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自己破産すると自動車・バイクなども処分されるのか?

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自動車やバイクは自由財産に該当しないので,自己破産をすると換価処分されるのが原則です。ただし,裁判所によっては,処分見込額が20万円以下の自動車は換価処分しなくてもよいものとされている場合があります。バイクも同様でしょう。

処分見込額が20万円を超える場合には,裁判所により自由財産の拡張を認めてもらう必要があります。

なお,ローンが残っている場合には,所有権留保に基づいてローン会社等により自動車やバイクが引き揚げられてしまうので,処分見込額にかかわらず,維持しておくのは難しいでしょう。ただし,親族など第三者の援助によってローン残額を全額支払えば,ローン会社等による引き揚げを回避できる場合があります。

自己破産における自動車・バイクなどの取扱いの原則

自己破産において、自動車やバイクは処分しなくてもよい自由財産には該当しません。したがって、自己破産をすると、自動車やバイクを処分しなければならなくなるのが原則です。

ただし,常に処分されるというわけではありません。一定の場合には,例外的に自動車やバイクを処分しなくて済むこともあります。

どのような場合に自動車やバイクを失うことになり,どのような場合に残すことができることになるのかについては,その自動車やバイクの購入ローンが残っているのかどうかなどによって異なります。

以下では,ローンの残っていない場合とローンの残っている場合とに分けてご説明します。

ローンの残っていない自動車・バイク

自己破産をすると,「自由財産」に該当する財産を除いて,財産の換価処分が必要となります。自動車やバイクは,原則として,自由財産に該当しません。

ローンの残っていない自動車やバイクは純粋に資産・財産ですから,自由財産に該当しない以上,自己破産をすると,所有している自動車やバイクは換価処分しなければならないのが原則です。

もっとも,東京地方裁判所大阪地方裁判所をはじめとした多くの裁判所では,破産者の経済的更生を図るため,破産法に定められているものよりも自由財産として認められる財産の範囲を拡大する運用をとっています。この基準を「換価基準」「自由財産拡張基準」と呼んでいます。

この換価基準・自由財産拡張基準においては,処分見込額が20万円以下の自動車は,自由財産の拡張によって自由財産として取り扱われるものとされているのが一般的です。バイクは上記の換価基準に含まれていませんが,自動車と同様に取り扱われるのが通常でしょう。

したがって,処分見込額が20万円以下の自動車やバイクは,自己破産しても処分する必要がありません。逆に,20万円を超える場合は,原則どおり,換価処分が必要となります。

自己破産申立てをする裁判所の基準がどうなっているかは,あらかじめ確認しておいた方がよいでしょう。

処分見込額の判断

前記のとおり,東京地裁の換価基準においては,処分見込額が20万円以下の自動車は自由財産として取り扱われるものとされています。

ここで言う処分見込額がいくらになるかは,あらかじめ,自動車やバイクの買取業者に査定してもらっておく必要があります。複数社に査定してもらった方がよいでしょう。

ただし,東京地裁の場合,減価償却期間(減価償却資産の耐用年数)を経過している自動車やバイクは処分見込額ゼロ円として扱ってよいとされています。その場合には,査定も不要となります。

なお,自動車やバイクの減価償却期間は,以下のとおりです(減価償却資産の耐用年数等に関する省令別表第一「機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表」、参考「主な減価償却資産の耐用年数表」)。

自動車・バイクの耐用年数
  • 普通乗用自動車 6年
  • 軽自動車 4年
  • バイク(原動機付自転車も含む。) 3年

この耐用年数を経過している自動車・バイクについては査定が不要ということです。裁判所に対して減価償却期間を超えていることを申告すれば足ります。

自動車・バイクが複数台ある場合

前記のとおり,換価基準・自由財産拡張基準においては,処分見込額が20万円以下の自動車は自由財産として取り扱われるものとされています。

それでは,自動車が複数台ある場合,バイクが複数台ある場合,あるいは,自動車とバイクを持っている場合はどうなるのでしょうか?

この場合,処分見込額は1台1台について判断されるのが通常でしょう。預貯金や解約返戻金のように全部の合計金額で判断されるわけではありません。

例えば,A自動車の処分見込額が10万円,B自動車の処分見込額が15万円の場合は,いずれも処分見込額が20万円以下ですから,いずれも処分は不要ということになります。

ただし、例えば、大阪地裁の自由財産拡張基準のように、自由財産の合計額が99万円を超えるような場合には、99万円を超えないように、いずれかの自動車を処分することになる可能性もあります。

なお、自動車は維持費がかかります。複数台維持したままにしておくのは,経済的な更生を図ろうとする自己破産の趣旨からすれば,望ましくないでしょう。

そのため,最も必要な自動車・バイク以外は処分するよう,裁判所や破産管財人から勧められることはあるかもしれません。

処分見込額が20万円を超える場合

換価基準や自由財産拡張基準がある裁判所であっても,処分見込額が20万円を超える自動車やバイクは処分の対象になります。

もっとも,処分見込額が20万円を超える自動車やバイクについて,裁判所に自由財産の拡張を申立て,それが裁判所によって認められれば,自由財産として処分しなくてもよいことになります。

