務を整理することによって,破産を回避しつつ債務者の経済的更生を図る手続です。この民事再生手続を簡易化し,個人でも利用しやすいようにした手続が「個人再生(個人民事再生)」です。
例えば、通常再生の場合は法人も利用できますが、個人再生は個人しか利用できません。通常再生では債務額に上限はありませんが、個人再生では5000万円が上限とされています。費用も、格段に差があります。
この個人再生が成功すると、借金は減額された上で長期の分割払いにしてもらえます。そのため、債務整理の方法として非常に有効です。また、住宅資金特別条項によって、住宅ローンの残る自宅を維持したまま債務整理できる場合もあります。
自己破産の場合、債務全額の免責がありますが、財産の処分が必要です。他方、個人再生では、全額免責ではないものの、財産の処分は必須とされていません。ただし、財産の価額は清算価値として、計画弁済総額の算定の基準とされます。
また、個人再生の場合は、資格制限などもありません。そのため、個人再生をしても、資格を使った仕事を続けることが可能です。
そのため、任意整理では返済額が大きくなり過ぎる場合や、処分できない財産がある、資格を使って仕事をしているなど自己破産できない理由がある場合には、個人再生を検討することになります。
ただし、個人再生は、要件が厳格です。しかも、手続が複雑な上、再生債務者自身で手続を進めていかなければならないというデメリットもあります。
個人再生の要件としては、民事再生手続全般に共通する要件だけなく、個人再生に固有の要件もあります。また、小規模個人再生と給与所得者等再生には、それぞれに別個の要件があります。かなり複雑です。
さらに、要件を満たしているとしても、裁判所に虚偽の説明をしたり、、決められた手続を行わなかったり、一部の債権者にだけ返済をしてしまうなどの行為をすると、個人再生の手続において不利益を受ける可能性があるので注意が必要です。
個人再生には、2種類の手続が用意されています。小規模個人再生と給与所得者等再生です。小規模個人再生が基本類型であり、給与所得者等再生はその特則に当たる手続です。
小規模個人再生とは、個人である債務者のうち、将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、再生債権額が5000万円を超えないものが行うことを求めることができる個人再生手続です。個人再生の基本類型とされています。
他方、給与所得者等再生は、サラリーマンなど将来的に確実に安定した収入を得る見込みがある個人の債務者のうちで、無担保債権が5000万円を超えないものが行うことを求めることができる個人再生手続です。小規模個人再生の特則とされています。
この小規模個人再生と給与所得者等再生は、手続の流れ自体はほとんど変わりませんが、要件や、減額の幅、債権者の意向がどれくらい影響するかなどの違いがあります。
借金の負担を減らす方が有利なことは間違いありません。そのため、まずは小規模個人再生を利用できるかを検討し、反対する債権者が多数であるなど利用が難しい場合には、給与所得者等再生を検討することになります。
また、この個人再生には、住宅資金特別条項という制度が設けられています。住宅資金特別条項が認められると、住宅ローンの残っている自宅を処分されずに、住宅ローン以外の借金・債務を個人再生によって整理することが可能となります。
個人再生の最終的な目的は、裁判所に債務の減額や分割払いを定めた再生計画を認可してもらうことです。再生計画の認可とは、具体的に言うと、裁判所に再生計画認可決定を発令してもらうということです。
再生計画認可決定が確定した後、再生計画に基づく返済が開始されます。この返済の途中に返済できなくなってしまった場合、再生債権者によって再生計画を取り消されます。ただし、取り消される前に、再生計画変更やハードシップ免責の申立てなどの手続があります。
この個人再生は、個人事業者・自営業者でも利用できます。個人事業者が個人再生をする場合は、小規模個人再生を選択することになるでしょう。個人事業を継続したまま債務を整理できることもあります。
この個人再生を弁護士に依頼する場合、弁護士費用として着手金と成功報酬が必要です。また、裁判費用や実費も必要となります。裁判費用は、個人再生委員が選任されるか否かによって大きく異なります。
弁護士の探し方
「個人再生をしたいけれど、どの弁護士を選べばいいのか分からない」
という方は少なくないでしょう。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理・個人再生の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、個人再生をより深く知りたい方のために、参考書籍を紹介します。
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。