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破産手続が開始すると法人・会社は消滅するのか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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破産手続が開始されると、破産者である法人・会社は解散するのが通常です。

ただし、解散したとしても、ただちに法人格が消滅するのではなく、その法人格は、破産手続による清算の目的の範囲内において、破産手続が終了するまで存続するものとみなされます(破産法35条)。

したがって、破産手続が終了した時に破産法人・破産会社の法人格が消滅することになります。また、法人・会社の商業登記も、破産手続が廃止または終結したことが登記された上で閉鎖されます。

なお、破産手続終了後に新たな財産が発覚した場合などには、清算の目的の範囲内で法人格が存続しているものとして扱われ、その新たに発覚した財産を債権者に分配するために、新たに清算人を選任して清算手続を行う必要があると解されています。

法人・会社の解散

法人・会社の解散とは、法人・会社の法人格を消滅させる手続のことをいいます。

例えば、株式会社の場合には、以下の事由がある場合に解散するものとされています(会社法471条1項)。

会社の解散事由
  • 定款で定めた存続期間の満了
  • 定款で定めた解散の事由の発生
  • 株主総会の決議
  • 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
  • 破産手続開始の決定
  • 会社法824条1項または833条1項の規定による解散を命ずる裁判

また、一般社団法人であれば、以下の事由がある場合には解散するとされています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律148条)。

一般社団法人の解散事由
  • 定款で定めた存続期間の満了
  • 定款で定めた解散の事由の発生
  • 社員総会の決議
  • 社員が欠けたこと。
  • 合併(合併により当該一般社団法人が消滅する場合に限る。)
  • 破産手続開始の決定
  • 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律261条1項または268条の規定による解散を命ずる裁判

一般財団法人であれば、以下の事由がある場合には解散するものとされています(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律202条)。

一般財団法人の解散事由
  • 定款で定めた存続期間の満了
  • 定款で定めた解散の事由の発生
  • 基本財産の滅失その他の事由による一般財団法人の目的である事業の成功の不能
  • 合併(合併により当該一般財団法人が消滅する場合に限る。)
  • 破産手続開始の決定
  • 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律261条1項または268条の規定による解散を命ずる裁判
  • ある事業年度及びその翌事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合
  • 新設合併により設立する一般財団法人は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律199条において準用する123条第1項の貸借対照表及びその成立の日の属する事業年度に係る貸借対照表上の純資産額がいずれも300万円未満となった場合

上記のとおり、破産手続開始の決定を受けることは、法人・会社の解散事由とされています。

破産手続が開始した場合の法人・会社の存続擬制

破産法 第35条

  • 他の法律の規定により破産手続開始の決定によって解散した法人又は解散した法人で破産手続開始の決定を受けたものは、破産手続による清算の目的の範囲内において、破産手続が終了するまで存続するものとみなす。

前記のとおり、法人・会社が破産手続開始決定を受けると、その法人・会社は解散するのが通常です。

ただし、解散することになったとしても、ただちにその法人・会社の法人格が消滅するわけではありません。

破産手続開始以外の理由によって法人・会社が解散した場合、ただちに法人格が消滅するわけではなく、解散後、その法人・会社は清算法人とされ、清算人による清算手続が行われます。

法人・会社が破産手続開始決定を受けた場合も同様です。

法人・会社が破産手続開始決定を受けた場合でも、ただちに法人格が消滅するのではなく、その法人格は、破産手続による清算の目的の範囲内において、破産手続が終了するまで存続するものとみなされます(破産法35条)。

破産でない解散の場合も破産による解散の場合も、当該法人は清算法人として存続します。破産でない解散の場合は清算手続において清算人が処理をし、破産による解散の場合は破産手続において破産管財人が清算処理をします。

ただし、存続すると言っても、あくまで清算の目的の範囲内でのみ法人格が存続するだけですので、通常どおりの営業活動などを行うことはできません。

破産手続の終了による法人格の消滅

前記のとおり、破産手続が開始されると、清算の目的の範囲内でのみ法人・会社は存続する扱いとなり、その間に破産管財人によって清算処理がなされます。

この清算処理において、法人・会社の財産はすべて処分されます。また、従業員との雇用契約、事業所の賃貸借契約、水道光熱費等の契約、取引先との契約などすべての契約・取引関係も解消されます。

これらの清算処理が終わった後、債権者への弁済や配当が行われて破産手続が終結したときに、破産法人・破産会社の法人格が消滅し、名実ともに法人・会社が消滅することになります

なお、法人格が消滅するので、破産法人・破産会社が負担していた債務も消滅することになります(最二小判平成15年3月14日)。

法人・会社の商業登記の閉鎖

破産手続が開始されると、裁判所書記官によって、管轄の法務局に対して破産手続開始の登記の嘱託がされ、破産法人・破産会社の商業登記に破産手続を開始した旨の登記がされることになります。

そして、破産手続が廃止または終結になった場合、裁判所書記官によって、管轄の法務局に対して破産手続廃止または終結の登記の嘱託がされ、破産法人・破産会社の商業登記に破産手続が廃止または終結した旨の登記がされることになります。

破産手続廃止または終結の登記がされると、破産法人・破産会社の商業登記は閉鎖されます。

これにより、法人破産・会社破産によって法人・会社が消滅したことは、登記上でも明らかにされるわけです。

破産手続終結後に財産等が発覚した場合

前記のとおり、破産手続が終結すると、破産者である法人・会社の法人格は消滅します。

もっとも、破産手続終結後に、破産者である法人・会社について、新たに財産が発覚したり、財産について何らの法的問題が生じたりするなどの問題が生じる場合があります。

この場合、すでに破産手続は終結しているため、破産管財人もすでに存在しません。

そこで、破産手続終結後に新たな財産が発覚するなどした場合には、清算法人としての法人格が存続しているものとして扱われ、その新たに発覚した財産を債権者に分配するために、新たに清算人を選任して清算手続を行う必要があると解されています。

この点について、最高裁判所は、「同時破産廃止の決定がされた場合には、破産手続は行われないのであるから、なお残余財産が存するときには清算手続をする必要があり、そのためには清算人を欠くことができない」と判示しています(最二小判昭和43年3月15日)。

なお、破産財団から放棄された財産についての事案ですが、「破産財団から放棄された財産を目的とする別除権につき別除権者がその放棄の意思表示をすべき相手方は、破産者が株式会社である場合を含め、破産者」であるとされます(最二小決平成12年4月28日)。

法人破産の場合には、破産財団から放棄された財産について「別除権放棄の意思表示を受領し、その抹消登記手続をすることなどの管理処分行為は、商法417条1項ただし書の規定による清算人又は同条2項の規定によって選任される清算人により行われるべき」と解されています(最二小決平成16年10月1日)。

破産手続終了後に財産が発覚した場合も、破産財団から放棄された財産についての事案と同様、別除権放棄の意思表示の相手方などは清算人となると解することができるでしょう。

参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、本記事「破産手続開始による法人の存続擬制」などに関する参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第5版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産処理法入門(第6版)
著者:山本和彦  出版:有斐閣
倒産法の入門書。「入門」ではありますが、ボリュームはそれなりにあります。倒産法全体を把握するために利用する本です。 

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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