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個人再生の住宅資金特別条項にはどのような内容を定めることができるのか?

住宅資金特別条項の画像
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個人再生において住宅資金特別条項(住宅ローン特則)に定めることができる内容には、①そのまま型(正常返済型)②期限の利益回復型③リスケジュール型④元本猶予期間併用型⑤合意型があります(民事再生法199条)。

住宅資金特別条項に定めることができる内容

個人再生には「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」と呼ばれる制度が用意されています。

住宅資金特別条項制度とは、住宅ローンなどの住宅資金貸付債権について、他の再生債権と異なる住宅資金特別条項という条項を再生計画に定めることができるという制度です。

通常の再生債権については、民事再生法の定めに従って再生債権の減額や分割払いを定めることになります。

他方、住宅資金特別条項には、通常の再生債権のように住宅ローン総額の減額を定めることはできませんが、住宅ローンについて喪失した期限の利益を回復して支払う方法やリスケジュールして支払う方法などを定めることができます。

具体的に言うと、住宅資金特別条項としては、以下のタイプの内容を定めることができます(民事再生法199条)。

住宅資金特別条項の内容
  • そのまま型(正常返済型)
  • 期限の利益回復型
  • リスケジュール型
  • 元本猶予期間併用型
  • 合意型

この住宅資金特別条項を定めた再生計画が認可されれば、住宅資金特別条項の内容に従って住宅ローンなどを支払っていくことができるようになり、その結果、住宅ローンの残っている自宅を維持したまま借金を整理することができるようになるのです。

そのまま型(正常返済型)

民事再生法 第199条

  • 第1項 住宅資金特別条項においては、次項又は第3項に規定する場合を除き、次の各号に掲げる債権について、それぞれ当該各号に定める内容を定める。
  • 第1号 再生計画認可の決定の確定時までに弁済期が到来する住宅資金貸付債権の元本(再生債務者が期限の利益を喪失しなかったとすれば弁済期が到来しないものを除く。)及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息(住宅資金貸付契約において定められた約定利率による利息をいう。以下この条において同じ。)並びに再生計画認可の決定の確定時までに生ずる住宅資金貸付債権の利息及び不履行による損害賠償 その全額を、再生計画(住宅資金特別条項を除く。)で定める弁済期間(当該期間が5年を超える場合にあっては、再生計画認可の決定の確定から5年。第3項において「一般弁済期間」という。)内に支払うこと。
  • 第2号 再生計画認可の決定の確定時までに弁済期が到来しない住宅資金貸付債権の元本(再生債務者が期限の利益を喪失しなかったとすれば弁済期が到来しないものを含む。)及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息 住宅資金貸付契約における債務の不履行がない場合についての弁済の時期及び額に関する約定に従って支払うこと。

住宅資金特別条項の内容の1つに「そのまま型」があります(民事再生法199条1項2号)。「正常返済型」とも呼ばれることがあります。

住宅資金特別条項のうちで最も利用されているのは、この「そのまま型」でしょう。

そのまま型(正常返済型)とは、文字どおり、当初の約定に変更を加えず、その約定どおりに弁済を継続していくというものです。

当初の約定どおりに支払っていくのですから、住宅ローン債権者から反対が出る可能性も小さく、最もリスクのない方法と言ってよいでしょう。

ただし、そのまま型を選択できるのは、再生計画の認可までの間に住宅ローンの滞納が無い場合でなければなりません。

そのまま型を利用する場合には、個人再生手続開始後も住宅ローンの返済が継続できるようにするため、裁判所から一部弁済許可を得ておく必要があります。

期限の利益回復型

住宅資金特別条項の内容の1つに「期限の利益回復型」があります(民事再生法199条1項1号)。住宅資金特別条項の原則型です。

期限の利益回復型とは、すでに遅滞に陥っている部分と約定の債務を再生計画で定めた期間内に弁済することで、遅滞に陥ったことによって生じていた期限の利益喪失の効果を失わせるものです。

住宅ローンの支払いを遅滞(滞納)すると、期限の利益が失われます。つまり、分割払いではなくなり、一括で住宅ローンを支払わなければならなくなるということです。

期限の利益喪失型とは、滞納した部分を支払って滞納を解消し、かつ、約定の部分を継続的に支払うことによって、一括払いになってしまった住宅ローンを再び分割払いに戻すことができるというタイプです。

