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請負人が破産すると請負契約はどうなるのか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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請負人が破産した場合、当該請負契約の目的である仕事が破産者以外の者において完成することのできない性質のものであるため、破産管財人において破産者の債務の履行を選択する余地のないときでない限り、破産法53条1項の適用があると解されています。

破産法53条1項の適用がある場合、破産管財人は、当該請負契約を解除をするか、請負人の仕事を完成させて注文者に請負報酬を請求するかを選択することができます。

他方、注文者は、仕事が完成するまでの間であればいつでも、損害の賠償をして契約を解除することができます(民法641条)。

請負人が破産した場合の請負契約の処理

請負契約を締結していた請負人が、仕事を完成前させる前に、破産手続を開始することがあります。

請負人が破産した場合であっても、請負契約は当然に終了するわけではありません。契約が解除されるまで、または仕事が完成するまでの間は、請負契約は継続されます。

そのため、請負人が破産した場合、当該請負契約を解除するのか、または仕事を完成させるまで請負契約を継続させるのかが問題となってきます。

具体的には、未完成の仕事を完成させるか否か、途中まで完成している請負の仕事の成果をどのように扱うべきか、請負報酬や費用をどのように清算すべきかなどが問題となってきます。

破産管財人による請負契約の解除

破産法 第53条

  • 第1項 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
  • 第2項 前項の場合には、相手方は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか、又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、破産管財人がその期間内に確答をしないときは、契約の解除をしたものとみなす。
  • 第3項 前項の規定は、相手方又は破産管財人が民法第631条前段の規定により解約の申入れをすることができる場合又は同法第642条第1項前段の規定により契約の解除をすることができる場合について準用する。

請負契約は双務契約ですから、請負人が仕事完成前に破産手続を開始すると、当該請負契約は双方未履行の双務契約の状態になります。

したがって、破産法53条1項に基づき、破産管財人が、当該請負契約を解除するか、または、請負人の債務を履行して相手方である注文者に対して履行を請求するのかを選択するのが原則です。

もっとも、請負契約の場合、仕事の内容によっては、その請負人しかできないような非常に専門的で特殊な技能などを要する仕事の場合もあります。

その場合、請負契約を解除されてしまうと、注文者は、他に代わりの請負人を探すことができなくなり、単純に請負契約か解除される以上の不利益を被るおそれがあります。

そこで、請負契約については、破産法53条1項の適用を一定限度制限する必要があります。

この点について、最高裁判所第一小法廷昭和62年11月26日判決では、「当該請負契約の目的である仕事が破産者以外の者において完成することのできない性質のものであるため、破産管財人において破産者の債務の履行を選択する余地のないときでない限り」破産法53条の規定が適用されると判示されています。

逆にいえば、「当該請負契約の目的である仕事が破産者以外の者において完成することのできない性質のものであるため、破産管財人において破産者の債務の履行を選択する余地のないとき」には、破産法53条1項に基づく契約解除はできないということです。

契約解除ができない場合、注文者が民法641条により契約を解除しない限り、破産管財人は履行請求をするほかないことになります。

破産管財人による契約解除が可能な場合に、破産管財人が請負契約を解除したときは、その時点で完成している仕事があれば、破産管財人は、出来高に応じた報酬の支払いを注文者に請求することになります。

前払い報酬の処理

請負契約において、着手金など請負報酬の前払いがなされている場合は、出来高部分の報酬額から前払い分を控除し、その差額を注文者に対して請求します。

逆に、前払い分の方が出来高部分の報酬額よりも大きい場合には、注文者が、前払い分から出来高部分の報酬額を控除した金額の返還を求めることになります。

この注文者の前払い報酬過払い分の返還請求権は、財団債権になると解されています(破産法54条2項)。

超過費用相当額の損害賠償請求の処理

請負契約が途中で解除されると、注文者は、残工事等の仕事を完成させるために新たに請負人を探すなどしなければなりません。当然、超過費用がかかることになります。

そこで、破産管財人による出来高報酬の請求に対して、注文者が超過費用相当額の損害賠償請求権による相殺を主張することがあります。

この出来高報酬請求権と超過費用損害賠償請求権との相殺については、超過費用損害賠償請求権は破産手続開始後に発生した債権であることなどの理由から、相殺は認められないとするのが一般的な解釈です。

