この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
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被保険者とは、保険の対象となる人(保険が掛けられている人)のことです。自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)の被保険者は、自動車の保有者・運転者です。
自賠責保険の仕組み
交通事故の加害者・運行供用者には、被害者に対して損害賠償を支払う責任があります。
もっとも、加害者・運行供用者に資力が不足する場合や資力がない場合、被害者は満足な損害賠償を受けることができないおそれがあります。
そこで、被害者保護のために設けられているのが、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)です。
加害者などが被害者に損害賠償を支払った場合、自賠責保険会社から加害者などに対して保険金が支払われます。これにより、加害者も安心して損害賠償を支払うことができるようになり、被害者が損害を填補できます。
また、加害者にまったく資力がない場合でも、自賠責保険会社から被害者に対して直接保険金が支払われます。被害者は泣き寝入りする必要がなくなるのです。
自賠責保険の被保険者とは
自動車損害賠償保障法 第11条
- 第1項 責任保険の契約は、第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を保険会社がてん補することを約し、保険契約者が保険会社に保険料を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。
- 第2項 責任共済の契約は、第三条の規定による保有者の損害賠償の責任が発生した場合において、これによる保有者の損害及び運転者もその被害者に対して損害賠償の責任を負うべきときのこれによる運転者の損害を組合がてん補することを約し、共済契約者が組合に共済掛金を支払うことを約することによつて、その効力を生ずる。
引用元:e-Gov法令検索
被保険者とは、保険の対象となる人(保険が掛けられている人)です。被保険者に一定の事由が生じると、保険金が支払われることになります。
そのため、自動車による人身事故を起こした場合に被害者に対して損害賠償責任を負うことになる可能性がある人が、自賠責保険の被保険者となります。
具体的に言うと、自賠責保険の被保険者は、自賠責保険に加入している自動車の「保有者」または「運転者」です。
自賠責保険によって保険金が支払われるのは、自動車の保有者または運転者による人身事故の場合限られることになります。
自動車の保有者またま運転者が人身事故を起こした場合、その保有者や運転者が被害者に対して損害賠償を支払うと、自賠責保険会社から保有者・運転者に保険金が支払われることになります(自動車損害賠償保障法11条。以下「自賠法」と言います。)。
また、前記のとおり、保有者や運転者に資力がなく損害賠償できない場合でも、被害者は、直接自賠責保険会社に保険金の支払いを請求できます。
被保険者:自動車の保有者
自動車損害賠償保障法 第2条
- 第3項 この法律で「保有者」とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいう。
引用元:e-Gov法令検索
自賠責保険の被保険者となる「保有者」とは、「自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するもの」のことをいいます(自賠法2条3項)。
- 自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者であること
- 自己のために自動車を運行の用に供するものであること
自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者であること
自動車保有者の代表例は自動車の所有者ですが、所有者に限らず「自動車を使用する権利を有する者」であれば、保有者となり得ます。
例えば、自動車検査証の使用者欄に記載されている人やレンタカーやカーリースで自動車を借りている人も、自動車を使用する権利を有する者に含まれます。
他方、自己のために自動車を運行の用に供していても、自動車を使用する権利がなければ、保有者には当たりません。例えば、自動車泥棒は、保有者にはなり得ません。
自己のために自動車を運行の用に供するものであること
保有者には「自己のために自動車の運行の用に供するものであること」も必要です。この「自己のために自動車を運行の用に供する者」のことを「運行供用者」といいます。
具体的に言うと、運行供用者とは、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味すると解されています(最三小判昭和43年9月24日・集民92号369頁)。
そのため、運行供用者に該当するかどうかは、運行支配および運行利益があるか否かによって判断されます。
- 運行支配:自動車の使用についての支配権を有すること
- 運行利益:自動車の使用により享受する利益が帰属する者であること
自動車の所有者や保有者の場合には、運行支配や運行利益が認められるのが通常でしょう。
運行供用者責任との関係
保有者が運行供用者責任を負う場合は自賠責保険が適用されますが、物損事故などのように、保有者が運行供用者責任を負わない場合には、自賠責保険は適用されません。
また、運行供用者であっても、「自動車を使用する権利を有する者」でないため自賠法2条3項の保有者に該当しない場合は、自賠責保険の適用がありません。
「保有者」は「運行供用者」に含まれますが、「運行供用者」が「保有者」であるとは限らないので、注意を要します。
被保険者:自動車の運転者
自動車損害賠償保障法 第2条
