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再生債権とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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再生債権とは、再生債務者に対する再生手続開始前の原因に基づく財産上の請求権のことをいいます(民事再生法84条1項)。そして、この再生債権を有する債権者のことを「再生債権者」といいます。

再生債権とは

民事再生法 第84条

  • 第1項 再生債務者に対し再生手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権(共益債権又は一般優先債権であるものを除く。次項において同じ。)は、再生債権とする。
  • 第2項 次に掲げる請求権も、再生債権とする。
  • 第1号 再生手続開始後の利息の請求権
  • 第2号 再生手続開始後の不履行による損害賠償及び違約金の請求権
  • 第3号 再生手続参加の費用の請求権

「再生債権」とは、再生債務者に対する再生手続開始前の原因に基づく財産上の請求権のことをいいます民事再生法84条1項)。そして、この再生債権を有する債権者のことを「再生債権者」といいます。

民事再生手続(再生手続)を申し立てる最大の目的は、裁判所に再生計画を認可してもらうことにより、債務の減額などを実現するところにあります。

しかし、どのような債権・債務でも減額などの対象になるわけではありません。

再生手続においては、債権の性質・内容等によって、再生債権・共益債権・一般優先債権・開始後債権に分けられます

このうち、裁判所の再生計画認可によって減額等の対象となる債権は、再生債権です。

また、再生手続の開始により弁済を止めてもらったり、債権者から強制執行をされないようにしてもらわなければ、事業再建や生活再建の妨げになるおそれがあります。弁済停止や強制執行等を停止にしてもらうことも、民事再生の目的といえます。

再生手続の開始によって、この弁済の停止や強制執行等の停止が認められる債権も、やはり再生債権です。

したがって、民事再生を申し立てるかどうかを判断するに当たっては、自分が負担している債権が再生債権に該当するのかどうかを確認しておく必要があります。

再生債権の要件

前記のとおり、個人再生を申し立てるかどうかを判断するに当たっては、自分が負担している債務が、減額などの対象となる再生債権に該当するのかどうかを事前に確認しておく必要があります。

再生債権に該当する債権であるというためには、以下の要件が必要です。

再生債権の要件
  • 再生債務者に対する請求権であること
  • 財産上の請求権であること
  • 再生手続開始前の原因に基づくものであること
  • 強制執行が可能な請求権であること
  • 共益債権・一般優先債権に該当しないこと

第一に、再生債権は、再生債務者に対する請求権、つまり債権的請求権または人的請求権でなければなりません。したがって、物の引渡請求権などの物権的請求権や人格権に基づく差止請求権などは再生債権ではありません。

第二に、再生債権は、財産上の請求権でなければなりません。この財産上の請求権には、金銭債権のほか、契約上の作為請求権も含まれます。ただし、契約上の不作為請求権は含まれません。

第三に、再生債権は、再生手続開始前の原因に基づくものでなければなりません。債権発生の主要な要因が再生手続開始前に発生していれば、再生手続開始前の原因に基づくものとして扱われます。

もっとも、再生手続開始後のものであっても、以下の請求権は、例外的に再生債権に含まれるものとされています(民事再生法84条2項)。

再生手続開始後の原因に基づく再生債権

ただし、これらの例外的再生債権は、再生債権ではあるものの劣後的に扱われます。これらの再生債権者には議決権がなく(民事再生法87条2項)、再生計画において免除されるのが一般的です。

第四に、再生債権は、強制執行が可能な請求権でなければなりません。したがって、利息制限法違反の利息請求権や不起訴合意がされている債権などは再生債権には該当しません。

第五に、再生債権は、共益債権や一般優先債権に該当するものは除外されます。

再生手続開始前から発生している金融機関等からの借金や各種のローン、クレジットカードによるや立替払い、取引先からの買掛金などは、再生債権に該当するのが通常です。

再生債権の取扱い

前記のとおり、再生債権に該当する債権は、再生手続開始後、弁済が禁止され、また、再生債権者による強制執行等が禁止されます。

要するに、再生債務者側から見れば、再生債権については、再生手続開始後、弁済をしなくてもよくなり(むしろ弁済してはいけないことになり)、再生債権者から差押などをされるおそれもなくなるということです。

