この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

個人再生の申立書には、①債権者一覧表、②住民票の写し、③再生債務者の財産目録、④再生債務者の収入額を明らかにする書面を添付しなければなりません。再生債務者が個人事業者である場合には、上記のほか、貸借対照表・損益計算書などの添付も必要です。
また、これら以外にも、実務では、収入や主要財産の一覧、報告書または陳述書、清算価値の計算書類、可処分所得の計算書類などの添付も求められるのが一般的です。
個人再生申立書に添付する書類
個人再生の手続(小規模個人再生・給与所得者等再生)を開始してもらうためには、管轄の裁判所に個人再生の申立書を提出する方式によって個人再生の申立てをしなければなりません。
ただし、ただ個人再生申立書だけを提出すれば、申立てを受理してもらえるわけではありません。申立書に各種の書類を添付して申立てをする必要があります。
個人再生申立書に添付すべき書類としては、以下のものがあります。
- 債権者一覧表
- 住民票の写し
- 再生債務者の財産目録
- 再生債務者の収入額を明らかにする書面(課税証明書、源泉徴収票、給与明細など)
再生債務者が個人事業者・自営業者である場合には、上記のほか、以下の書類の添付も必要です。
- 再生手続開始の申立日前3年以内に法令の規定に基づき作成された再生債務者の貸借対照表および損益計算書
- 再生手続開始の申立日前1年間の再生債務者の資金繰りの実績を明らかにする書面および再生手続開始の申立ての日以後6月間の再生債務者の資金繰りの見込みを明らかにする書面
- 再生債務者が労働協約を締結しまたは就業規則を作成しているときは、当該労働協約又は就業規則
再生債務者に代理人がいる場合には、その代理人に対する委任状の添付も必要です。
また、実務では、収入や財産を一覧にした書類、個人再生申立書に記載していない訓示的記載事項や再生債務者に関する情報を記載した報告書、再生債務者の収支を記載した家計、清算価値の計算書類、給与所得者等再生の場合の可処分所得の計算書類も、申立書に添付して申立てをするのが通常です。
さらに、これら以外にも、再生手続開始原因があることを明らかにするための資料や各種書類の記載事項を明らかにするための資料も、申立書に添付することを求められます。
債権者一覧表
個人再生の手続を開始すべきかどうかを判断するためには、どのくらいの再生債権額があるのかを裁判所において把握しておく必要があります。
そこで、個人再生の申立書には、再生債権者の名称や債権額などを記載した「債権者一覧表」を添付しなければならないとされています(民事再生法221条3項柱書、244条)。
住宅資金特別条項を利用する場合には、住宅資金特別条項を利用しようとしている再生債権(住宅資金貸付債権)について、その再生債権が住宅資金貸付債権であること、その再生債権について住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する予定であることを記載しなければなりません(民事再生法221条3項3号、4号、244条)。
これらを記載しておかないと、住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出できなくなってしまうので、注意が必要です。
また、債権者一覧表には、記載した再生債権の全部または一部に対して、再生手続開始後の債権認否において異議を述べる可能性がある場合には、その旨を記載しておく必要があります(民事再生法221条4項、244条)。
これを記載しておかないと、債権認否の手続において異議を述べることができなくなってしまうので、これも注意が必要です。
実務では、住宅資金特別条項を利用する住宅資金貸付債権を除く再生債権については、すべて異議を留保する旨の記載をしておくのが通常です。
なお、債権者一覧表には、再生債権者の氏名・名称や債権額だけでなく、住所・所在地、連絡先、担保の有無等も記載しなければなりません(民事再生規則14条1項3号)。
住民票の写し
個人再生の申立書には、住民票の写しを添付する必要があります(民事再生規則14条1項1号)。住民票の写しとは、市区町村役場で取得する住民票の写しのことです。住民票のコピーというわけではありません。
実務では、家族全員での収支を把握する必要があることから、世帯全員の住民票の写しの提出が求められるのが一般的でしょう。
また、世帯全員、かつ、本籍・続柄の記載があり、マイナンバーの記載が無い住民票の写しの提出が求められます。
再生債務者の財産目録
個人再生の申立書には、再生債務者の財産目録を添付する必要があります(民事再生規則14条1項4号)。財産目録とは、再生債務者の財産を一覧にした書類のことです。
再生債務者申立人に、どのくらいの財産があるのかは、再生手続開始原因があるのかどうか、清算価値はどの程度なのかなどの判断に関わってきます。
そのため、個人再生申立書には、再生債務者の財産目録を添付しなければならないとされているのです。
また、査定書など財産目録に記載された各財産の価額を明らかにする書面の添付も必要となります(民事再生規則112条3項2号、136条3項2号)。
再生債務者の収入額を明らかにする書面
個人再生の申立書には、再生債務者の収入額を明らかにする書類を添付する必要があります(民事再生規則112条3項1号、136条3項1号)。
具体的に言えば、再生債務者の収入額を明らかにする書類とは、個人再生申立ての直近の課税証明書、源泉徴収票、給与明細、賞与明細などです。
再生債務者にどのくらいの返済能力があるのかが分からなければ、再生計画に基づく弁済の履行可能性を判断することができません。
そこで、再生債務者の収入額を明らかにする書類を添付する必要があるとされているのです。
再生債務者が事業者である場合の添付書類
再生債務者が個人事業者・自営業者である場合には、前記までの書類のほかにもいくつかの書類を追加して添付する必要があります。