もっとも、相殺はできませんが、超過費用損害賠償請求権について、破産債権者として配当に加わることは可能です(破産法54条1項、97条8号)。

違約金の処理

請負契約においては、請負人が仕事を完成させることができなかった場合に違約金が発生する旨が定められていることがあります。

違約金条項が破産管財人に対して効力を有するか否かは、契約の解釈の問題です。

したがって、違約金条項があるからといって、必ずしも、注文者による違約金の主張が認められるとは限りません。事案によっては、違約金条項は無効となるか、一部無効として扱われることもあります。

なお、仮に違約金条項が有効であった場合、前記の超過費用損害賠償請求権と同様に、注文者の違約金請求権と出来高報酬請求権との相殺は認められないと解すべきであり、また、注文者の違約金請求権は破産債権となります(破産法54条1項、97条8号)。

注文者による請負契約の解除

民法 第641条

  • 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。

前記のとおり、請負人法人が破産した場合、当該請負契約は、破産法53条1項に基づき破産管財人によって解除される場合もありますが、注文者が、民法641条に基づいて契約を解除することもあります。

ただし、注文者が民法641条に基づいて請負契約を解除するためには、仕事が完成する前でなければならず、さらに、破産管財人に対して損害賠償を支払わなければなりません。

すでに請負人の破産によって損失を被っている上に、さらに損害賠償までしはらなければならないのですから、注文者にとっては二重の負担となる可能性があります。

そのため、注文者から請負契約が解除されることはあまりないでしょう。

注文者が契約を解除した場合の処理

注文者によって契約が解除された場合も、基本的には、破産管財人が契約を解除した場合と同様の処理がなされます。

ただし、注文者から契約を解除する場合には、破産財団に生じる損害の賠償を破産管財人に対して支払わなければなりません。支払われた損害賠償金は破産財団に組み入れられます。

また、注文者からの解除であるため、超過費用の損害賠償請求権や違約金請求権は発生しないことになります。

前払い報酬の返還請求権については、契約条項によりますが、注文者からの解除の場合には前払い報酬は返還しない旨の条項となっていることが多く、返還請求権自体が発生しないことがあります。

仮に前払い報酬の返還請求権が認められる場合でも、その返還請求権は破産債権にすぎません。

請負契約の継続(履行請求)が選択された場合

請負人が破産した場合、破産管財人は請負人の債務を履行して相手方である注文者に履行を請求することができます。

破産財団中に資金的余裕や設備等があり、作業員を確保できるなど仕掛中の仕事を完成させることが可能であり、完成させて請負報酬を回収した方が破産財団にとって有益である場合には、完成までの期間や回収可能性なども加味して、履行請求を選択することがあります。

他方、破産者以外に請負仕事を完成できない等の事情があるために破産管財人が請負契約を解除できない場合は、注文者が契約を解除しない限り、履行請求をするほかないことになります。

いずれにしても、履行請求を選択するということは請負契約が存続するということですので、破産管財人は、請負人の債務を履行、つまり仕事を完成させる義務を負うことになります。

どのように仕事を完成させるのかはケースバイケースですが、請負人の従業員を雇用して仕事を完成させてもらったり、あるいは、別の請負人との間で請負契約を締結して仕事を完成させることになるでしょう。

非常に大規模な請負工事等が残っている場合であれば、裁判所の許可を得て請負人の事業を継続させて、仕事を完成させることもあり得ます(破産法36条)。

仕事が完成した場合、破産管財人は、請負契約に従って注文者への引渡しなどを行って、注文者に対して報酬の支払いを請求して回収し、破産財団に組み入れることになります。

注文者の催告権

請負人が破産した場合、破産管財人が契約解除をするのか履行請求をするのかをいつまでも選択しないでいると、相手方である注文者は非常に不安定な地位に置かれ続けることになってしまいます。

そこで、注文者は、破産管財人に対して、契約を解除するのかまたは履行請求をするのかを、相当期間内に確答するよう催告できます。

この相当期間内に確答がなければ、請負契約は解除されたものとみなされます(破産法53条2項、3項)。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の選択科目とされています。この倒産法の基本となる法律が、破産法です。

民事再生法など他の倒産法は破産法をもとにした法律した法律ですので、破産法を理解していることが前提となってきます。そのため、学習する順番としては、まずは破産法からでしょう。

もっとも、出題範囲が限られているとはいえ、破産法もかなりのボリュームです。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第5版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産処理法入門(第6版)
著者:山本和彦  出版:有斐閣
倒産法の入門書。「入門」ではありますが、ボリュームはそれなりにあります。倒産法全体を把握するために利用する本です。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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