相続させる旨の遺言とは?

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相続させる旨の遺言」とは,共同相続人のうちのある特定の相続人に対し,相続財産を,遺贈ではなく「相続させる」とする内容の遺言のことです。相続させる旨の遺言には,特定の相続財産を相続させるとする場合とすべての相続財産を相続させるとする場合があります。

相続させる旨の遺言という場合は,特定の相続財産を相続させる遺言を指すことが一般的でしょう。特定の相続財産を相続させる遺言は,現行民法上,特定財産承継遺言と呼ばれています。

相続させる旨の遺言がされた場合,遺言の効力発生時に,対象となる相続財産が特定の相続人に承継されることになります。

相続させる旨の遺言とは?

遺言の定め方として「相続させる旨の遺言」と呼ばれる方法があります。

相続させる旨の遺言とは,文字どおり,相続財産(遺産)を特定の相続人に対して「相続させる」と遺言することです。

相続させる旨の遺言という場合,特定の相続財産を特定の相続人に相続させると遺言する場合を指すのが通常です。特定の財産を相続させる旨の遺言は,現行民法上,「特定財産承継遺言」と呼ばれています。

もっとも,実際には,すべての相続財産を特定の相続人に相続させると遺言する場合もあります。

特定の相続財産を相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)

前記のとおり,相続させる旨の遺言という場合には,共同相続人のうちの特定の相続人に対し,特定の遺産(相続財産)を相続させると遺言する場合を指すことが一般的です。

民法改正(2019年7月1日から施行)により.特定財産を相続させる旨の遺言は,「特定財産承継遺言」と呼ばれるようになりました。

特定財産承継遺言は,遺贈であるといえるような特段の事情の無い限り,原則として遺産分割方法の指定であるが,相続人間でこの遺言と異なる遺産分割をすることはできず,遺言の効力発生時に,対象となる遺産が特定の相続人に承継されると解されています(遺産分割効果説。最二小判平成3年4月19日)。

そのため,ある特定の相続人に対して,特定の相続財産(特に不動産)を譲り渡したいという場合には,遺贈の方式ではなく,特定財産承継遺言とするのが通常でしょう。

ただし,特定財産承継遺言によって,対象となる相続人以外の相続人の遺留分を侵害している場合には,遺留分侵害額請求の問題が生じます。

また,特定財産承継遺言によって財産を取得した相続人であっても,法定相続分を超える部分を承継したときは,その法定相続分を超える部分については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないとされています(民法899条の2)。

ただし,2019年7月1日より前に相続が開始していた場合は,上記民法899条の2は適用されず,対抗要件を備えなくても承継した相続分の全部を第三者に対抗できます(債権については例外があります。)。

すべての相続財産を相続させる旨の遺言

遺産(相続財産)のうちの特定のものだけ相続させるのではなく,すべての遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言がされることもあります。

このすべての相続財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言についても,特定財産の相続させる旨の遺言と同様,包括遺贈ではなく,遺産分割方法の指定であり,そのなかに特定の相続人の相続分を100パーセントとする相続分の指定が含まれているものと解されています(最三小判平成21年3月24日)。

つまり,すべての遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言は,特定財産の相続させる旨の遺言が数多く存在するものであると解されているということです。

したがって,全財産を特定の相続人に相続させる旨の遺言がされると,遺言の効力発生時に,その相続人に対してすべての相続財産が承継されることになります。

ただし,全財産を相続させる旨の遺言によって,対象となる相続人以外の相続人の遺留分を侵害している場合には,遺留分侵害額請求の問題が生じます。

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