この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
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自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)や自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)で支払われる保険金や損害賠償の金額は、法令で上限が決められています。
また、具体的な支払金額も、法令に基づいて定められた支払基準に従って、上限額の範囲内で決められます。
自賠責保険・共済とは
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)や自動車損害賠償責任共済(自賠責共済)は、被保険者(被共済者)である自動車の保有者や運転者が自動車事故による損害賠償責任を負担する場合に、その損害賠償を填補するための保険です。
その趣旨は、自動車保有者などに保険加入を義務付けることによって、自動車事故の被害者が最低限度の補償を受けられるようにすることにあります。
自賠責保険・共済の被保険者・被共済者(加害者側)は、実際に被害者に対して損害賠償金を支払った場合、自賠責保険会社・共済組合に対して保険金(共済金)の支払いを請求できます。これを「加害者請求」といいます(自動車損害賠償保障法15条、23条の3。以下「自賠法」と言います。)。
他方、被害者は、被保険者から損害賠償の支払を受ける前に、自賠責保険会社・共済組合に対して損害賠償金の支払いを求めることができます。これを「被害者請求」といいます(自賠法16条、23条の3)。
もっとも、自賠責保険・共済は、被害者保護のための最低限度の損害の填補を保障するための保険です。損害のすべてを填補できるわけではありません。
自賠責保険・共済において支払われる保険金や損害賠償金の金額は、法律によって一定限度の制限があります。
自賠責保険の保険金・損害賠償金の支払額の上限
自賠責保険・共済における保険金(共済金)の額の上限は、自賠法13条に基づく自動車損害賠償保障法施行令2条(以下「自賠法施行令」と言います。)によって定められています。
裁判で保険金(共済金)・損害賠償金を請求する場合であっても、この上限金額を超えて金額が認定されることはありません。
以下、死亡事故と傷害事故の場合にわけて説明します。
死亡事故の場合
自動車による死亡事故の場合、死亡による損害と、死亡までの間における傷害による損害の2つがあります。保険金(共済金)・損害賠償の金額の上限は、以下のとおりです。
- 死亡による損害:3000万円
- 死亡までの傷害による損害:120万円
後遺障害のない傷害事故の場合
自動車による傷害事故の場合、後遺障害のない傷害と後遺障害のある傷害では、上限金額に違いがあります。後遺障害のない傷害による損害の保険金(共済金)・損害賠償の金額の上限は、以下のとおりです。
- 傷害による損害:120万円
後遺障害のある傷害事故の場合
後遺障害のある傷害には、神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、介護を要する場合の損害とそれ以外の場合の後遺障害による損害があります。
具体的な保険金(共済金)・損害賠償の金額の上限は、以下のとおりです。
- 神経系統の機能や精神・胸腹部臓器への著しい障害で、介護を要する場合の損害
- 常時介護が必要となる場合:4000万円
- 随時介護が必要となる場合:3000万円
- 介護を要する後遺障害に至るまでの傷害による損害:120万円
- その他の後遺障害の場合の損害(後遺障害等級により異なる)
- 第1級:3000万円
- 第2級:2590万円
- 第3級:2219万円
- 第4級:1889万円
- 第5級:1574万円
- 第6級:1296万円
- 第7級:1051万円
- 第8級:819万円
- 第9級:616万円
- 第10級:461万円
- 第11級:331万円
- 第12級:224万円
- 第13級:139万円
- 第14級:75万円
実際の保険金・損害賠償金の支払基準
前記のとおり、自賠責保険・共済における保険金・損害賠償金の金額は、法令によって上限が定められています。実際の保険金(共済金)・損害賠償金は、この上限の範囲内で支払われることになります。
ただし、常に上限いっぱいの金額で支払われるわけではありません。具体的な事情に応じて、上限金額の範囲内で支払銀額が決められることになります。
具体的に言うと、「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年12月212日金融庁国土交通省告示第1号。なお、民法改正に伴い、支払基準も一部改正されています。)によって、支払金額が決められます。
この支払基準は、かつては通達にすぎませんでしたが、現在では、自賠法16条の3によって法律上の根拠が与えられています。
支払金額の決定の手続
前記のとおり、自賠責保険の保険金(共済金)・損害賠償金の支払金額は.自賠責保険会社や共済組合が前記支払基準に従って決定します。
以下では、支払金額決定までのおおまかな流れを説明します。
損害の調査
具体的な保険金(共済金)の支払額を決めるためには、前提として、損害がどれくらいかを査定する必要があります。
この損害の調査は、自賠責保険会社や共済組合ではなく、自賠責保険会社・共済組合から委嘱を受けた「損害保険料率算出機構」の下部組織である「自賠責損害調査事務所」が行います。
自賠責損害調査事務所は、自賠責保険会社・共済組合から送付された請求書類をもとに、事故発生状況・支払いの的確性・発生した損害の額などを公正かつ中立的な立場で調査し、その結果を保険会社に報告します。
なお、査定そのもののやり方などに不服がある場合には、損害保険料率算出機構に対する異議申立てや交通事故紛争処理センター・自賠責保険・共済紛争処理機構等のADR(裁判外紛争処理機関)で紛争処理の申立てをして、査定の適否を争うことになります。
支払額の決定