滞納を解消するための期間は、3年から5年とされています。

リスケジュール型

民事再生法 第199条

  • 第2項 前項の規定による住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがない場合には、住宅資金特別条項において、住宅資金貸付債権に係る債務の弁済期を住宅資金貸付契約において定められた最終の弁済期(以下この項及び第4項において「約定最終弁済期」という。)から後の日に定めることができる。この場合における権利の変更の内容は、次に掲げる要件のすべてを具備するものでなければならない。
  • 第1号 次に掲げる債権について、その全額を支払うものであること。
     住宅資金貸付債権の元本及びこれに対する再生計画認可の決定の確定後の住宅約定利息
     再生計画認可の決定の確定時までに生ずる住宅資金貸付債権の利息及び不履行による損害賠償
  • 第2号 住宅資金特別条項による変更後の最終の弁済期が約定最終弁済期から10年を超えず、かつ、住宅資金特別条項による変更後の最終の弁済期における再生債務者の年齢が70歳を超えないものであること。
  • 第3号 第1号イに掲げる債権については、一定の基準により住宅資金貸付契約における弁済期と弁済期との間隔及び各弁済期における弁済額が定められている場合には、当該基準におおむね沿うものであること。

住宅資金特別条項の内容の1つに「リスケジュール型」があります(民事再生法199条2項)。

リスケジュール型とは、利息遅延損害金を含めた住宅ローンの全額を弁済することを条件として、支払期限を延長し、各回の弁済額を減額できるというタイプです。

このリスケジュール型は、前記の期限の利益回復型による再生計画認可の見込みがない場合にのみ選択することができるとされています。

リスケジュール型で定めることができる支払期限は、最大で10年間、かつ、再生債務者の年齢が70歳を超えない範囲です。

この期限までの間に利息と遅延損害金を含めた住宅ローンの全額支払うことができるのであれば、リスケジュール型を選択することが可能となります。

なお、リスケジュール後の弁済期の間隔は、住宅ローンの原契約で定められている基準に概ね沿うものでなければならないとされています。

元本猶予期間併用型

民事再生法 第199条

  • 第3項 前項の規定による住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の見込みがない場合には、一般弁済期間の範囲内で定める期間(以下この項において「元本猶予期間」という。)中は、住宅資金貸付債権の元本の一部及び住宅資金貸付債権の元本に対する元本猶予期間中の住宅約定利息のみを支払うものとすることができる。この場合における権利の変更の内容は、次に掲げる要件のすべてを具備するものでなければならない。
  • 第1号 前項第1号及び第2号に掲げる要件があること。
  • 第2号 前項第1号イに掲げる債権についての元本猶予期間を経過した後の弁済期及び弁済額の定めについては、一定の基準により住宅資金貸付契約における弁済期と弁済期との間隔及び各弁済期における弁済額が定められている場合には、当該基準におおむね沿うものであること。

住宅資金特別条項の内容の1つに「元本猶予期間併用型」があります(民事再生法199条3項)。

元本猶予期間併用型とは、前記のリスケジュール型に、再生計画期間内において元本の一部の弁済猶予を受けることを加えるものです。

この元本猶予期間併用型は、前記の期限の利益回復型とリスケジュール型による再生計画認可の見込みがない場合にのみ選択することができます。

リスケジュール型を前提としたタイプであるため、利息と遅延損害金を含めた住宅ローンの全額を最大で10年間、かつ、再生債務者の年齢が70歳を超えない範囲の期間内に支払うことが必要です。

ただし、元本猶予をしてもらえる期間は、3年から5年の期間に限定されています。

また、リスケジュール後の弁済期の間隔は、住宅ローンの原契約で定められている基準に概ね沿うものでなければならないとされています。

合意型

民事再生法 第199条

  • 第4項 住宅資金特別条項によって権利の変更を受ける者の同意がある場合には、前三項の規定にかかわらず、約定最終弁済期から10年を超えて住宅資金貸付債権に係る債務の期限を猶予することその他前三項に規定する変更以外の変更をすることを内容とする住宅資金特別条項を定めることができる。

住宅資金特別条項の内容の1つに「合意型」があります(民事再生法199条4項)。

合意型とは、住宅ローン債権者の同意がある場合に、これまで述べてきたいずれのタイプとも異なる条項を定めることができるとするものです。

合意型は住宅ローン債権者の同意を得て定めるタイプであるため、基本的には、どのような内容の住宅資金特別条項でも定めることが可能です。

例えば、リスケジュールをしつつその期限を10年以上にすることもできますし、理屈の上では、住宅ローンを減額してもらうことも不可能ではありません。

ただし、実際に住宅ローンの総額を減額してもらえる場合はほとんどないでしょう。

いずれにしても、住宅ローン債権者の同意を得て行うものですから、同意さえ得ることができれば、そのまま型と並んでリスクの小さいタイプといえます。

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