
利息制限法とは,金銭の貸主による暴利や搾取から債務者である消費者を保護するために,金銭消費貸借における利息や遅延損害金の利率を一定限度に制限する法律です。
利息制限法とは
利息制限法とは,金銭の貸主による暴利や搾取から債務者である消費者を保護するために,金銭消費貸借における利息や遅延損害金の利率を一定限度に制限する法律です。
金銭消費貸借契約とは,お金を貸す・借りる契約です。つまり,利息制限法は,借金の利息等の利率を制限することを主眼としています。
金銭消費貸借の契約関係においては,貸主と借主の間に厳然たる力の差があります。貸主が強者であり,借主は弱者という関係です。
弱者である借主は,歴史上,貸主から搾取され,大きな社会問題を生んできました。それに歯止めをかけようというのが,この利息制限法です。
この利息制限法は、「貸金業法」「出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(出資法)」とともに「貸金三法」と呼ばれています。借金の債務整理をする際にも、重要な意味を持つ法律です。
利息の制限
利息制限法 第1条
- 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は,その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは,その超過部分について,無効とする。
- 第1号 元本の額が十万円未満の場合 年2割
- 第2号 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年1割8分
- 第3号 元本の額が百万円以上の場合 年1割5分
利息制限法においては,利息の利率について以下の制限がなされています(利息制限法1条)。
- 元本額が10万円未満の借金
→ 年20パーセントまで - 元本額が10万円以上100万円未満の借金
→ 年18パーセントまで - 元本額が100万円以上の借金
→ 年15パーセントまで
利息制限法における制限利率は,元本の金額によって区分されており,元本額が大きくなるほど,利率の制限も厳しくなっています。
貸金業者からの借金については,債務者が同じ貸金業者から複数の借入れをしていた場合,その複数の借入元本額を合計した金額が,利息制限法1条における元本額として扱われます(利息制限法5条)。
なお,元本以外の金銭は,一定の例外を除いて,名目を問わず,利息とみなされます。名目が手数料や調査料というようなものであっても,「利息」として扱われ,利息制限法が適用されることになります。これを,「みなし利息」といいます(利息制限法3条,6条)。
遅延損害金の制限
利息制限法 第4条
- 第1項 金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第1条に規定する率の1.46倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
- 第2項 前項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。
利息制限法 第7条
- 第4条第1項の規定にかかわらず、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年2割を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
利息制限法は,借金の遅延損害金についても制限をしています。遅延損害金は,利息制限法1条で定める利息の制限の1.46倍までに制限されています(利息制限法4条1項)。
ただし,貸金業者からの借金については,元本額を問わず,すべて年20パーセントまでに制限されています(利息制限法7条1項)。
したがって,遅延損害金については,以下の制限がなされているということです。
- 元本額が10万円未満の借金
→ 年29.2パーセントまで - 元本額が100万円未満の借金
→ 年26.28パーセントまで - 元本額が100万円以上の借金
→ 年21.9パーセントまで - 貸主が貸金業者の場合
→ 元本額にかかわらず、年20パーセントまで
遅延損害金についても,利息同様,元本額に応じて制限が厳しくなっていきます。貸主が貸金業者の場合は、元本額にかかわらず、一律、年20パーセントまでに制限されています。
利息制限法違反の民事上の効力
利息制限法の制限利率を超える利息や遅延損害金の契約をした場合,その制限超過部分は絶対的に無効となります(利息制限法1条,4条1項,7条)。
つまり,制限利率を超える利率の利息や遅延損害金を支払う約束をしていたとしても,制限を超える部分の約束は無効であり,制限内の利息だけ支払えばよいというわけです。
すでに制限超過部分を支払ってしまっていた場合には,その支払った制限超過部分は,元本に充当されたものとして扱うことになると解されています(最大判昭和39年11月18日)。
また,元本充当によって計算上元本が完済となった後もそれを知らずに返済分を支払い続けていた場合には,その支払いすぎた分は過払い金として返還を請求できることになります。
例えば,元本100万円を年利30%で借り,これを1年間で,元本50万円,利息30万円を返済したとします。そうすると,形式上は,借金が50万円残っているように見えます。
しかし,利息制限法の制限利率は年利15%までです。したがって,利息のうち15万円は利息制限法に反する払い過ぎの利息ということになります。
そのため,この払いすぎた15万円は元本に充当されます。つまり,支払った元本50万円にこの15万円を加えて,合計で元本は65万円支払ったという扱いになるのです。その結果,残った借金は元本35万円だけになります。
仮に,返済したのが元本90万円,利息30万円だったらどうでしょう。この場合,まず,利息のうち15万円は払いすぎなので,残元本に充当されます。
しかし,残元本は10万円です。この10万円に払いすぎた15万円を全部充当しても,まだ5万円余ります。これがいわゆる「過払金」です。
つまり,この5万円は,貸金業者に対して返還を請求することができることになるのです。
なお,法律にのっとった残高がいくらになるのか(場合によっては,過払いになっていないか)を調査するため,債務整理をする場合には,まず,それまでのサラ金やクレジット会社との取引すべてを利息制限法所定の利率に直して計算することになります。
この計算のことを,「引き直し計算」と呼んでいます。
利息制限法違反の刑罰・行政罰
利息制限法には刑罰や行政罰の規定はありません。したがって,利息制限法に違反したからといって,刑事的・行政的な法的責任が生ずることはありません。
もっとも,出資法や貸金業法に違反した場合には,刑事罰や行政罰を受けることはあります。現在では,利息制限法・貸金業法・出資法の三法にかい離がないように法律が改正されています。
そのため,利息制限法に違反する利率の利息を収受した場合,上記出資法による刑罰を科されるか,または,貸金業法による行政処分を受けることになります。
場合によっては,刑罰と行政処分の両方を受けることになることもあります。