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給与所得者等再生が成功すると借金はどのくらい減額されるのか?

個人再生の画像
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給与所得者等再生の再生計画が認可されると、借金等の債務を、民事再生法で定める最低弁済額、可処分所得の2年分の額または破産した場合の配当予想額の最も高額なものの金額にまで減額できます

債権額や財産価値の総額にもよりますが、借金を5分の1から10分の1まで減額できることもあります。

給与所得者等再生が成功した場合の借金の減額

個人再生においては、再生債務者自身で再生計画のもとになる再生計画案を作成します。

どのような内容の再生計画案を策定できるのかは、民事再生法で規定されています。借金の減額を含む再生計画案を作成できるのが通常です。

策定した再生計画が裁判所によって認可されれば、再生計画で定められている減額された借金を弁済していけばよいことになります。つまり、個人再生には、借金を減額できるという効果があるのです。

この個人再生には、小規模個人再生給与所得者等再生の2種類の手続がありますが、小規模個人再生が個人再生の基本類型とされています。

このうち給与所得者等再生においては、債務の返済総額(計画弁済総額)を、民事再生法で定める最低弁済額可処分所得の2年分の額または破産した場合の配当予想額(清算価値)のうちで最も高額なものの金額にすることができます。

つまり、給与所得者等再生が成功すると、「最低弁済額」、「可処分所得の2年分の額」または「破産した場合の配当予想額」のうちの最も高額なものの金額にまで減額できるということです

個人再生における最低弁済額

民事再生法 第231条

  • 第2項 小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
  • 第2号 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第84条第2項に掲げる請求権の額を除く。)が5000万円を超えているとき。
  • 第3号 前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円を超え5000万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第84条第2項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の10分の1を下回っているとき。
  • 第4号 第2号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の5分の1又は100万円のいずれか多い額(基準債権の総額が100万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の5分の1が300万円を超えるときは300万円)を下回っているとき。

民事再生法 第241条

  • 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
  • 第5号 第231条第2項第2号から第5号までに規定する事由のいずれかがあるとき。

前記のとおり、給与所得者等再生においては、民事再生法で定める最低弁済額、可処分所得の2年分の額または破産した場合の配当予想額のうち最も高額なものの金額にまで借金等の債務を減額できます。

このうち民事再生法で定める最低弁済額とは、文字どおり、個人再生において再生計画に定めることができる返済総額(計画弁済総額)の最低限度の金額のことです。

この最低弁済額を下回る計画弁済総額を定めることはできません。

最低弁済額がいくらになるのかは、再生債権の内容および金額によって異なってきます。最低弁済額は、以下の基準によって定められています。

最低弁済額の基準
  • 無異議債権額および評価済債権額の総額が3000万円以下の場合は、基準債権額による。
    • 基準債権額が100万円未満の場合、最低弁済額は「その基準債権額」
    • 基準債権額が100万円以上500万円未満の場合、最低弁済額は「100万円」
    • 基準債権額が500万円以上1500万円未満の場合、最低弁済額は「基準債権の5分の1」
    • 基準債権額が1500万円以上の場合、最低弁済額は「300万円」
  • 無異議債権額および評価済債権額の総額が3000万円を超え、5000万円以下の場合、最低弁済額は「無異議債権額および評価済債権額の総額の10分の1」

なお、債務が一般的な借金などのみである場合には、最低弁済額については、とりあえず以下のように考えておけば足りるでしょう。

債務が借金の場合の最低弁済額
  • 借金の金額が100万円未満の場合、最低弁済額は「その借金の金額のまま」
  • 借金の金額が100万円以上500万円未満の場合、最低弁済額は「100万円」
  • 借金の金額が500万円以上1500万円未満の場合、最低弁済額は「借金額の5分の1の金額」
  • 借金の金額が1500万円以上3000万円未満の場合、最低弁済額は「300万円」
  • 借金の金額が3000万円以上5000万以下の場合、最低弁済額は「借金額の10分の1の金額」

再生債権

民事再生法 第84条

  • 第1項 再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。次項において同じ。)は、再生債権とする。
  • 第2項 次に掲げる請求権も、再生債権とする。
  • 第1号 再生手続開始後の利息の請求権
  • 第2号 再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
  • 第3号 再生手続参加の費用の請求権

まず大前提として、個人再生において減額の対象となる債権とは、再生債権です。

再生債権とは、再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権または一般優先債権であるものを除く。)のことをいいます(民事再生法84条)。

無異議債権・評価済債権

最低弁済額は、再生債権のうちで無異議債権および評価済債権が3000万円以下であるか、3000万円を超えているかどうかが第一の基準とされています。

個人再生においては、再生債務者が、再生債権者から届け出られた債権について認否を行います。この認否に対して不服がある場合、再生債権者は異議を述べることができます。

異議を述べられた債権については、評価の申立てがあれば、裁判所によって債権評価の手続が行われ、再生債権額が確定されることになります。

無異議債権とは、債権認否に対して異議が述べられなかった届出再生債権のことをいい、評価済債権とは、債権評価手続において債権の評価がすでに住んでいる届出再生債権のことをいいます。

