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劣後的破産債権とは?意味や種類・債権の劣後化などを詳しく解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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劣後的破産債権とは、優先的破産債権および一般の破産債権に配当において劣後する破産債権のことをいいます(破産法99条1項)。

劣後的破産債権とは

破産法 第99条

  • 第1項 次に掲げる債権(以下「劣後的破産債権」という。)は、他の破産債権(次項に規定する約定劣後破産債権を除く。)に後れる。
  • 第1号 第97条第1号から第7号までに掲げる請求権
  • 第2号 破産手続開始後に期限が到来すべき確定期限付債権で無利息のもののうち、破産手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に1年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する破産手続開始の時における法定利率による利息の額に相当する部分
  • 第3号 破産手続開始後に期限が到来すべき不確定期限付債権で無利息のもののうち、その債権額と破産手続開始の時における評価額との差額に相当する部分
  • 第4号 金額及び存続期間が確定している定期金債権のうち、各定期金につき第2号の規定に準じて算定される額の合計額(その額を各定期金の合計額から控除した額が破産手続開始の時における法定利率によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額を超えるときは、その超過額を加算した額)に相当する部分

引用元:e-Gov法令検索

破産した債務者(破産者)に対する債権は、財団債権に該当する債権を除いて、「破産債権」として扱われ、破産手続における配当によって支払いを受けることになります。

破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないもののことです。

この破産債権には、それぞれの債権の内容に応じて、優先順位が設けられています。優先順位が上のものから順に配当されていきます。具体的に言うと、以下の優先順位になっています。

破産債権の優先順位

このうち、劣後的破産債権とは、優先的破産債権および一般の破産債権に配当において劣後する破産債権のことをいいます(破産法99条1項)。

劣後的破産債権に当たる債権

どのような債権が劣後的破産債権に該当するのかについては、前記破産法99条1項各号に規定されています。

破産法99条1項1号の劣後的破産債権

破産法 第97条

  • 次に掲げる債権(財団債権であるものを除く。)は、破産債権に含まれるものとする。
  • 第1号 破産手続開始後の利息の請求権
  • 第2号 破産手続開始後の不履行による損害賠償又は違約金の請求権
  • 第3号 破産手続開始後の延滞税、利子税若しくは延滞金の請求権又はこれらに類する共助対象外国租税の請求権
  • 第4号 国税徴収法(昭和34年法律第147号)又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権(以下「租税等の請求権」という。)であって、破産財団に関して破産手続開始後の原因に基づいて生ずるもの
  • 第5号 加算税(国税通則法(昭和37年法律第66号)第2条第4号に規定する過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税をいう。)若しくは加算金(地方税法(昭和25年法律第226号)第1条第1項第14号に規定する過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金をいう。)の請求権又はこれらに類する共助対象外国租税の請求権
  • 第6号 罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金又は過料の請求権(以下「罰金等の請求権」という。)
  • 第7号 破産手続参加の費用の請求権

引用元:e-Gov法令検索

破産法97条1号から7号までに規定されている債権は、劣後的破産債権として扱われます(破産法99条1項1号)。具体的には、以下の債権が劣後的破産債権になります。

破産法99条1項1号で定める破産債権
  • 破産手続開始後に発生した利息の請求権
  • 破産手続開始後に発生した遅延損害金・違約金の請求権
  • 破産手続開始後に発生した国税の延滞税・利子税、地方税の延滞金(またはこれらに類する共助対象外国租税)の請求権
  • 破産財団に関して破産手続開始後の原因に基づいて発生した国税徴収法または国税徴収法の例によって徴収することのできる租税等の請求権
  • 国税の加算税(過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税)・地方税の加算金(過少申告加算金・不申告加算金・重加算金)の請求権
  • 罰金等の請求権(罰金・科料・刑事訴訟費用・追徴金・過料の請求権)
  • 破産手続参加の費用

破産法99条1項2号の劣後的破産債権

破産手続が開始されると「無利息の期限未到来の確定期限付き債権」は強制的に期限が到来したものとして扱われます。期限が到来していなくても、全額について破産債権として権利を行使できるのです。

もっとも、本来であれば期限が到来していなければ権利を行使できないはずの債権です。破産手続開始によって期限が到来したものとして扱われることによって、通常よりも多くの利益を得る可能性を手に入れています。

そこで、「無利息の期限未到来の確定期限付き債権」のうち通常よりも過分に利益を得ている部分を劣後的破産債権として扱うことにより、債権者間の公平を図っているのが破産法99条1項2号です。

具体的に言うと、「無利息の期限未到来の確定期限付き債権」のうち、「破産手続開始の時から期限に至るまでの期間の年数(その期間に1年に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に応じた債権に対する破産手続開始の時における法定利率による利息の額に相当する部分」は劣後的破産債権になります(破産法99条1項2号)。

破産手続開始時から本来の期限までの期間をもとに算定した法定利率による利息の相当額を過分な利益とみなしているのです。

なお、法定利率による利息相当額を差し引いた部分は、一般の破産債権として権利を行使できます。

破産法99条1項3号の劣後的破産債権

上記破産法99条1項2号は「無利息の期限未到来の確定期限付き債権」の利益を調整する規定であるのに対し、99条1項3号は「無利息の期限未到来の不確定期限付き債権」の利益を調整する規定です。