これによって、事業や生活を安定させ、また、収入を安定させることができるようになります。

また、再生債権は、再生計画が認可されれば、債権総額が減額され、最大10年(個人再生の場合は3年から5年)の分割払いにしてもらえるのが通常です。

そのため、民事再生における再生計画は、再生債権をどのように返済していくかを中心に策定することになります。

個人再生の場合、再生計画における返済総額(計画弁済総額)は、必ず、最低弁済額を上回るものでなければならないとされていますが、この最低弁済額の基準となる債権も、再生債権(のうちの無異議債権・評価済債権・基準債権)です。

再生債権者の手続への参加

再生計画が認可されると、通常、再生債権は減額されます。これは債務者にとっては大きなメリットですが、再生債権者にとっては重大なマイナスです。

再生債権者は、再生手続外で弁済を受けることができる共益債権者や一般優先債権者よりも個人再生の成否に強い利害関係を受けることから、様々な場面で再生手続に参加する権利が認められています(民事再生法86条1項等)。

再生債権の届出

再生手続が開始されると、まず、裁判所から、再生債権者に対して、再生債権を裁判所に届け出ることができる旨の通知がなされます。

この通知に応じて、再生債権者は、各自の再生債権を裁判所に対して届け出ることにより、自らの権利を主張する機会が与えられます(民事再生法94条1項)。

裁判所からの通知に応じて届出がなされた再生債権のことを「届出再生債権」といいます。再生債権を届け出た債権者は「届出再生債権者」と呼ばれます。

なお、個人再生の場合は、再生債務者が裁判所に提出した債権者一覧表に記載されている再生債権者は、届出をしなくても、債権者一覧表に記載された内容で届出がされたものとみなされます(民事再生法225条、244条)。

再生債権の認否

届出再生債権に対して、再生債務者は認否を行います(民事再生法101条)。要するに、再生債権者からの届出の内容を認めるか異議を述べるのかということです。

また、届出再生債権者も、他の再生債権者の届出再生債権に対して認否をし、異議を述べることができます(民事再生法102条)。

この認否において、再生債務者および再生債権者が誰も異議を述べなかった再生債権のことを「無異議債権」といいます。

再生債権の評価手続

再生債務者や他の再生債権者が異議を述べた場合、異議を述べられた届出再生債権者は、その再生債務者や他の再生債権者による異議を争う機会が与えられます。

すなわち、異議を述べられた届出再生債権者は、裁判所に対し、異議申述期間の末日から1か月以内であれば、再生債権査定の申立てをすることができます(民事再生法105条1項)。

個人再生の場合は、異議を述べられた届出再生債権者は、裁判所に対し、異議申述期間の末日から3週間月以内であれば、再生債権評価の申立てをすることができます(民事再生法227条1項、244条)。

再生債権査定申立てまたは評価申立てを受けた裁判所は、再生債権査定または評価の手続を行い、当該再生債権の存否や額などを確定させます。

この再生債権査定または評価手続によって債権の存否や金額などが確定された再生債権のことを「査定済債権」「評価済債権」といいます。

再生計画案の策定に与える影響

民事再生手続(再生手続)においては、再生債務者が、再生計画のもととなる再生計画案を策定して裁判所に提出しなければいけません(民事再生法163条1項)。届出再生債権者が再生計画案を提出することもあります(民事再生法163条2項)。

ただし、個人再生において再生計画案を策定するのは、再生債務者のみです(民事再生法238条、245条)。

もっとも、個人再生の場合、再生債権者による再生計画案の策定は認められないものの、再生債権の額は策定に重要な影響をもたらします。

すなわち、前記のとおり、再生計画案における計画弁済総額は、最低弁済額以上でなければならないとされており、この最低弁済額は、再生債権のうちの無異議債権・評価済債権・基準債権を基準として定められます。