- 第4項 この法律で「運転者」とは、他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者をいう。
引用元:e-Gov法令検索
自賠責保険の被保険者となる「運転者」とは、「他人のために自動車の運転又は運転の補助に従事する者」のことをいいます(自賠法2条4項)。
「他人のために」自動車を運転または運転の補助をしている者が「運転者」に該当します。自分のために運転している場合は、自賠法2条4項の運転者には当たりません(自分のために運転している場合は、保有者に当たる場合が多いでしょう。)。
なお、この他人のための運転者や運転補助者には運行供用者責任は発生しませんが、民法709条・710条によって一般の不法行為責任を負うことはあります。そのため、自賠責保険の被保険者とされています。
加害者請求と被害者請求
前記のとおり、自動車の保有者と運転者は、自賠責保険における被保険者となります。
したがって、自動車の保有者または運転者は、運行供用者責任や民法などに基づき被害者に対して損害賠償を支払った場合、自賠責会社に対して保険金の支払いを請求することができます(自賠法15条)。
加害者側が保険金請求することから「加害者請求」と呼ばれています。自賠法15条に基づく請求であるため「15条請求」と呼ばれることもあります。
他方、被害者は、自動車保有者や運転者が損害賠償を支払う前であっても、自賠責保険会社に対して、直接、被保険者に代わって損害賠償を支払うことを求めることができます(自賠法16条)。
この被害者による自賠責保険会社への請求を「被害者請求」といいます。自賠法16条に基づく請求であるため「16条請求」と呼ばれることもあります。
この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。
弁護士に依頼するメリット
「交通事故の損害賠償請求は弁護士に頼んだ方がいいの?」
とお悩みの方は少なくないでしょう。
実は、交通事故の損害賠償額には、保険会社の基準と裁判基準(弁護士基準とも呼ばれます。)があります。保険会社の基準は、裁判基準よりもかなり低額に抑えられています。
そのため、自分で保険会社と示談交渉する場合よりも、弁護士に依頼して裁判基準で示談交渉または訴訟をしてもらう方が、損害賠償額が高額になる可能性が高いのです。弁護士に依頼する一番のメリットは、その点にあります。
特に、自動車保険に弁護士特約を付けてある場合には、弁護士費用を保険金で支払うことが可能です。そのため、自己負担がほとんどないまま、弁護士に依頼することができます。弁護士特約がある場合には、間違いなく弁護士に依頼すべきです。
- 被害者の相談無料
- メール相談可・土日祝日対応可
- 着手金無料(完全成功報酬・費用の後払い可能)
- 損害賠償額が増額しない場合は弁護士報酬0円
- 弁護士特約の利用可能
- 所在地:東京都足立区
- 相談無料
- 全国対応・メール相談可
- 着手金無料(完全成功報酬型)
- 増額できなければ弁護士費用は無料
- 弁護士特約の利用可能
- 所在地:東京都港区
参考書籍
本サイトでも交通事故損害賠償について解説していますが、より深く知りたい方のために、交通事故損害賠償の参考書籍を紹介します。
民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準
出版:日弁連交通事故相談センター東京支部
通称「赤い本」。交通事故損害賠償請求を扱う弁護士は、ほとんどが持っている必携書。東京地裁の実務を中心に、損害賠償額の算定基準(裁判基準)を解説しています。この本の基準が実務の基準と言ってよいほどに影響力があります。毎年改定されています。
交通事故損害額算定基準 -実務運用と解説-
出版:日弁連交通事故相談センター
通称「青本」。こちらは、赤い本と違って、東京地裁だけでなく、全国の裁判所における裁判例を紹介しています。2年に1回改訂されています。
民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)別冊判例タイムズ38号
編集:東京地裁民事交通訴訟研究会 出版:判例タイムズ社
こちらも実務必携と言われる書籍。交通事故では過失相殺がよく問題となりますが、その過失相殺率の認定基準を解説する実務書です。東京地裁の裁判官が中心となって執筆されている本ですが、この本の認定基準が全国的な実務の基本的な認定基準となっています。
大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第4版)
編集:大阪民事交通訴訟研究会 出版:判例タイムズ社
大阪地裁交通部(第15民事部)の裁判官による大阪地裁における交通事故損害賠償額算定基準を解説する実務書。大阪地裁で交通事故訴訟をする場合には必携です。(※なお、大阪弁護士会交通事故委員会による「交通事故損害賠償算定のしおり(通称、緑の本)」とは異なります。こちらは、裁判官執筆の本です。)
新版注解交通損害賠償算定基準
著者:高野真人ほか 出版:ぎょうせい
赤い本や青本の解説書。実務書の解説書という珍しい本ですが、赤い本や青本はどちらかと言うと資料集的な実務書であるため、詳細な理由付けなどが説明されていない部分もあります。本書は、そこを解説しています。赤い本や青本とセットで持っていると便利です。
交通事故損害賠償法(第3版)
編集:北河隆之 出版:弘文堂
交通事故損害賠償に関する法律の体系書。実務マニュアル的なものではなく、理論的な面の解説も体系的にまとめられており、交通事故損害賠償の基本書といった感じの本です。
逐条解説自動車損害賠償保障法(第3版)
著者:北河隆之ほか 出版:弘文堂
弁護士・裁判官など実務家による自動車損害賠償保障法の逐条解説書。1冊持っていると便利です。

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