この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生の申立てにおいては、個人再生申立書のほか、債権者一覧表を添付して提出する必要があります(民事再生法221条3項、244条)。
この債権者一覧表には、①再生債権者の氏名・名称、各再生債権の額・原因、②別除権者については、その別除権の目的である財産および別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる再生債権の額(担保不足見込額)、③住宅資金貸付債権については、その旨、④住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは、その旨、⑤再生債権者の住所・郵便番号・電話番号・ファクシミリの番号、⑥法第84条(再生債権となる請求権)第2項各号に掲げる請求権については、その旨、⑦執行力ある債務名義または終局判決のある債権については、その旨、⑧再生債権額の全部または一部につき異議を述べることがある旨、を記載する必要があります。
債権者一覧表の記載事項
民事再生法 第221条
- 第3項 前項の申述をするには、次に掲げる事項を記載した書面(以下「債権者一覧表」という。)を提出しなければならない。
- 第1号 再生債権者の氏名又は名称並びに各再生債権の額及び原因
- 第2号 別除権者については、その別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる再生債権の額(以下「担保不足見込額」という。)
- 第3号 住宅資金貸付債権については、その旨
- 第4号 住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは、その旨
- 第5号 その他最高裁判所規則で定める事項
- 第4項 再生債務者は、債権者一覧表に各再生債権についての再生債権の額及び担保不足見込額を記載するに当たっては、当該額の全部又は一部につき異議を述べることがある旨をも記載することができる。
民事再生規則 第114項
- 第1項 債権者一覧表には、法第221条(手続開始の要件等)第3項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項をも記載しなければならない。
- 第1号 再生債権者の住所、郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)
- 第2号 法第84条(再生債権となる請求権)第2項各号に掲げる請求権については、その旨
- 第3号 執行力ある債務名義又は終局判決のある債権については、その旨
- 第2項 債権者一覧表には、副本を添付しなければならない。
民事再生規則 第140条
- 第114条(債権者一覧表の記載事項等)、第115条(住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある場合の特則)、第117条から第126条まで(個人再生委員、再生債権の届出の方式、再生債権に関する資料の送付、届出再生債権を記載した書面、異議の方式、特別異議申述期間を定める決定等の送達、異議の撤回、債権者一覧表等の副本等による閲覧等、再生債務者による債権者一覧表等の開示、異議の通知及び再生債権の評価の申立ての方式等)、第128条から第130条の2まで(財産目録の記載の簡略化、再生債務者による財産目録等の開示、再生計画案の提出時期及び再生計画により変更されるべき権利等を記載した書面)及び第132条から第134条まで(再生計画変更の申立ての方式等、計画遂行が極めて困難となった場合の免責の申立ての方式及び再生手続廃止の申立ての方式)の規定は、給与所得者等再生について準用する。この場合において、第130条の2第2項中「第230条(再生計画案の決議)第4項」とあるのは、「第240条(再生計画案についての意見聴取)第2項」と読み替えるものとする。
個人再生(小規模個人再生・給与所得者等再生)を申し立てる際には、個人再生申立書のほかに、債権者一覧表も提出する必要があります。
この債権者一覧表には、以下の事項を記載しなければなりません(民事再生法221条3項、4項、244条、民事再生規則114条1項、140条)。
これらの記載事項を記載しておかなければ、個人再生の手続を開始してもらうことができません。
再生債権者の氏名・名称および再生債権の額・原因
個人再生の債権者一覧表には「再生債権者の氏名・名称および再生債権の額・原因」を記載する必要があります(民事再生法221条3項1号、244条)。
再生債権とは、再生債務者に対する再生手続開始前の原因に基づく財産上の請求権のことをいいます(民事再生法84条1項)。そして、この再生債権を有する債権者のことを「再生債権者」といいます。
個人再生を開始してもらうためには、どのような再生債権があるのか、その再生債権額はいくらなのかが分からなければ、再生手続開始原因があるのか、返済能力があるのかも分かりません。
そのため、債権者一覧表には、再生債権者の氏名・名称および再生債権の額・原因を記載しなければならないとされているのです。
別除権付債権の担保不足見込額
個人再生の債権者一覧表には「別除権付債権の担保不足見込額」を記載する必要があります(民事再生法221条3項2号、244条)。
個人再生においては、別除権付債権の債権者は、再生手続外において別除権を行使して優先的弁済を受けることができます。
別除権行使によっても債権の全額を弁済できない場合、別除権付債権者は、その不足額についてのみ個人再生手続に参加できます。
例えば、別除権が付いている500万円の債権がある場合で、別除権の行使によって300万円を回収することができる見込みがあるときは、別除権付債権者は、不足見込額200万円についてのみ再生債権者として個人再生手続に参加できるということです。
そこで、債権者一覧表には、別除権付債権の担保不足見込額を記載しなければならないとされているのです。
上記の例でいえば、不足見込額200万円の債権を債権者一覧表に記載しなければならないということです。
住宅資金特別条項を利用する場合
住宅資金特別条項を利用しようという場合には、個人再生の債権者一覧表に当該再生債権が「住宅資金貸付債権である旨」および「住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨」を記載する必要があります(民事再生法221条3項3号、4号、244条)。
住宅ローンなど住宅資金貸付債権も再生債権ですから、債権者一覧表に記載しなければなりません。
もっとも、その再生債権について住宅資金特別条項を利用する場合には、その再生債権が住宅資金貸付債権である旨、それについて住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨も債権者一覧表に記載する必要があります。
