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破産管財人はどのような義務を負うのか?義務に違反した場合の法的責任も解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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破産管財人には、その職務を遂行するにあたって、善管注意義務(破産法85条1項)、公正中立義務、忠実義務、報告義務が課されています

これらの義務に違反した場合、破産管財人は、個人として、損害を与えた相手方に対して損害賠償義務を負うことがあります(破産法85条2項、民法709条)。

また、義務違反行為について、特別背任罪(破産法267条)や収賄罪(破産法273条)などの刑事責任に問われることもあります。

さらに、破産管財人報酬などにつき源泉徴収を行わなければならないなどの税務上の義務を負う場合もあります。

破産管財人の義務・責任

破産手続は、破産者の財産を換価処分して金銭に換えて、それを各債権者に対して弁済または配当する倒産手続です。この破産手続を実際に遂行していくのが、破産管財人です。

破産管財人は、破産者の財産の管理処分権を有し、それに基づいて、破産者の財産を調査して破産財団を適切に増殖させ、それを換価処分し、各債権者に公平・平等に弁済または配当していく職務(破産管財業務)を遂行していくことになります。

しかも、破産法の目的は、「支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ること」にあります(破産法1条)。

したがって、破産管財人も、債権者に対する公平・平等な弁済または配当を実現しなければならないだけでなく、利害関係人の利害や権利関係を適切に調整し、また、債務者の経済的再生の機会を図れるように職務を遂行しなければなりません。

破産管財人には、債権者等の利害関係人の利益に配慮しつつも債務者の経済的更生が図れるように、管財業務を適切に遂行する義務・責任があります。これが破産管財人の最も基本的な義務・責任でしょう。

さらに、破産管財人には、管財業務の遂行について、以下の法的義務が課されています。

破産管財人の法的義務
  • 善管注意義務
  • 公正中立義務
  • 忠実義務
  • 報告義務

善管注意義務

破産法 第85条

  • 第1項 破産管財人は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行わなければならない。
  • 第2項 破産管財人が前項の注意を怠ったときは、その破産管財人は、利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負う。

引用元:e-Gov法令検索

破産管財人は、善良な管理者の注意をもって職務を遂行しなければならない義務を負っています(破産法85条1項)。これを「善管注意義務」といいます。

具体的に言うと、「破産管財人は、職務を執行するに当たり、総債権者の公平な満足を実現するため、善良な管理者の注意をもって、破産財団をめぐる利害関係を調整しながら適切に配当の基礎となる破産財団を形成すべき義務を負う」ことになります(最一小判平成18年12月21日)。

そして、上記判例によると、この破産管財人の善管注意義務は、「破産管財人としての地位において一般的に要求される平均的な注意義務」を指すものと解されています。

もっとも、破産管財人には、破産管財業務の遂行について広範な自由裁量が認められています。

そのため、破産管財人の行為が善管注意義務違反といえるかどうかは、当該行為の具体的な態様だけでなく、事案の規模や特殊性、早期処理の要請などに照らして個別的に判断されると解されています。

公正中立義務

破産法 第1条

  • この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

引用元:e-Gov法令検索

破産管財人は、裁判所から選任されて、公的な手続である破産手続を遂行する立場にあります。

また、破産管財人には、債権者の利益を代表する側面がありますが、債務者の経済的更生を図ることも求められており、その点では債務者の後見的な役割も期待されています。

そのため、破産管財人は、職務の執行にあたり、すべての利害関係人に対して公正中立でなければならない義務(公正中立義務)を負っていると解されています。

特定の債権者、債務者(破産者)、または特定の利害関係人のみを、不当に優遇するような措置をとることは許されません。

もちろん、破産管財人は総債権者の利益を図るために破産財団を増殖させるよう尽力しなければなりませんが、それはあくまで「総債権者」のためであって、特定の債権者のためではありません。

また、債務者の経済的更生を図る必要があるといっても、総債権者や利害関係人等の利益を不当に害してまで債務者の経済的更生を図る措置をとるという意味でもありません。

あくまで、破産法その他法令の範囲内で、総債権者の利益を図り、債務者の経済的更生を図り、また利害関係人の権利を調整するのであって、誰か特定の人だけを、法令の定めを超えて優遇することはできないのです。

忠実義務

破産管財人は、裁判所から委託を受けて利害関係人のために職務を行う立場にあります。

そのため、破産管財人には、民法または会社法で規定されている忠実義務の規定(民法108条、826条、会社法355条、356条など)が類推適用されると解されています。