なお、住宅資金特別条項を利用する場合には、住宅資金貸付債権(住宅ローン等)は無異議債権・評価済債権には含まれません。

基準債権

無異議債権・評価済債権が3000万円以下の場合、最低弁済額は、基準債権の金額に応じて定められることになります。

基準債権とは、別除権行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権および再生手続開始後の利息の請求権など民事再生法84条2項各号に定める請求権を除いたもののことをいいます。

別除権とは、抵当権や質権などの担保権です。別除権が設定されている債権については、その別除権を行使することで、再生手続外で優先的に弁済を受けることができます。

そのため、別除権行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権は、基準債権額から除かれることになります。

また、民事再生法84条2項各号に定める請求権も基準債権からは除かれます。民事再生法84条2項各号に掲げる請求権には、以下の請求権がああります。

民事再生法84条2項各号の請求権
  • 再生手続開始後の利息の請求権
  • 再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
  • 再生手続参加の費用の請求権

可処分所得の2年分の額

民事再生法 第241条

  • 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
  • 第7号 計画弁済総額が、次のイからハまでに掲げる区分に応じ、それぞれイからハまでに定める額から再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額に2を乗じた額以上の額であると認めることができないとき。
     再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前2年間の途中で再就職その他の年収について5分の1以上の変動を生ずべき事由が生じた場合 当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法(昭和40年法律第33号)第74条第2項に規定する社会保険料(ロ及びハにおいて「所得税等」という。)に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額
     再生債務者が再生計画案の提出前2年間の途中で、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった場合(イに掲げる区分に該当する場合を除く。) 給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額
     イ及びロに掲げる区分に該当する場合以外の場合 再生計画案の提出前2年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を2で除した額
  • 第3項 前項第7号に規定する1年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める。

前記のとおり、給与所得者等再生においては、民事再生法で定める最低弁済額、可処分所得の2年分の額または破産した場合の配当予想額のうちで最も高額なものの金額にまで借金等の債務を減額できます。

可処分所得とは、収入の合計額から各種の税金や社会保険料および最低生活費を控除した金額のことをいいます。つまりは、返済などに充てるなど自由に使える所得のことです。

可処分所得は、以下のように計算されます(民事再生法241条2項7号)。

可処分所得の計算
  • 再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前2年間の途中で再就職その他の年収について5分の1以上の変動を生ずべき事由が生じた場合は、「当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法第74条第2項に規定する社会保険料に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額」から、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額
  • 再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前2年間の途中で再就職その他の年収について5分の1以上の変動を生ずべき事由が生じた場合は、「給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法第74条第2項に規定する社会保険料に相当する額に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額」から、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額
  • 上記以外の場合は、「再生計画案の提出前2年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を2で除した額」から、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額

再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令(民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令)で定めるものとされています(民事再生法241条3項)。

個人再生における計画弁済総額は、この可処分所得の2年分の額以上でなければなりません。

可処分所得の計算は、上記のとおりかなり複雑ですが、各裁判所では「可処分所得算出シート」と呼ばれるエクセルシートが用意されています。

この可処分所得算出シートを使えば、かなり簡易に可処分所得の2年分の額を算出することが可能となっています。

破産した場合の予想配当額(清算価値保障原則)

個人再生においては、清算価値保障原則と呼ばれる原則が適用されると解されています。清算価値保障原則とは、再生計画の弁済率が破産における場合の配当率以上でなければならないとする原則のことをいいます。

つまり、再生計画における計画弁済総額は、破産した場合の配当予想額以上の金額でなければならないということです。

もちろん本当に破産するわけではありません。もし仮に破産をしたらどのくらいの配当が見込めたのかということです。

したがって、持っている財産の換価価値の総額が最低弁済額を上回っている場合には、その財産の換価価値の総額を計画弁済総額としなければならず、その限度までしか減額できないということになります。

なお、この配当予想額の判断においては、破産しても処分しなくてよい自由財産の価値は除かれるのが通常です。

減額の具体例

前記のとおり、給与所得者等再生においては、民事再生法で定める最低弁済額、可処分所得の2年分の額または破産した場合の配当予想額のうちで最も高額なものの金額にまで減額できます。

例えば、借金が1000万円であれば、最低弁済額である借金額の5分の1の金額の200万円まで減額できることになります。

ただし、可処分所得の2年分の額が300万円であれば、300万円までの減額にとどまります。

さらに、そのほかに換価価値400万円の財産があれば、清算価値保障原則により、減額は400万円までになります。

借金が4500万円であれば、最低弁済額は10分の1の金額ですので、450万円まで減額されます。

この場合、可処分所得の2年分の額が300万円であっても、また400万円の財産があっても、最低弁済額の方が高額ですので、450万円の方が採用されます。

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