これらを記載しておかなければ、住宅資金特別条項を利用することができなくなってしまいます。住宅資金特別条項を利用する場合には、忘れずに記載しておかなければなりません。
再生債権者の住所・郵便番号・電話番号・FAX番号
個人再生の債権者一覧表には「再生債権者の住所・郵便番号・電話番号・ファクシミリの番号」を記載する必要があります(民事再生法221条3項5号、244条、民事再生規則114条1項1号、140条)。
個人再生の手続が開始されると、再生債権者に対して再生手続への参加の機会を与えるために、裁判所から各再生債権者に対して再生手続開始決定がされた旨の通知を行い、債権の届出をするよう求める旨の通知がなされます。
再生債権者の連絡先が分からなければ上記の通知を送ることができません。そのため、再生債権者の連絡先を記載することが求められるのです。
民事再生法84条2号の請求権がある場合
民事再生法 第84条
- 第1項 再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。次項において同じ。)は、再生債権とする。
- 第2項 次に掲げる請求権も、再生債権とする。
- 第1号 再生手続開始後の利息の請求権
- 第2号 再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
- 第3号 再生手続参加の費用の請求権
個人再生の債権者一覧表には、当該再生債権について「民事再生法第84条第2項各号に掲げる請求権である旨」を記載する必要があります(民事再生法221条3項5号、244条、民事再生規則114条1項2号、140条)。
再生債権とは、再生債務者に対する再生手続開始前の原因に基づく財産上の請求権のことをいいます(民事再生法84条1項)。
また、上記のほか、民事再生法84条2項各号に定める請求権も再生債権に該当します。民事再生法84条2項各号に定める請求権には以下のものがあります。
- 再生手続開始後の利息の請求権
- 再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
- 再生手続参加の費用の請求権
これらの債権を再生債権として挙げる場合には、それらが民事再生法第84条第2項各号に掲げる請求権である旨を債権者一覧表に記載しなければならないとされています。
もっとも、個人再生の場合には、これらの債権を再生債権として挙げることはあまりないでしょう。
執行力ある債務名義または終局判決のある債権がある場合
執行力ある債務名義または終局判決のある債権がある場合には、その債権について、個人再生の債権者一覧表に「執行力ある債務名義又は終局判決のある債権であること」を記載する必要があります(民事再生法221条3項5号、244条、民事再生規則114条1項3号、140条)。
債務名義とは、執行機関の強制執行によって実現されることが予定される請求権の存在、範囲、債権者、債務者を表示した公の文書のことです。
執行力とは、債務名義に掲げられた実体法上の給付義務を強制執行により実現する効力のことをいいます。簡単に言えば、強制執行できる効力ということです。
執行力のある債務名義とは、例えば、判決書、裁判所における和解調書や調停調書、仮執行宣言付支払命令、執行認諾文言付きの公正証書などです。
再生債権について執行力のある債務名義がある場合には、その旨を債権者一覧表に記載する必要があります。
また、再生債権について、民事訴訟における終局判決がされている場合も、その旨を債権者一覧表に記載する必要があります。
再生債権に対する異議留保
債権認否の手続において届出再生債権に対して異議を述べる可能性がある場合には、個人再生の債権者一覧表に「再生債権額の全部または一部につき異議を述べることがある旨」を記載する必要があります(民事再生法221条4項、244条)。
個人再生の手続においては、債権調査の一環として、届出がされた再生債権について債権認否の手続が行われます。
この債権認否では、再生債務者の側も、届け出られた再生債権について、それを認めるか、または異議を述べることができます。
異議を述べる予定がある場合には、その旨を債権者一覧表に記載しておかなければなりません。これを記載しておかないと、債権認否において異議を述べることが出来なくなります。
個人再生申立て時点では異議を述べるつもりがなかったとしても、後に何らかの事情によって異議を述べなければならない場合が生じるかもしれません。
そこで、実務では、債権者一覧表に、すべての再生債権について異議を留保する旨の記載をしておくのが通常です。
債権者一覧表の訂正の可否
破産手続であれば、破産手続開始後に新たな債権者が発覚した場合でも、債権者に追加することが可能です。
しかし、個人再生においては、再生手続開始決定後は債権者一覧表を訂正することができません。
債権の額などを修正するだけであればともかく、再生手続開始後に新たに債権者が発覚したとしても、債権者一覧表に追加することができないのです。
債権者一覧表に追加できないとすると、その債権者に対する弁済を再生計画にのせることができず、再生計画が認可されたとしても、その債権は減額・分割払いにならず、約定どおりに返済しなければなりません。
そうなると、返済額が大きくなってしまいます。あるいは、その再生計画に含めることができない債権の返済を考慮すると、返済可能性がないので再生計画が認可されない、ということになってしまうおそれもあります。
したがって、再生手続開始後に債権者一覧表を訂正できないことを考慮して、個人再生を申し立てる前に、十分な債権調査を行っておくべきでしょう。
弁護士の探し方
「個人再生をしたいけどどの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
他方、通常再生の場合は、対応できる事務所が限られてきます。小規模の事務所の場合には、対応が難しいこともあり得ます。その点からも、個人の債務整理では、通常再生ではなく、個人再生を選択した方がよいのです。
レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区
弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区
弁護士法人ひばり法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・依頼後の出張可
・所在地:東京都墨田区
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、より深く知りたい方のために、個人再生の参考書籍を紹介します。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。