
個人再生には,債務整理の方法として様々なメリットありますが,その反面,以下のようなデメリットもあります。
- 信用情報に事故情報(ブラックリスト)として登録されること
- 個人再生をしていることが官報に公告されること
- 要件が厳格であるため,誰でも利用できるものではないこと
- 手続が複雑な上に,自ら手続を進めていかなければならないこと
- 返済を継続していかなければならないこと
個人再生(個人民事再生)とは
個人再生(個人民事再生)とは,裁判所に再生計画を認可してもらうことによって,借金を減額(最大で10分の1)した上で3年から5年の長期分割払いにすることが可能となる裁判手続です。
個人再生には,以下のようなメリットがあります。
このように,個人再生は,借金・債務の整理をするための方法として,非常にメリットの大きい手続です。
しかし,個人再生にもデメリットがまったくないわけではありません。個人再生のデメリットとしては,主として以下のようなものがあります。
- ブラックリスト(事故情報)に登録されること
- 個人再生をしたことが官報に公告されること
- 利用のための要件が厳格であること
- 手続きが複雑なうえに自ら進めていかなければならないこと
- 返済を継続していかなければならないこと
これらのメリットとデメリットの両方を考慮して,個人再生を選択すべきかどうかを検討する必要があります。
ブラックリストに登録されること
債務整理に共通するデメリットして,信用情報に事故情報として登録されるというデメリットがあります。いわゆる「ブラックリスト」に登録されるということです。
このことは,個人再生でも同じです。
したがって,個人再生における再生計画に基づく返済が完了してから5年間または個人再生の手続が開始されてから10年間程度は、新たな借入れをしたり、クレジットカードを利用したり、ローンを組んだりすることが難しくなると言われています。
もっとも,ブラックリストへの登録は,自己破産や任意整理でも同じことです。これらと比べて個人再生にだけ著しいデメリットがあるというわけではありません。
個人再生をしたことが官報公告されること
個人再生を申し立てると,手続の各段階において,個人再生をしていることが官報に公告されます。
官報には,氏名や住所も掲載されます。したがって,まったく誰にも知られないように個人再生を行うことはできないということです。
ただし,特殊な職業に就いている場合でもない限り,官報を常日頃からチェックしているという人は,ほとんどいないでしょう。
そのため,「まったく誰にも知られずに」というわけにはいきませんが,官報公告によって個人再生をしたことを知られてしまう可能性は,それほど大きくないと言えるでしょう。
利用のための要件が厳格であること
上記までで述べてきたデメリットを見てみると,個人再生には,自己破産や任意整理と比べて,特別大きなデメリットがあるわけではないと言ってよいでしょう。
デメリットがあるとすれば,個人再生は,その利用の要件が任意整理や自己破産と比べて厳しいということではないかと思います。
メリットが大きい手続きである分,利用のための要件は厳格で,しかもかなり複雑です。
例えば,個人再生を利用するためには,債務額が5000万円以下でなければならないこと(ただし,住宅資金特別条項を利用する場合には住宅ローン額は除きます。),継続的または反復した収入を得る見込みがあることなどのさまざまな要件が必要です。
住宅資金特別条項を利用する場合には,個人再生の要件だけでなく,住宅資金特別条項固有の要件も充たしていなければなりません。
誰でも利用できるという手続ではない,というのが個人再生のデメリットと言えるでしょう。実際、個人再生を申し立てたものの、認可に至らないというケースも少なくありません。
手続が複雑な上に自ら進めなければならないこと
個人再生は,要件が複雑であるだけでなく,手続も複雑です。
しかも,個人再生は,自己破産における破産管財人のように,手続を遂行してくれる立場の人はいません。個人再生において個人再生委員が選任されることはありますが,個人再生委員はあくまで監督をするのみです。
つまり,個人再生においては,再生債務者が自ら手続を進めていかなければならないのです。ただ指示に従っていればいいのではなく,自ら主導的に行動しなければいけません。
もちろん,債権者との協議や交渉,裁判所や個人再生委員との協議なども再生債務者が自分で行う必要があります。
複雑な裁判手続を自分で進めていかなければならないのですから,その点も個人再生のデメリットといえるでしょう。
返済を継続していかなければならないこと
個人再生は,自己破産と異なり,減額されるとはいえ,3年間から5年間の長期にわたって返済を続けていかなければなりません。
しかし,これも任意整理に比べれば毎月の返済額を低額に抑えることが可能となる場合が多いので,デメリットというほどのものでもないかもしれません。
少なくとも,個人再生をする前よりは,返済の負担が軽減されることは間違いありません。
連帯保証人等に請求されること
個人再生をする人ご自身のデメリットというわけではありませんが,個人再生をすると,保証人・連帯保証人・連帯債務者などになっている人に対して,債権者から,個人再生をした人の代わりに支払をするよう請求されます。
連帯保証人等に迷惑をかけてしまうという点からすると,個人再生のデメリットであると言えるかもしれません。
小規模個人再生と給与所得者等再生の違い
個人再生には,小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続が用意されています。これまで述べてきたデメリットは,小規模個人再生・給与所得者等再生のいずれにも共通します。
もっとも,小規模個人再生と給与所得者等再生には違いがあります。
小規模個人再生は,債務額や資産によって異なりますが,債務を最大で10分の1にまで減額できることがあります。
しかし,その反面,再生計画案を不同意とした議決権を有する再生債権者の頭数が議決権者総数の半数以上であった場合または議決権者の議決権の額が全議決権者の議決権額総額の過半数以上であった場合には,再生手続が廃止され,再生計画は認可されないことになってしまいます。
つまり,小規模個人再生には,債権者の意向によって結論が左右されてしまうというデメリットがあるということです。
これに対して,給与所得者等再生の場合,再生債権者の決議が行われないので,再生債権者の意向によって結論が左右されるデメリットはありません。
しかし,給与所得者等再生の場合,返済額は,可処分所得の2年分以上の金額でなければならないとされています。収入額や家族構成等によっては,可処分所得がかなりの高額になることもあります。
そのため,給与所得者等再生の場合には,返済額が,小規模個人再生に比べて非常に高額になってしまうというデメリットがあります。
個人再生申立てを検討する場合には,個人再生に共通するデメリットだけでなく,上記のような小規模個人再生と給与所得者等再生のそれぞれのメリット・デメリットも考慮しておく必要があります。