再生債権者による再生計画案の決議

民事再生手続(再生手続)においては、再生債権者によって再生計画案の決議が行われます。この決議が否決されると、再生手続は廃止(打ち切り)されます。

この決議において、議決権を有する再生債権者(議決権者)の過半数が同意し、かつ、議決権者の議決権総額の2分の1以上を有する議決権者が同意している場合に、再生計画案が可決されます(民事再生法172条の3第1項)。

個人再生の場合、給与所得者等再生については再生計画案の決議自体行われません。小規模個人再生では再生計画案の決議が行われますが、通常再生に比べると手続は簡易化されています。

小規模個人再生の場合、通常再生のように積極的な同意が可決要件とされておらず、消極的な同意(不同意がないこと)をもって可決要件とされます。

具体的には、不同意とした議決権者が半数未満であり、かつ、不同意とした議決権者の議決権額が議決権額総額の2分の1以下の場合に、再生計画案可決とみなされます(民事再生法230条6項)。

このように、再生債権者は、決議に議決権者として参加する権利を有し、しかも、それは、民事再生の成否を左右するほどに重要な影響力があります。

通常と異なる取扱いの再生債権

これまで述べてきたものは、通常の再生債権の取扱いですが、再生債権のうちには、以下のとおり、通常の再生債権とは異なる取扱いがなされるものもあります。

別除権付再生債権

別除権に該当する担保権を設定している再生債権は別除権付再生債権と呼ばれます。

別除権は再生手続外で行使することができるため、別除権付再生債権は、別除権の行使によっても弁済を受けることができない不足額についてのみ、再生債権として取り扱われることになります。

自認債権

自認債権とは、再生債務者が、届出されていない(またはみなし届出も認められない)再生債権があることを知っている場合に、その内容等について自認した再生債権のことをいいます(民事再生法101条3項)。

自認債権も、再生債権として、債権調査の対象となり、再生計画によって減額や分割払いとされ、再生計画に基づく弁済を受けることができます。

もっとも、他の再生債権と異なり、議決権はありません。

個人再生の場合には、最低弁済額を決めるための基準債権に含まれません。また、小規模個人再生における議決権もなく、給与所得者等再生における意見聴取の対象にもなりません。

住宅資金貸付債権

住宅資金特別条項を利用する場合の住宅資金貸付債権も、通常の再生債権とは異なる取扱いを受けます。

住宅資金貸付債権とは、住宅の建設・購入・改良に必要な資金の貸付の再生債権で、分割払いの定めがあり、その債権またはその債権の保証会社の求償権を担保するために住宅抵当権が設定されているもののことをいいます。

この住宅資金貸付債権は通常の再生債権のように、債権調査の対象とはならず、議決権もありません。個人再生における最低弁済額を判断する基準にもなりませんし、給与所得者等再生における意見聴取の対象にもなりません。

また、通常の再生債権と異なり、住宅資金特別条項で定める規律に従って弁済方法等が決められることになります。

非減免債権

個人再生においては、非減免債権と呼ばれる再生債権があります。

再生債権であっても、非減免債権に該当するものは、その再生債権者の同意がない限り、債権の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることできないとされています(民事再生法229条3項、244条)。

もっとも、債権の減免の定めその他権利に影響を及ぼす定めをすることできないというのみで、それ以外については再生債権と同様の取扱いがなされます。

したがって、再生手続開始後は弁済等が禁止され、債権調査の対象にも最低弁済額の基準にもなり、再生計画に基づく弁済もされます。

ただし、非減免債権については、債権額の減免が認められないので、再生計画に基づく弁済後に残額を弁済しなければなりません。

参考書籍

本サイトでも民事再生について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験(司法試験・予備試験など)勉強中の方のために、民事再生の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第5版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

通常再生の実務Q&A150問
編集:全国倒産処理ネットワーク 出版:きんざい
通常再生(個人再生ではない民事再生手続)について問題となるケースなどをQ&A方式で解説する実務書。通常再生を扱う実務家の多くが利用しているのではないでしょうか。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産処理法入門(第6版)
著者:山本和彦  出版:有斐閣
倒産法の入門書。「入門」ではありますが、ボリュームはそれなりにあります。倒産法全体を把握するために利用する本です。 

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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