法律上の「親族」とは？範囲はどこまでか？基本を詳しく解説

この記事は、法トリ（元弁護士）が書いています。

法律上の「親族」とは

民法 第725条

• 次に掲げる者は、親族とする。
• 第1号　6親等内の血族
• 第2号　配偶者
• 第3号　3親等内の姻族

一般に「親族」というと、すべての親戚が含まれるようにも思われますが、法律において親族という場合には、すべての親戚が親族となるというわけではありません（もっとも、実際にはかなり広い範囲の親戚が「親族」に含まれます。）。

法律上、「親族」は以下の人のことをいいます（民法725条）。

親族と親戚の違い

親族も親戚も、一般的な用語としては、血縁や養子縁組・婚姻などでつながりのある人の総称である点では同じです。

ただし、前記のとおり、「親族」は、法律で明確に定義されている法律用語であり、法律上の身分です。その範囲も、血縁などでつながりのある人全員ではなく、一定範囲に限定されています（民法725条）。

親族は法律上の身分であるため、親族であることが法律制度を利用するための条件になっていたり、法的義務を課される理由になっていたりすることがあります。

これに対し、「親戚」は、法律用語ではありません。あくまで一般的な用語です。特に範囲が限定されているわけではなく、血縁などでつながりのある人は全員親戚ということになるでしょう。

また、親戚は法律上の身分ではないので、親戚であることが法的な権利や義務の条件になることはありません。ただし、親戚のうちでも、法律上の親族に当たる場合には、法的な権利義務の条件などになることはあります。

このように、親族は法律上の身分であるのに対し、親戚はあくまで一般的な用語であるという違いがあります。この違いは、親族と一般的用語にすぎない「身内」「親類」などでも同じです。

親族と家族の違い

親族は民法上で定義がありますが、家族については民法で定義されていません。

もっとも、配偶者・父母・子・兄弟姉妹・これらの者以外の配偶者の父母および子を家族と定義する法律はあります（特定秘密の保護に関する法律12条2項1号）。

この家族の定義は、民法で定められているわけではないので、私法一般に通用する定義というわけではありませんが、一般的な家族のイメージにはかなり近いでしょう。

そうすると、親族と家族には、親族が6親等内の血族・配偶者・3親等内の姻族であるのに対し、家族は、その親族の内でも特に近しい人（配偶者・父母・子・兄弟姉妹など）を指すという違いがあると言えます。

なお、上記のとおり家族は親族に含まれますので、家族に該当する人も、親族としての法律上の身分を有することになります。

6親等内の血族

前記のとおり、法律上の「親族」には、6親等内の血族が含まれます。以下では「6親等内の親族」について説明します。

血族（けつぞく）とは

血族（けつぞく）とは、血がつながっている人（血縁関係のある人）のことをいいます。

この血のつながりの基本は、生物学的なつながりです。生物学的な血縁がある人のことを自然血族といいます。

もっとも、親族に含まれるのは自然血族だけでなく、法律的な血縁がある場合も含みます。法律的な血縁がある人のことを法定血族といいます。

例えば、養子縁組をしている場合には法的な血縁関係が生じるので、養子や養親も血族に含まれます（民法727条）。ただし、離縁した場合には、血族関係も消滅します（民法729条）。

6親等とは：血族の親等

民法 第726条

• 第1項　親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
• 第2項　傍系親族の親等を定めるには、その一人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の一人に下るまでの世代数による。

親等とは、法律上の親族の遠近関係を表す単位です。数字が小さいほど関係が近く、大きいほど関係が遠くなります。

この親等は、親族間の世代数によって数えます（民法726条1項）。横に数えるのではなく、縦に数えるイメージです。

直系親族の場合、例えば、父母なら一世代上なので1親等、祖父母なら二世代上なので2親等、子なら一世代下なので1親等です。

直系ではない傍系の親族の場合は、いったん同一の祖先にまでさかのぼり、そこから降りてくるイメージで数えます（民法726条2項）。

例えば、兄弟姉妹なら、同一の祖先である父母の代に一世代上がり、そこから一世代下なので、2親等になります。いとこだと、同一の祖先は二世代上の祖父母です。そこから二世代下なので、4親等になります。

