この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

特定調停を利用するには、管轄の裁判所に特定調停の申立書を提出する方式で、特定調停の申立てを行う必要があります。
申立てを受理した裁判所は、各債権者に通知をします。この通知によって、貸金業者や債権回収業者からの取立てが停止されます。また、第1回の調停期日も決定されます。第1回は、申立人債務者だけ呼び出されて、債務の状況などを話し合うのが通常です。
第2回目の調停期日以降は、債権者も参加して話し合いが始まります。ただし、貸金業者などは出頭せず、電話で話し合うことが多いでしょう。話がまとまった場合には、裁判所によって調停調書が作成され、返済が始まります。
特定調停申立て前の準備
特定調停の相談
特定調停を利用する場合、まずは申立てを予定している簡易裁判所の相談窓口に行き、特定調停の手続について聞いておくのがよいでしょう。その際に、申立書の書式や申立てのために必要となる書類、費用なども教えてもらえます。
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特定調停申立書の作成
特定調停を利用するためには、特定調停の申立書を簡易裁判所に提出する必要があります。申立書の書式は,申立てをする簡易裁判所に用意されている場合が多いと思いますので、それに従って作成します。
また、申立書には、現在有している財産を記載した財産の明細書や債権者の一覧表を添付する必要があります。その他にも、住民票の写し、債権者が会社である場合にはその会社の登記簿謄本、契約書類などの添付も必要となります。
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特定調停の申立て・手続の開始
特定調停の申立て
特定調停は、原則として簡易裁判所に申立書を提出して申立てをすることになります。申立書は、裁判所用(正本)、債権者用(副本)を提出します。自分の控えも用意しておきましょう。
手数料(収入印紙)や郵券(郵便切手)も一緒に提出する必要があります。収入印紙代は、債権者数によって異なります。また、郵便切手は裁判所によって異なります。あらかじめ確認しておいた方がよいでしょう。
申立てをする簡易裁判所などは,相手方債権者の本店・営業所所在地を管轄する簡易裁判所です。複数の債権者がいる場合には,そのうちのどれか一つについて管轄があれば,その裁判所ですべて取り扱ってもらえる場合があります。
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債権者への通知
特定調停の申立てが適法であった場合、裁判所から各債権者に特定調停が開始されたことが通知されます。この通知がされると、債務整理において弁護士などが受任通知を送付した場合と同じように、貸金業者や債権回収会社などからの直接の取り立ては停止します。
また,この通知と併せて,裁判所から債権者に対して契約書類や取引履歴の提出を求めてくれるのが一般的です。さらに,第1回の調停期日が設定されることになります。申立てから約1か月後くらいに第1回期日が設定されるのが通常です。
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特定調停期日における手続
第1回調停期日
第1回の調停期日では、申立人債務者だけが呼び出されるのが通常です。そして、調停委員と債務の状況や返済計画などについて話し合うことになります。
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第2回以降の調停期日
第2回以降の調停期日には、債権者も呼び出されることになります。そして、債権者もまじえて話し合いをしていくことになります。
もっとも、実際に対面して話し合いをするわけではなく、調停委員が一方から話を聞き、その間、他方は別室で待機しています。そして、一方から聞いた話を、調停委員が相手方に伝えるという方式がとられることが多いと思います。
なお、貸金業者などは、通常、出頭してきません。電話で貸金業者側の担当者と話をするというのが一般的でしょう。
第2回期日で話合いが付けば、当事者が合意した条項が調停調書に記載され、調停は終了します。
しかし、話合いがつかなければ、3回、4回・・・と続いていくことになります(ただし、3回目でも話がつかなければ、不調として調停手続が終了するのが一般的と思われます。)。
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調停調書の作成・17条決定
話し合いがまとまった場合には、裁判所で話し合いの結果をまとめた調停調書を作成してくれます。以降は、この調停調書に記載された内容に従って返済をしていくことになります。
仮に話し合いがつかなかった場合でも、それまでの話し合いに基づいて、裁判所が妥当と考える返済条件で決定をしてくれる場合があります。これを17条決定といいます。
17条決定に対して異議がなされない場合には、その内容で返済をしていけばよいということになります。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
債務整理と特定調停で悩んでいる場合
特定調停は、弁護士などに依頼せずに行うことが可能です。特に、債務がそれほど大きくない場合には、特定調停を選択することも考えられます。
他方、債務が高額な場合には、自己破産や個人再生なども考えておかなければいけません。自己破産や個人再生の場合には、弁護士に相談・依頼する必要があります。
まずは、債務整理について相談をしてみた上で、特定調停にするのか債務整理にするのかを選択した方がよいでしょう。
今どきは、ほとんどの法律事務所で債務整理の相談は無料相談です。むしろ有料のところを探す方が難しいくらいです。無料ですので、とりあえず相談してみてから考えるのが得策です。
弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区
弁護士法人ひばり法律事務所
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・所在地:東京都墨田区
レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
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・所在地:東京都渋谷区
参考書籍
本サイトでも特定調停について解説していますが、より深く知りたい方のために、債務整理や特定調停の参考書籍を紹介します。
特定調停法逐条的概説
編集:濱田芳貴 出版:民事法研究会
特定調停法の逐条解説。かなり詳細に書かれているため、実務家向けです。個人の債務整理だけでなく、事業再生にも対応しています。
クレジット・サラ金処理の手引き(6訂版)
編著・出版:東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会
東京の三弁護士会による債務整理・クレサラ事件処理全般についての実務書。債務整理全般を1冊でまとめている実務書は意外と少ないので、債務整理を知るにはちょうど良い本です。
中小企業再生のための特定調停手続の新運用の実務
編集:日弁連中小企業法律支援センター 出版:商事法務
記事本文の内容と異なりますが一応紹介。特定調停の手続は、個人の債務整理だけでなく、中小企業の事業再生・私的整理の一環として利用されることも増えています。