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小規模個人再生・給与所得者等再生に共通する個人再生に固有の再生計画認可要件とは?

個人再生の画像
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個人再生における再生計画を認可してもらうためには、民事再生全般に共通する要件だけでなく、個人再生に固有の要件も満たしている必要があります。

小規模個人再生および給与所得者等再生に共通する個人再生に固有の再生計画認可要件としては、①再生債権額が5000万円を超えないこと、②再生計画に基づく弁済額が民事再生法231条2項3号から4号に定める最低弁済額を下回っていないことがあります。

個人再生に固有の再生計画認可要件

個人再生を利用して借金の減額や長期の分割払いなど支払の条件を変更してもらうためには、裁判所によって再生計画の認可を決定してもらう必要があります。

この再生計画認可決定をしてもらうためには、民事再生法で定める再生計画認可の要件を満たしていなければなりません。

個人再生は個人にも利用できるように手続を簡易化した民事再生の特則ですが、民事再生手続であることに違いはありません。したがって、民事再生共通の再生計画認可要件を満たしている必要があります。

とはいえ、特則ですので、通常の民事再生と異なる個人再生に固有の再生手続開始の要件もあります。

個人再生には小規模個人再生給与所得者等再生という2つの手続が用意されています。これらにはそれぞれ異なる要件もありますが、両者に共通する個人再生固有の再生計画認可の要件もあります。

小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する個人再生に固有の再生計画認可の要件としては、以下のものがあります。

小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する個人再生に固有の再生計画認可要件

民事再生全般に共通する再生計画認可の要件・不認可事由

民事再生法 第174条

  • 第1項 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
  • 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
  • 第1号 再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
  • 第2号 再生計画が遂行される見込みがないとき。
  • 第3号 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
  • 第4号 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。

個人再生に固有の再生計画認可要件を説明する前に、念のため、民事再生全般に共通する再生計画認可要件および不認可事由について説明しておきます。

前記のとおり、小規模個人再生・給与所得者等再生も民事再生手続であることには変わりありませんから、民事再生全般に共通する再生手続開始要件を満たしていなければ再生計画は認可されません。

民事再生全般に共通する再生計画認可の要件とは「民事再生法174条2項各号に定める再生計画不認可事由がないこと」です。

ただし、給与所得者等再生の場合には再生計画の決議が行われないので、民事再生法174条2項3号および4号は適用されません。

したがって、小規模個人再生と給与所得者等再生に適用される民事再生共通の不認可事由とは、以下のものを指すことになります。

民事再生全般に共通する不認可事由のうち小規模個人再生と給与所得者等再生に共通して適用されるもの
  • 再生手続に不備を補正できない法律違反があること
  • 再生計画に不備を補正できない重大な法律違反があること
  • 再生計画が遂行される見込みがないこと

したがって、この3つの再生計画不認可事由がないことが、小規模個人再生と給与所得者等再生に適用される民事再生共通の再生計画認可のための要件となります。

再生債権総額が5000万円を超えないこと

民事再生法 第231条

  • 第1項 小規模個人再生において再生計画案が可決された場合には、裁判所は、第174条第2項(当該再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものであるときは、第202条第2項)又は次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
  • 第2項 小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
  • 第1号 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき。
  • 第2号 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第84条第2項に掲げる請求権の額を除く。)が5000万円を超えているとき。
  • 第3号 前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円を超え5000万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第84条第2項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の10分の1を下回っているとき。
  • 第4号 第2号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の5分の1又は100万円のいずれか多い額(基準債権の総額が100万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の5分の1が300万円を超えるときは300万円)を下回っているとき。
  • 第5号 再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合において、再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき。

