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住宅以外の不動産に共同抵当権が設定されている場合でも個人再生の住宅資金特別条項を利用できるか?

住宅資金特別条項の画像
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住宅資金貸付債権における「住宅」だけでなく、その「住宅」以外の不動産に住宅ローンなどの住宅資金貸付債権を担保するための共同抵当が設定されている場合、その「住宅」以外の不動産に住宅資金貸付債権を担保するための共同抵当に劣後する担保権が設定されているときは、個人再生における住宅資金特別条項を利用できないとされています(民事再生法198条1項ただし書き後段)。

共同抵当とは

債権の支払いを担保するために、不動産等に抵当権を設定することがあります。この場合の担保される債権を被担保債権といいます。

もっとも、被担保債権の回収をより確実にするためには、担保が多い方がよいことは間違いありません。そこで、1つの被担保債権を担保するために、複数の不動産に抵当権を設定することも可能とされています。

このように、1つの被担保債権を担保するために複数の不動産に抵当権を設定することを「共同抵当」といいます。

銀行や住宅金融支援機構などの住宅ローン会社から住宅ローンを借りる際には、ローンの目的である住宅に住宅ローンの支払いを担保するための抵当権が設定されるのが通常です。

もっとも、住宅ローンで、住宅だけでなく、住宅の敷地や周辺私道等も併せて購入したような場合には、その住宅、敷地、私道等の全部に住宅ローンを担保するための抵当権が設定されます。

住宅ローン債権を担保するために、住宅、敷地、周辺私道など複数の不動産に抵当を設定していますので、これは共同抵当ということになります。

また、投資用物件など住宅以外にも複数の不動産を持っている場合には、住宅ローン債権を担保するために、住宅だけでなく、その住宅以外の不動産に共同抵当が設定されることもあります。

共同抵当における売却代金の配当

共同抵当が実行され、競売によって抵当不動産が売却された場合、その売却代金からどのように抵当権者が弁済を受けるのかについては、同時配当と異時配当という2つの方法があります。

同時配当とは、共同抵当が設定されている複数の不動産を同時に売却し、その各不動産の売却価額の割合に応じて配当を受けるという方法です。

他方、異時配当とは、共同抵当が設定されている不動産のうちの一部のみ売却して配当を受け、不足がある場合に、別の不動産を売却して配当を受けるという方法です。

同時配当であっても異時配当であっても、共同抵当権者が受ける配当は同じ額です。方法が異なるというだけです。

後順位抵当権者がいる場合における売却代金の配当

1つの不動産に複数の担保権を設定することは可能です。ただし、複数の担保権が設定される場合には、その担保権に優先順位が付けられます。

例えば、1つの不動産に複数の異なる被担保債権を担保するための複数の抵当権が設定されている場合には、優先される順に、1番抵当権、2番抵当権、3番抵当権・・・というように、優先順位に番号が付されます。

この場合、優先順位が上の抵当権を「先順位抵当権」といい、優先順位が下の抵当権を「後順位抵当権」といいます。

共同抵当が設定されている不動産のどれかに共同抵当権者に劣後する後順位抵当権者がいる場合、共同抵当権者が同時配当を選ぶのか異時配当を選ぶのかによって後順位抵当権者の受けられる利益が変わってしまうのでは、後順位抵当権者に不測の不利益を与えてしまいます。

そこで、共同抵当権者が異時配当の方法を選択して特定の不動産のみ売却した場合、その不動産の後順位抵当権者は、共同抵当権者が同時配当の場合に受けたであろう金額に達するまで、共同抵当権者が他の不動産について有している抵当権に代位することができるものとされています。

住宅以外にも不動産を所有している場合

個人再生において「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用するためには、対象とする住宅ローンが「住宅資金貸付債権」に該当するものである必要があります。

この住宅資金貸付債権における「住宅」(以下「住宅」という場合は住宅資金貸付債権における住宅を意味します。)以外の不動産に共同抵当権が設定されている場合にも住宅資金特別条項を利用できるのかを検討する前に、まず、そもそも住宅以外に不動産を所有している場合でも住宅資金特別条項を利用できるのかを考える必要があります。

この点、住宅以外に不動産を所有している場合には住宅資金特別条項を利用できなくなる、という法律の定めはありません。

つまり、住宅以外に不動産を所有していたとしても、住宅資金特別条項を利用することは可能です。

ただし、仮に住宅資金貸付債権における「住宅」に該当する建物が複数あった場合でも、住宅資金特別条項の対象とすることができる建物はあくまで1つだけです。

対象建物以外の建物は、資産価値があれば清算価値に計上しなければならないので、注意が必要です。

住宅以外の不動産にも共同抵当権が設定されている場合

民事再生法 第198条

  • 第1項 住宅資金貸付債権(民法第500条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者が当該代位により有するものを除く。)については、再生計画において、住宅資金特別条項を定めることができる。ただし、住宅の上に第53条第1項に規定する担保権(第196条第3号に規定する抵当権を除く。)が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に第53条第1項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。

前記のとおり、住宅ローンを組む際、目的である住宅のほかに、敷地、周辺私道等や別に所有している不動産にも共同抵当が設定されることがあります。

住宅以外の不動産に共同抵当権が設定されているというだけで、住宅資金特別条項を利用できなくなるわけではありません。

しかし、住宅以外の不動産に共同抵当が設定されている場合において、その住宅以外の不動産に、共同抵当に劣後する担保権が設定されているときは、住宅資金特別条項を利用できないとされています(民事再生法198条1項ただし書き後段)。

つまり、住宅以外の不動産に共同抵当が設定されており、かつ、その不動産に後順位抵当権者がいる場合には、住宅資金特別条項を利用できないと定めているのです。

例えば、住宅ローンを担保するために、住宅に抵当権を設定するほか、住宅以外の不動産にも共同抵当権を設定し、その住宅以外の不動産の共同抵当権が1番抵当権であったとします。

この住宅以外の不動産に、上記共同抵当設定後に、住宅ローンとは別の債権を担保するための2番抵当権が設定された場合には、住宅資金特別条項を利用することはできなくなるということです。

住宅以外の不動産に後順位抵当権者がいる場合において、共同抵当権者である住宅ローン会社が、その住宅以外の不動産の抵当権のみ実行し異時配当の方法によって弁済を受けると、後順位抵当権者は、住宅ローン会社が同時配当の場合に受けたであろう金額に達するまで、住宅ローン会社が住宅について有している抵当権に代位できます。

この後順位抵当権者が代位できる権利は住宅ローン債権ではありませんから、住宅資金貸付債権とはいえません。したがって、住宅資金特別条項は利用できません。

そうすると、後順位抵当権が代位によって住宅ローン会社が有していた抵当権を実行すると、住宅が失われ、住宅資金特別条項を定めても無意味となってしまう可能性があります。

そこで、住宅以外の不動産に後順位抵当権者がいる場合には、住宅資金特別条項を利用できないとされているのです。

なお、住宅資金特別条項を利用できなくなるのは、あくまで「後順位」の担保権が設定されている場合です。

住宅ローンを担保するための共同抵当に優先する「先順位」の担保権が設定されているだけの場合は、住宅資金特別条項の利用は妨げられません。

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