この記事にはPR広告が含まれています。

破産手続が開始するとリース契約はどのように処理されるのか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産法の画像
point

リース契約とは、「特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間(以下「リース期間」という。)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(以下「リース料」という。)を貸手に支払う取引」に係る契約のことを言います(リース取引に関する会計基準4条)。

リース契約の当事者について破産手続が開始されたとしても、リース契約は終了しません。したがって、破産管財人は、リース契約を清算する処理をしなければなりません。

破産手続におけるリース契約の処理

リース契約とは、「特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間(以下「リース期間」という。)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(以下「リース料」という。)を貸手に支払う取引」に係る契約のことを言います(リース取引に関する会計基準4条)。

なお、2027年4月から適用されるリース取引に関する会計基準6条では、「リースとは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分」と定義されています。

いずれにしろ、リース業者など(レッサー)がユーザー(レッシー)に対して、一定期間、目的物の使用権を与え、ユーザーがリース業者に対して対価(リース料)を支払うのが、リース契約です。

日常生活でリース契約を締結することはそれほど多くありませんが、事業を運営するにあたっては、什器・備品・設備・機械・車両などのリースは頻繁に行われています。

このリース契約は、ユーザー(レッシー)またはリース業者(レッサー)について破産手続が開始された場合でも、当然には終了しません。

したがって、破産管財人は、破産手続開始後、そのリース契約の清算処理を行う必要があります。

ファイナンス・リースとオペレーティング・リース

リース契約には、大きく分けると、「ファイナンス・リース契約」と「オペレーティング・リース契約」があると言われています。

ファイナンス・リース契約とは、「リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という。)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引」に係るリース契約のことを言います(リース取引に関する会計基準5条)。

※なお、2027年4月から適用される新リース取引に関する会計基準11条では、「『ファイナンス・リース』とは、契約に定められた期間(以下「契約期間」という。)の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリースで、借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリースをいう」と定義されています。

ファイナンス・リース契約には、リース期間満了時にリース物件に残存価値はないものとみて、リース業者がリース物件の取得費用等の投下資本を全額回収できるようにリース料が算定される「フルペイアウト方式」(最二小判平成7年4月14日)がとられることが多いでしょう。

他方、オペレーティング・リース契約とは、「ファイナンス・リース取引以外のリース取引」に係るリース契約のことを言います(リース取引に関する会計基準6条)。

※なお、新リース取引に関する会計基準14条では、「『オペレーティング・リース』とは、ファイナンス・リース以外のリースをいう」と定義されています。

もっとも、リース契約の法的性質には、明確な法律上の規定はなく、定まった解釈や区分があるわけではありません。また、リースの形態には、非常にさまざまな形態があります。

そのため、破産手続においてリース契約をどのように取り扱うべきかは、それぞれのリース契約の実体に即して個々の事案ごとに個別に判断する必要があります。

ユーザー(レッシー)が破産した場合

前記のとおり、ユーザー(レッシー)について破産手続が開始された場合、破産管財人は、破産手続開始後、そのリース契約を清算する必要があります。

どのような処理が行われるのかは、それぞれのリース契約の実体ごとに個別に異なってきます。

ファイナンス・リース契約の場合

リース契約の締結後、リース物件の引き渡しが未了の段階でユーザーについて破産手続が開始された場合、ユーザーのリース料支払債務もリース会社のリース物件引渡債務も履行されていないということです。

したがって、この場合は双方未履行双務契約として扱われるので、破産管財人は、リース契約を解除する履行請求するかを選択することになります(破産法53条1項)。

解除を選択した場合、破産管財人はリース業者にリース物件を返還します。他方、履行を選択した場合、破産管財人はリース料をリース会社に支払う代わりに、リース物件の引き渡しを求めます。

リース契約が締結されてリース物件もすでに引渡されている場合には、双方未履行双務契約として取り扱われるかどうかについては争いがあります。

この点、フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約の場合、「その実質はユーザーに対して金融上の便宜を付与するものであるから、右リース契約においては、リース料債務は契約の成立と同時にその全額について発生し、リース料の支払が毎月一定額によることと約定されていても、それはユーザーに対して期限の利益を与えるものにすぎず、各月のリース物件の使用と各月のリース料の支払とは対価関係に立つものではない」ため、「リース業者は、ユーザーに対してリース料の支払債務とけん連関係に立つ未履行債務を負担していない」と解されています(前掲最二小判平成7年4月14日)。