民事再生法 第241条

  • 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
  • 第1号 第174条第2項第1号又は第2号に規定する事由(再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合については、同項第1号又は第202条第2項第2号に規定する事由)があるとき。
  • 第2号 再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき。
  • 第3号 再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合において、第202条第2項第3号に規定する事由があるとき。
  • 第4号 再生債務者が、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき。
  • 第5号 第231条第2項第2号から第5号までに規定する事由のいずれかがあるとき。
  • 第6号 第239条第5項第2号に規定する事由があるとき。
  • 第7号 計画弁済総額が、次のイからハまでに掲げる区分に応じ、それぞれイからハまでに定める額から再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額に2を乗じた額以上の額であると認めることができないとき。
     再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前2年間の途中で再就職その他の年収について5分の1以上の変動を生ずべき事由が生じた場合  当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法 (昭和40年法律第33号)第74条第2項に規定する社会保険料(ロ及びハにおいて「所得税等」という。)に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額
     再生債務者が再生計画案の提出前2年間の途中で、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった場合(イに掲げる区分に該当する場合を除く。)  給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額
     イ及びロに掲げる区分に該当する場合以外の場合  再生計画案の提出前2年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を2で除した額
  • 第3項 前項第7号に規定する1年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める。

前記のとおり、個人再生には、民事再生共通の要件のほかに、個人再生に固有の再生計画認可の要件があり、しかも、そのうちには、小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する要件もあります。

その小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する再生計画認可の要件の1つが「再生債権総額が5000万円を超えないこと」です。

小規模個人再生および給与所得者等再生のいずれも、「無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第84条第2項に掲げる請求権の額を除く。)が5000万円を超えている」ことが再生計画不認可事由とされているからです(民事再生法231条2項2号、241条2項5号)。

厳密にいうと、5000万円を超えてはならないのは「すべての再生債権の総額」の総額ではなく、再生債権のうちでも「無異議債権の額及び評価済債権の額の総額」です。

あくまで無異議債権・評価済債権が基準となりますので、以下の債権額は5000万円を超えるか否かの算定の基礎には含まれません。

5000万円の算定に含まれないもの
  • 住宅資金特別条項を利用する場合の住宅資金貸付債権の金額
  • 別除権付き債権の債権額のうちで別除権行使によって弁済を受けることができると見込まれる金額
  • 再生手続開始後に発生した利息の請求権(民事再生法84条2項1号)
  • 再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権(民事再生法84条2項2号)
  • 再生手続参加の費用の請求権(民事再生法84条2項3号)

したがって、例えば、サラ金等からの通常の借入れが3000万円で、その他に住宅ローンが3000万円あり、債務額合計は6000万円です。

しかし、その住宅ローンについて住宅資金特別条項を利用する場合、住宅ローンの3000万円は算定基礎とならないので、再生債権額は3000万円になります。

したがって、再生債権額が5000万円を超えているとはいえないことになるので、「再生債権総額が5000万円を超えないこと」の不認可事由には該当しないことになります。

なお、この「再生債権総額が5000万円を超えないこと」という要件は、再生計画認可・不認可の段階だけでなく、再生手続開始の要件ともされています。

再生手続開始の時点で再生債権額が5000万円を超えていないと思われていたため手続が開始されたものの、その後の債権調査により、実は5000万円を超えていたと判明した場合には、再生計画は不認可となるということです。

計画弁済総額が最低弁済額以上であること

小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する再生計画認可の要件の1つに「計画弁済総額が最低弁済額以上であること」があります。

最低弁済額とは、文字どおり、個人再生の再生計画が認可されたとしても、最低でもその金額は弁済をしなければならない金額のことです。

最低弁済額は、前記民事再生法231条2項3号および4号に定められています。具体的には、以下のとおりです。

最低弁済額の基準
  • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円以下の場合で、かつ基準債権額が100万円未満の場合は、その基準債権額
  • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円以下の場合で、かつ基準債権額が100万円以上500万円未満の場合は、100万円
  • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円以下の場合で、かつ基準債権額が500万円以上1500万円未満の場合は、基準債権の5分の1の額
  • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円以下の場合で、かつ基準債権額が1500万円以上の場合は、300万円
  • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円を超え5000万円以下の場合には、その無異議債権等の10分の1以上の額

基準債権とは、無異議債権および評価済債権から別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権と民事再生法84条2項各号の債権を除いた債権のことをいいます。

また、この最低弁済額の算定においても、やはり住宅資金特別条項を利用する場合の住宅資金貸付債権額は含まれません。

小規模個人再生・給与所得者等再生のいずれの場合も、計画弁済総額が上記最低弁済額を上回っていなければ、再生計画は認可されないことになります。

なお、無異議債権および評価済債権額が5000万円を超える場合は、前記のとおり、個人再生手続を利用する自体ができません。

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