「無利息の期限未到来の不確定期限付き債権」も、本来であれば権利行使できないはずであったにもかかわらず、破産手続開始によって強制的に期限が到来したものと扱われることにより、通常よりも多くの利益を得られる可能性があります。

そこで、債権者間の公平を図るため、「無利息の期限未到来の不確定期限付き債権」のうち「債権額と破産手続開始の時における評価額との差額に相当する部分」は劣後的破産債権として扱われます(破産法99条1項3号)。

確定期限付き債権と異なり、不確定期限付き債権の場合は、本来の期限がいつ到来するはずだったのかが分かりません。そのため、期間をもとに計算する法定利率による利息の額を割り出すこともできません。

そこで、「無利息の期限未到来の不確定期限付き債権」の場合は、債権額と破産手続開始時の評価額の差額を過分な利益とみなし、その部分を劣後的破産債権としているのです。

破産法99条1項4号の劣後的破産債権

破産法99条1項4号も、2号・3号と同様、利得の調整が目的です。調整の対象となる債権は「金額及び存続期間が確定している定期金債権」です。

金額・存続期間が確定している定期金債権は、本来であれば決められた定期ごとに権利行使できるにすぎないはずですが、破産手続開始によって、全額を破産債権として権利行使できるようになるため、他の債権者との公平を図る必要があります。

そのため、「金額及び存続期間が確定している定期金債権」のうち、「各定期金につき第2号の規定に準じて算定される額の合計額(その額を各定期金の合計額から控除した額が破産手続開始の時における法定利率によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額を超えるときは、その超過額を加算した額)に相当する部分」は劣後的破産債権として扱われます(破産法99条1項4号)。

具体的に言うと、破産手続開始から本来の各期までの法定利率による利息額をすべて合計した額に相当する部分が、劣後的破産債権となります。

ただし、各期の定期金の合計額から破産手続開始から本来の各期までの法定利率による利息の合計額を差し引いた金額が、破産手続開始の時における法定利率によりその定期金に相当する利息を生ずべき元本額を超えるときは、その超過額を加算した額に相当する部分が劣後的破産債権となります。

劣後的破産債権への配当の実際

劣後的破産債権には、財団債権や優先的破産債権のように、その内部での優先順位は決められていません。劣後的破産債権が複数あればすべて金額に応じた比例配分になります。

もっとも、劣後的破産債権に配当されるのは、財団債権が弁済され、優先的破産債権・一般の破産債権にすべて配当がされた後です。

財団債権にも優先的破産債権にも一般の破産債権にもすべて弁済・配当できるほどの原資が集まることはほとんどありません。それほど財産があれば、そもそも破産していないはずです。

そのため、現実的には、劣後的破産債権にまで配当されるケースは稀でしょう

債権の劣後化

前記のとおり、劣後的破産債権として扱われる債権は、破産法99条に定められています。それでは、破産法99条に定められていない債権を劣後的破産債権として扱うことができるのでしょうか?

特定の破産債権を債権者の意思にかかわらず劣後的破産債権として扱うことを「債権の劣後化」と呼んでいます。この債権の劣後化が認められるのかが問題となります。

例えば、法人破産における代表者や役員の法人に対する債権や、子会社の破産における親会社の子会社に対する債権を一般の破産債権と同列に扱ってよいのかといった場面で、債権の劣後化の是非が問題となってきます。

この点については最高裁判例はありません。肯定説と否定説いずれもあります。

下級審裁判例では、「形式的には一般破産債権者とされる者であっても、破産者との関係、破産者の事業経営に対する関与の仕方・程度等によっては、破産手続上他の一般破産債権者と平等の立場で破産財団から配当を受けるべく債権を行使することが信義則に反し許されない場合もある」として、信義則(民法1条2項)を根拠に債権の劣後化を肯定したものがあります(広島地裁福山支部平成10年3月6日判決)。

実務では、他の破産債権者との公平を図るため、破産管財人が債権者と交渉し、破産債権の届出を取り下げるよう促すことが多いでしょう。

約定劣後破産債権

破産法 第99条

  • 第2項 破産債権者と破産者との間において、破産手続開始前に、当該債務者について破産手続が開始されたとすれば当該破産手続におけるその配当の順位が劣後的破産債権に後れる旨の合意がされた債権(以下「約定劣後破産債権」という。)は、劣後的破産債権に後れる。

引用元:e-Gov法令検索

約定劣後破産債権とは、破産債権者と破産者との間で、破産手続開始前に、仮に債務者について破産手続が開始された場合には配当順位が劣後的破産債権よりも後順位になることを認める旨の合意がなされている債権のことをいいます。

この約定劣後破産債権も、劣後的破産債権の一種です。ただし、通常の劣後的破産債権よりもさらに後順位の破産債権となります。

前記のとおり、劣後的破産債権ですら配当されるケースはほとんどありません。それよりも後順位の約定劣後破産債権に配当されるケースは、皆無に近いと言ってよいでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

破産管財人の債権調査・配当(第2版)
著者:岡伸浩ほか 出版:商事法務
破産管財人が行う債権調査手続や配当手続に関する実務書。かなり実務的な内容なので専門家向けです。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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