まず、再生債務者が個人事業者・自営業者である場合には、再生手続開始の申立日前3年以内に法令の規定に基づき作成された再生債務者の貸借対照表及び損益計算書を添付する必要があります(民事再生規則14条1項5号)。
実務では、貸借対照表・損益計算書だけではなく、それらを含めた確定申告書・決算書類をまとめて提出するよう求められるのが通常です。
また、再生手続開始の申立日前1年間の再生債務者の資金繰りの実績を明らかにする書面および再生手続開始の申立ての日以後6月間の再生債務者の資金繰りの見込みを明らかにする書面の添付も求められています(民事再生規則14条1項6号)。
ただし、実務では、よほど複雑な事業形態でない限り、資金繰り表などの提出まではも取れられていないのが通常だと思います。
さらに、再生債務者が労働協約を締結しまたは就業規則を作成しているときは、当該労働協約または就業規則も、個人再生申立書に添付しなければならないとされています(民事再生規則14条1項7号)。
代理人がいる場合の委任状
申立人に代理人弁護士が就いている場合には、その弁護士に個人再生申立てを委任していることを明らかにする委任状の添付が必要です。
個人再生申立ては原則として弁護士を代理人に就けることが原則とされています。
各種の資料
ただ個人再生の申立書や債権者一覧表・財産目録等の書類に事実を記載しただけでは、それらに記載されている事実が本当のことなのかどうか判断ができません。
そこで、個人再生申立てにおいては、個人再生申立書やそれらに添付した書類に記載されている事実があることを明らかにするための疎明資料を添付することが求められるのが通常です。
例えば、以下のような書類が必要となります(以下のものに限られるわけではありません)。
- 預金口座の通帳写しまたは取引明細書
- 不動産がある場合は、登記事項証明書・査定書(住宅資金特別条項を利用する場合の追加書類は後述。)
- 所有自動車がある場合は、自動車検査証・査定書
- 保険加入がある場合は、保険証券・解約返戻金証明書
- 退職金がある場合は、退職金証明書・退職金規程等
住宅資金特別条項を利用する場合の添付書類
これまで述べてきた添付書類は、個人再生を利用する場合の基本的な書類ですが、住宅資金特別条項を利用しようという場合には、これまで述べてきた添付書類のほかに、さらに、以下の書類の添付が必要です(民事再生規則102条1項各号)。
- 住宅資金貸付契約の内容を記載した証書の写し(住宅ローンの契約書・保証会社の保証委託契約書等)
- 住宅資金貸付契約に定める各弁済期における弁済すべき額を明らかにする書面(返済計画表・償還表など)
- 住宅および住宅の敷地の登記事項証明書
- 住宅資金貸付債権における「住宅」以外の不動産にも民事再生法第196条第3号に規定する抵当権が設定されているときは、当該不動産の登記事項証明書
- 再生債務者の住宅において自己の居住の用に供されない部分があるときは、当該住宅のうち専ら再生債務者の居住の用に供される部分及び当該部分の床面積を明らかにする書面
- 保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務の全部を履行したときは、当該履行により当該保証債務が消滅した日を明らかにする書面
その他実務で求められる添付書類
各裁判所では、個人再生の申立書に添付すべき書類をあらかじめ定めています。したがって、この定めに従って、書類を用意し添付しなければなりません。
例えば、以下のような書類の添付も求められます(裁判所によって異なります。)。
- 収入一覧
- 主要財産一覧
- 清算価値算出シート
- 可処分所得算出シート(給与所得者等再生の場合)
- 報告書(または陳述書)
- 家計全体の状況
なお、各裁判所の添付書類などについては、以下の記事も参照してください。
各種書類の提出時期
個人再生の申立書には、前記の各書類を添付して申立てをするのが原則です。
もっとも、住宅ローンの巻戻しの期限が迫っているなど、緊急に申立てをしなければならない事情がある場合、各書類を全部揃えるのが難しいということもあり得ます。
そのような場合には、揃えられる書類のみ申立書に添付して申立てをし、申立て後にすみやかに不足書類を追完提出することになります。
例えば、東京地裁の場合、申立書、収入一覧および主要財産一覧、債権者一覧表、住民票の写し(および委任状)があれば、とりあえず申立てを受理してもらうことができることになっています。
弁護士の探し方
「個人再生をしたいけどどの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。
現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
他方、通常再生の場合は、対応できる事務所が限られてきます。小規模の事務所の場合には、対応が難しいこともあり得ます。その点からも、個人の債務整理では、通常再生ではなく、個人再生を選択した方がよいのです。
弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区
弁護士法人ひばり法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・依頼後の出張可
・所在地:東京都墨田区
レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区
参考書籍
本サイトでも個人再生について解説していますが、より深く知りたい方のために、個人再生の参考書籍を紹介します。
個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。
個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。
破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。
はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。
書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。