この解釈によれば、フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約の場合は双務契約関係にあるとは言えないことになるので、双方未履行双務契約として取り扱われるはないと解釈することになります。

そうすると、破産管財人が、破産法53条1項に基づいて契約を解除することはできません。

もっとも、リース業者側は、リース料未払いの債務不履行により契約を解除することができます。実際、ユーザーが破産した場合、リース会社が契約を解除するのが通常です。

また、フルペイアウト方式でないファイナンス・リース契約の場合も、基本的には、フルペイアウト方式の場合と同様、「リース物件の使用とリース料の支払とは対価関係に立つものではない」と解されています(最一小判平成5年11月25日)。

したがって、破産管財人から解除することはできないと解することになるでしょう。

ただし、フルペイアウト方式でないファイナンス・リース契約の場合には、フルペイアウト方式の場合よりも賃貸借契約に近い面があるため、双方未履行双務契約として扱うべきであるとの解釈もあり得ます。

このファイナンス・リース契約の未払いリース料は、別除権付の破産債権として扱われると解されています。

オペレーティング・リース契約の場合

オペレーティング・リースには、メンテナンス・リースやレバレッジド・リースなど非常にさまざまな形態のリース契約があります。

したがって、一概にどのように扱うべきかを判断することができません。それぞれの契約内容に応じて個別的に判断するほかありません。

例えば、オペレーティング・リースの中にも、主としてユーザーに対して金融上の便宜を付与するためのファイナンス・リースに近いものについては、ファイナンス・リース契約と同様の処理をしていくことになります。

他方、メンテナンス・リースのように、単に物件の利用だけでなく、その後のメンテナンス自体も重要な意味を持つ契約の場合には、リース会社側もリース料の支払債務とけん連関係に立つ未履行債務があると言えるので、破産法53条1項の適用があると解することも可能でしょう。

破産法53条1項の適用があると解釈した場合、破産管財人は、当該リース契約を解除するか履行するかを選択することになります。

このファイナンス・リース契約の未払いリース料を別除権付の破産債権として扱うべきか否かも、それぞれの契約内容に応じて個別的に判断することになります。

リース会社(レッサー)が破産した場合

前記のとおり、リース業者(レッサー)でについて破産手続が開始された場合も、破産管財人は、破産手続開始後、そのリース契約を清算させる処理をする必要があります。

リース契約の締結後、リース物件の引き渡しが未了の段階でリース業者について破産手続が開始された場合は、双方未履行双務契約として、破産管財人は、リース契約を解除するか履行をするかを選択することになります。

履行を選択した場合、破産管財人はユーザーにリース物件を引き渡し、ユーザーからリース料を回収して破産財団に組み入れます。

ただし、リース契約を清算しなければなりませんから、破産管財人は、そのリース物件の所有権とリース料請求権を第三者に売却することによってリース契約を清算することになります。

他方、リース契約締結後、リース物件もすでに引渡されている場合、ユーザーの破産の場合と同様、双方未履行双務契約となるかどうかについて争いがあります。

この点、フルペイアウト方式のファイナンス・リースであったときは、双方未履行双務契約とはならないと解釈することになるでしょう。したがって、破産管財人は契約を解除することができません。

そのため、破産管財人はリース料を回収して破産財団に組み入れることになりますが、最終的には、リース物件の所有権とリース料請求権を第三者に売却することによってリース契約を清算することになります。

フルペイアウト方式でないファイナンス・リースやオペレーティング・リースの場合は、それぞれの契約内容に応じて、破産法53条1項の適用があるか否かを判断して処理することになるでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第5版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産処理法入門(第6版)
著者:山本和彦  出版:有斐閣
倒産法の入門書。「入門」ではありますが、ボリュームはそれなりにあります。倒産法全体を把握するために利用する本です。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

タイトルとURLをコピーしました