自賠責保険会社や共済組合は、自賠責損害調査事務所からの報告をもとに、支払基準に従って、保険金(共済金)や損害賠償の支払金額を決定します。
この決定に異議がない場合は、すみやかに保険金(共済金)または損害賠償金が支払われます。
自賠責保険会社・共済組合の決定に不服がある場合
自賠責保険会社や共済組合による支払金額に不服がある場合は、自賠責保険会社や共済組合を相手方とするADRや訴訟を提起して、金額を決めることになります。
自賠責保険・共済の分も含めて任意保険会社に一括請求している場合には、任意保険会社を相手方としてADRや訴訟を提起するケースもあります。
裁判所は、上限額を超えて認定することはできないものの、支払基準に拘束されずに上限額の範囲内で支払額を決めることができます(被害者請求について最高裁判所第一小法廷平成18年3月30日判決、加害者請求について最高裁判所第一小法廷平成24年10月11日判決)。
そのため、自賠責保険会社・共済組合が決定した金額よりも訴訟の方が高額になることはあり得ます。
自賠責保険の支払金額を超える損害がある場合
前記のとおり、自賠責保険は、被害者の最低限度の損害を補償しようとするものであるため上限金額が決まっており、損害のすべてを完全に填補できるだけの保険金や損害賠償金が支払われるわけではありません。
死亡事故や後遺障害が残るような事故の場合には、自賠責の保険金額では全く足りないことも十分にありえます。
自賠責保険によってもまかないきれない損害については、別途、自賠責保険・共済とは別に加害者等に請求する必要があります。
加害者が任意保険に加入していれば、自賠責保険・共済だけでは足りない部分が任意保険会社から支払われるので、被害者は十分な補償を受けることができるでしょう。
そのため、自賠責保険は「下積み保険」、任意保険は「上積み保険」と呼ばれることがあります。
他方、加害者が任意保険に加入していない場合は、加害者自身の資力で不足分を支払う必要があります。そのため、被害者が十分な補償を受けられないおそれがあります。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
弁護士に依頼するメリット
「交通事故の損害賠償請求は弁護士に頼んだ方がいいの?」
とお悩みの方は少なくないでしょう。
実は、交通事故の損害賠償額には、保険会社の基準と裁判基準(弁護士基準とも呼ばれます。)があります。保険会社の基準は、裁判基準よりもかなり低額に抑えられています。
そのため、自分で保険会社と示談交渉する場合よりも、弁護士に依頼して裁判基準で示談交渉または訴訟をしてもらう方が、損害賠償額が高額になる可能性が高いのです。弁護士に依頼する一番のメリットは、その点にあります。
特に、自動車保険に弁護士特約を付けてある場合には、弁護士費用を保険金で支払うことが可能です。そのため、自己負担がほとんどないまま、弁護士に依頼することができます。弁護士特約がある場合には、間違いなく弁護士に依頼すべきです。
- 被害者の相談無料
- メール相談可・土日祝日対応可
- 着手金無料(完全成功報酬・費用の後払い可能)
- 損害賠償額が増額しない場合は弁護士報酬0円
- 弁護士特約の利用可能
- 所在地:東京都足立区
- 相談無料
- 全国対応・メール相談可
- 着手金無料(完全成功報酬型)
- 増額できなければ弁護士費用は無料
- 弁護士特約の利用可能
- 所在地:東京都港区
参考書籍
本サイトでも交通事故損害賠償について解説していますが、より深く知りたい方のために、交通事故損害賠償の参考書籍を紹介します。
民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準
出版:日弁連交通事故相談センター東京支部
通称「赤い本」。交通事故損害賠償請求を扱う弁護士は、ほとんどが持っている必携書。東京地裁の実務を中心に、損害賠償額の算定基準(裁判基準)を解説しています。この本の基準が実務の基準と言ってよいほどに影響力があります。毎年改定されています。
交通事故損害額算定基準 -実務運用と解説-
出版:日弁連交通事故相談センター
通称「青本」。こちらは、赤い本と違って、東京地裁だけでなく、全国の裁判所における裁判例を紹介しています。2年に1回改訂されています。
民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)別冊判例タイムズ38号
編集:東京地裁民事交通訴訟研究会 出版:判例タイムズ社
こちらも実務必携と言われる書籍。交通事故では過失相殺がよく問題となりますが、その過失相殺率の認定基準を解説する実務書です。東京地裁の裁判官が中心となって執筆されている本ですが、この本の認定基準が全国的な実務の基本的な認定基準となっています。
大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第4版)
編集:大阪民事交通訴訟研究会 出版:判例タイムズ社
大阪地裁交通部(第15民事部)の裁判官による大阪地裁における交通事故損害賠償額算定基準を解説する実務書。大阪地裁で交通事故訴訟をする場合には必携です。(※なお、大阪弁護士会交通事故委員会による「交通事故損害賠償算定のしおり(通称、緑の本)」とは異なります。こちらは、裁判官執筆の本です。)
新版注解交通損害賠償算定基準
著者:高野真人ほか 出版:ぎょうせい
赤い本や青本の解説書。実務書の解説書という珍しい本ですが、赤い本や青本はどちらかと言うと資料集的な実務書であるため、詳細な理由付けなどが説明されていない部分もあります。本書は、そこを解説しています。赤い本や青本とセットで持っていると便利です。
交通事故損害賠償法(第3版)
編集:北河隆之 出版:弘文堂
交通事故損害賠償に関する法律の体系書。実務マニュアル的なものではなく、理論的な面の解説も体系的にまとめられており、交通事故損害賠償の基本書といった感じの本です。
逐条解説自動車損害賠償保障法(第3版)
著者:北河隆之ほか 出版:弘文堂
弁護士・裁判官など実務家による自動車損害賠償保障法の逐条解説書。1冊持っていると便利です。

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