報告義務

破産管財人は破産手続の遂行者であるとはいえ、その職務執行は、破産裁判所(当該破産事件が係属している裁判所)による監督の下で行われます(破産法75条1項)。

また、債権者等の手続に対する理解を得るために、手続の進捗状況などに関する情報を提供していく必要もあります。

そのため、破産管財人には、破産裁判所または破産債権者等に対して、一定の事項を報告しなければならない義務が課されています

裁判所に対する報告義務

破産裁判所による監督を担保するため、破産管財人には、破産裁判所に対する各種の報告義務が課されています。

まず、破産管財人は、破産手続開始後遅滞なく、以下の事項を記載した報告書を提出しなければならないとされています(破産法157条1項)。]

破産裁判所に対する報告義務
  • 破産手続開始に至った事情
  • 破産者および破産財団に関する経過および現状
  • 役員の財産に対する保全処分または役員責任査定決定を必要とする事情の有無
  • その他破産手続に関し必要な事項

また、破産裁判所は、破産管財人に対して業務の遂行状況についての報告を求めることができ、破産管財人には裁判所からの求めに応じて報告をしなければならない義務が課されています(破産法157条2項)。

加えて、破産管財人が、破産手続開始後に破産財団に属する一切の財産について価額の評定をした場合には、その財産目録または貸借対照表を作成して、これを裁判所に提出しなければならないとされています(破産法153条2項)。

債権者等に対する報告義務

破産債権者などから手続に対する理解・協力を得るため、破産管財人は、債権者委員会が設けられている場合、その債権者委員会に対して、153条2項の報告書を裁判所に提出したときおよび破産法157条1項の報告書に提出したときは、それぞれの報告書を債権者委員会にも提出しなければなりません。

また、破産管財人は、財産状況報告集会において、157条1項の事項を報告しなければならず、また、債権者集会の決議がある場合には、破産財団の状況も報告しなければならないとされています。

義務に違反した場合の民事責任

前記までとおり、破産管財人には各種の法的義務が課されています。これらの義務に違反した場合、裁判所は義務違反の是正を求め、場合によっては、破産管財人を解任することができます

それだけではなく、破産管財人であっても、法的義務違反について民事責任を負担することは当然です。

具体的に言うと、各種法的義務違反があった場合、破産管財人は、損害を被った相手方に対して、個人として、損害賠償を支払うべき法的責任を負います(破産法85条1項、民法709条)。

また、その相手方が有する損害賠償請求権は財団債権になります(破産法148条1項4号)。破産管財人個人の損害賠償義務とこの財団債権は、不真正連帯債務になると解されています。

損害賠償を財団債権として破産財団から支出した場合、破産財団は、当該義務違反を行った破産管財人に対して求償することができます。

義務に違反した場合の刑事責任

前記のとおり、破産管財人がその職務に関して法的義務に違反した場合、民事責任を負います。さらに、民事責任のほか、破産管財人が刑事責任を科せられることもあります。

破産管財人が、自己または第三者の利益を図るため、あるいは債権者に損害を与える目的で任務違背行為をし、それによって、債権者に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、あるいはその両方を併科するとされています(破産管財人等の特別背任罪。破産法267条)。

また、破産管財人が、その職務に関して賄賂を収受・要求・約束したときは3年以下の懲役または300万円以下の罰金あるいはその両方の併科、不正の請託を受けたときは5年以下の懲役または500万円以下の罰金あるいはその両方の併科されます(破産管財人等の収賄罪。破産法273条1項、2項)。

税務上の義務

破産管財人は、破産者の税務処理を行わなければならない場合があります。個人破産の場合には、ほとんど行われませんが、法人破産の場合には税務処理が必要となってきます。

確定申告をすることによって還付金を受けることができる場合には、破産財団の増殖につながります。そのため、破産管財人は、当該還付を受けることのできる税金について確定申告をしなければならないでしょう。

もっとも、破産管財人に確定申告義務があるかどうかについて、行政解釈上は破産管財人に申告義務があると解しているようですが、裁判所では、確定申告をすることが望ましいとしつつも、確定申告をする義務があるとする明確な結論を示した裁判例はありません。

他方、源泉徴収については、破産管財人報酬については源泉徴収義務があると解されています(最二小判平成23年1月14日)。

なお、同判例では、破産者の従業員に対して退職金を配当する場合については破産管財人に当該退職金の源泉徴収をする義務はないと解しています。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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