この親等数が6までの人が、法律上の親族に含まれます。6親等なので、かなり遠縁の人まで親族に含まれることになります。

6親等内の親族の具体例

親族に該当する「6親等の血族」の具体例は、以下のとおりです。

配偶者

配偶者も、親族に該当します。説明するまでもないと思いますが、配偶者とは、夫婦の一方からみた他方のことです。

この配偶者は、血族にも姻族にも当たりません。また、親等もありません。いってみれば0（ゼロ）親等ということになるでしょうか。

配偶者は、血族でも姻族でもなく、親等もありませんが「親族」となる特別な身分です。

配偶者の身分は、婚姻によって発生します。親族となる配偶者は、法律上の婚姻関係にある配偶者に限られます。いわゆる事実婚の内縁関係の配偶者は、親族には当たりません。

また、離婚によって、配偶者としての身分はなくなるので、親族関係もなくなります（民法728条1項）。夫婦の一方が死亡し、生存配偶者が婚姻関係を終了させた場合も同様です（同条2項）。

3親等内の姻族

法律上の「親族」には、3親等内の姻族が含まれます。以下では「3親等内の親族」について説明します。

姻族（いんぞく）とは

姻族（いんぞく）とは、配偶者の血族のことをいいます。

夫からみれば，妻の血族（妻の父母など）は姻族になり，妻からみれば，夫の血族（夫の父母など）は姻族になります。

また、自分の3親等内の血族の配偶者も姻族となります。したがって，自分の兄弟姉妹の配偶者、甥姪の配偶者、おじおばの配偶者、子や孫の配偶者も姻族ということになります。

この姻族関係は、配偶者がいることが基礎となっています。そのため、離婚や夫婦の一方が死亡した場合の生存配偶者の婚姻終了の意思表示によって配偶者でなくなった場合、それに基づく姻族関係も消滅します（民法728条）。

3親等とは：姻族の親等

親等の数え方（計算）は、姻族の場合も血族と同じです。世代数によって数えます。血族の場合との違いは、血族の場合は本人を基準に親等を数えますが、姻族の場合は配偶者を基準に数える点です。

例えば、配偶者の父母は、配偶者を基準として一世代上なので1親等、配偶者の兄弟姉妹は、配偶者を基準として、同一の祖先である親に一世代さかのぼって一世代下がるので2親等です。

3親等内の姻族の具体例

親族に該当する「3親等の姻族」の具体例は、以下のとおりです。

直系と傍系の区別

親族には、直系と傍系という区別があります。

直系とは、血統が直接上または下に連結している親族関係のことです。縦の血のつながりのうちで直線的な関係にある人が、直系親族です。

例えば、親、祖父母、高祖父母…、子、孫、ひ孫…が直系親族に当たります。

他方、傍系とは、同じ祖先であるものの、異なる親の系統に属する親族関係のことです。どちらかと言うと、横のつながりのようなイメージです。

例えば、兄弟姉妹、おじおば、いとこ、甥姪などは、傍系親族です。

尊属と卑属の区別

親族のうち血族には、尊属と卑属という区別もあります。姻族には、尊属・卑属の区別はありません。なお、漢字は「族」ではなく「属」です。

尊属とは、上の世代に属する血族のことです。例えば、親、祖父母、高祖父母、おじおばなどです。このうち、親、祖父母、高祖父母など直系に当たる尊属を直系尊属といいます。

他方、卑属とは、下の世代に属する血族のことです。例えば、子、孫、ひ孫、甥姪などです。このうち、子、孫、ひ孫など直系に当たる卑属を直系卑属といいます。

親族関係の有無が影響する法的制度

親族は、法律上の身分です。そのため、親族であることが、法律制度を利用するための条件であったり、親族であることで法的義務を課されることもあります。

婚姻・離婚や養子縁組・離縁は、親族関係の発生や消滅にかかわります。

また、直系血族や同居の親族には、相互扶助義務があります（民法730条）。夫婦には、同居義務や相互協力扶助義務があります（民法752条）。直系血族や兄弟姉妹には、相互扶養義務もあります（民法877条1項）。

親族関係の有無が影響する法的制度として典型的なものは、相続でしょう。相続人になれるのは、親族のうちの子、直系尊属、兄弟姉妹または配偶者です。相続人でない親族は、特別寄与料を請求できることがあります。

この他にも、成年後見人選任の申立権者などが一定の親族に限られていたり、親族間での犯罪の場合には刑の減免がされることあるなど、親族関係の有無が影響を及ぼす制度があります。

民法と資格試験

民法は、私法の基本法です。我々の生活に最も身近な法律です。

そのため、例えば、司法試験（本試験）、司法試験予備試験、司法書士試験、行政書士試験、宅建試験、マンション管理士試験・・・など、実に多くの資格試験の試験科目になっています。

これら法律系資格の合格を目指すなら、民法を攻略することは必須条件です。

とは言え、民法は範囲も膨大です。メリハリを付けないと、いくら時間があっても合格にはたどり着けません。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

参考書籍

本サイトでも民法について解説していますが、より深く知りたい方や資格試験勉強中の方のために、民法の参考書籍を紹介します。