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みなし弁済がグレーゾーン金利に及ぼした影響とは?

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すでに撤廃されていますが、みなし弁済という制度は、グレーゾーン金利の発生に重大な影響を及ぼし、社会問題にまで発展しました

グレーゾーン金利の問題

かつて大きな社会問題にまでなったクレサラ問題多重債務問題の最大の原因は、いわゆるグレーゾーン金利と呼ばれるものです。

このグレーゾーン金利とは、利息制限法の制限利率を超える利率ではあるものの、出資法の上限金利は超えない利率であるため、違法でありながら何らの処罰も受けない利率のことをいいます。

つまり、このグレーゾーン金利の範囲内の利率の利息であれば、利息制限法所定の制限利率を超える高利であったとしても、出資法違反にならないために何らの処罰もなされず(現在では刑罰または行政処分の対象になります。)、貸金業者も平然と利息制限法違反の利息を搾取し続けていました。

このグレーゾーン金利による高利がまかり通っていたため、多重債務者が増え、厳しい取り立てなども重なって自殺者が続出するというような社会問題化していったのです。

みなし弁済とは

前記のとおり、グレーゾーン金利は、出資法には違反していないため刑罰や行政処分は科されなかったとしても、利息制限法に違反している以上、民事的な責任は負担するはずです。

具体的にいうと、利息制限法の制限超過部分は元本に充当されるため(最大判昭和39年11月18日)、借金額が減額されたり、さらには、後に過払い金として返還請求されはずです。

刑罰や行政処分がないとはいえ、結局は過払金返還をしなければならなくなるとすれば、貸金業者としても、グレーゾーン金利をとり続けることを躊躇しそうなものですが、そうはなりませんでした。

それはなぜかといえば,貸金業規制法(現在の貸金業法)においてみなし弁済という制度があったからです。

すなわち,みなし弁済とは,旧貸金業規制法に定める一定の要件を満たす場合には、利息制限法の制限を超える利率の利息の支払いを有効な弁済があったものとしてみなすという制度です。

このみなし弁済が適用されると,利息制限法違反の利息を受け取った場合でも,元本充当による借金の減額は生じず、また、過払金として返還する必要もなくなります。

みなし弁済によるグレーゾーン金利の助長

前記のとおり,みなし弁済が適用されると,貸金業者は過払い金の返還をしなくてよいということになります。

ということは,出資法の上限金利を超えないものである限り,それが利息制限法の制限利率を超える利率の利息であったとしても,その高利の利息を受け取っても処罰を受けることもなければ,過払い金として返す必要もなくなるということです。

このみなし弁済制度があったからこそ,貸金業者は,グレーゾーン金利を是正することなく高利を搾取し続けてきたのです。

グレーゾーン金利の問題は利息制限法と出資法との不一致の問題ですから,厳密にいえば,みなし弁済と直接の関係はありません。

しかし,刑事責任も民事責任(借金の減額や過払金の返還責任)も負わなくてよいのであれば,貸金業者としては高利をとることに躊躇はなくなります。

グレーゾーン金利が横行していた背景には,利息制限法と出資法の規制の不一致だけではなく,このみなし弁済という制度も大きく関わっていたのです。むしろ,グレーゾーン金利を助長していたといってよいでしょう。

出資法の上限金利との不一致によって処罰はなされず,しかも,みなし弁済によって過払金返還も受けずに済むというわけで,両者があいまって,利息制限法違反の状態を許してしまっていたことが,グレーゾーン金利の問題を拡大させてしまった原因であったといえるでしょう。

なお,平成18年改正によって,出資法の上限金利は年20パーセントにまで引き下げられ,みなし弁済も廃止されたため,現在では,グレーゾーン金利の問題はほとんどなくなっています。

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