したがって,処分見込額が20万円を超える自動車やバイクをどうしても処分できない事情が場合には,自由財産拡張の申立てを検討する必要があります。

ただし,換価基準・自由財産拡張基準を超える財産の自由財産拡張が認められるためには,かなり高度の必要性が求められます。ただ通勤や送迎に必要であるという程度の理由ではほとんど認められないでしょう。

高度の必要性がない場合には,自動車やバイクの処分見込額に相当する金額以上を破産管財人に支払うことにより,自由財産の拡張を認めてもらう、または、破産財団から放棄してもらうという方法をとることになります。

自動車やバイクの処分見込額を支払えるだけの自由財産(現金など)がある場合には,それを破産管財人に支払うことになります。場合によっては,親族等の援助によって支払うこともあるでしょう。

いずれにしても,自動車やバイクを換価処分するのと同等以上の金銭が破産財団に組み入れられるので,この方法による自由財産拡張の申立て・破産財団からの放棄は,基本的に認められることが多いでしょう。

したがって,どうしても自動車やバイクを残したいという場合には,自動車やバイクの処分見込額を用意できるかが重要となってきます。

なお,処分見込額を用意することもできない場合には,個人再生任意整理など自己破産以外の債務整理手続を検討する必要があるでしょう。

ローンの残っている自動車・バイク

自動車やバイクを購入するに際して,自動車ローン等を組んでいる場合,ローンの支払いを担保するため,購入した自動車やバイクに所有権留保を設定されているのが通常です。

所有権留保とは,売買契約において,売買代金の完済前に売主が買主に目的物を引き渡しつつも,その所有権は売買代金完済まで売主に留保し,この留保所有権をもって,売買代金の担保とするという担保形態のことをいいます。

所有権留保が設定されている場合,ローンが残っている状態で弁護士などから受任通知を送付すると,ローン会社によって,自動車やバイクは引き揚げられてしまうのが通常です。引き揚げられた自動車やバイクはローン会社によって換価され,ローンの残額に充当されます。

また,引き揚げられる前に自己破産を申し立てたとしても,破産管財人によって自動車・バイクがローン会社に引き渡される(または破産管財人によって換価処分される)ため,やはり自動車やバイクを維持することはできません。

なお,所有権留保について対抗要件が具備されていない場合,破産管財人は,ローン会社等の留保所有権者による自動車やバイクの引渡請求を拒むことができます。

この場合において,仮に,破産管財人が引渡しを拒絶した上で自動車やバイクを破産財団から放棄し,自動車やバイクが破産者のもとに戻ってきたとしても,契約当事者である破産者は,対抗要件を具備していないことを理由として引渡請求を拒むことはできません。

そうすると,結局は,ローン会社等に対して自動車やバイクを引渡さなければなりません。

したがって,ローンが残っている自動車やバイクについては,自己破産をすれば,いずれにしても失うことになる,と考えておいた方がよいでしょう。

自動車の処分や引き揚げを回避する方法

上記のとおり,ローンの残っている自動車やバイクは,自己破産をすると失うことになるのが通常です。これを回避するためには,ローンの残額をすべて支払ってしまうほかにありません。

しかし,債務者ご本人がローン残額を支払った場合,偏頗弁済となり,否認権行使の問題が生じたり,場合によっては,非義務的偏頗行為として免責不許可事由に該当すると判断されることもあります。

したがって,ローン残高をすべて支払うとしても,債務者ご本人が支払うことはできません。親族など第三者の方に第三者弁済をしてもらうか,または,ローンを引き継いでもらうという方法をとるしかないでしょう。

ただし,当然,その第三者の方の資産で支払ってもらわなければなりません。形だけ第三者の支払いとしつつ,実際には自分で支払うような場合には,やはり否認対象行為や免責不許可事由として扱われるでしょう。

また,仮に第三者にローン残額をすべて支払ってもらったとしても,自動車やバイクに価値があれば(東京地裁の換価基準であれば20万円を超える場合),結局は破産手続において破産管財人による換価処分の対象となってしまいます。

そうなると、さらに援助してもらって、換価処分見込額以上の金額を破産管財人に支払って自由財産の拡張をしてもらわなければなりません。

したがって、第三者に支払ってもらうとしても,その前に,その自動車やバイクの処分見込額を査定しておく必要があるでしょう。

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ローンの残っている自動車やバイクを残すために親族などから援助を受ける場合、援助者には、ローンの残額だけでなく、(処分見込額が20万円を超える場合には)その自動車・バイクの処分見込額相当額も支払ってもらわなければならないことがあります。

自動車・バイク等と同時廃止の関係

同時廃止となるのは,破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときです。したがって,自動車・バイクの処分見込額と他の財産を併せても,破産手続費用を支払うのに足りない場合には,同時廃止となります。

さらに,前記のとおり,東京地裁や大阪地裁など多くの裁判所では,処分見込額が20万円以下の自動車・バイクは自由財産として扱われます。つまり,処分見込額が20万円以下の自動車・バイクは破産財団に組み入れられないことになります。

したがって,自動車・バイクの処分見込額が20万円以下であれば,それ以外の財産で破産手続費用を支払うのに不足する場合,同時廃止となります。

例えば,破産手続開始時に処分見込額が10万円の自動車,処分見込額が10万円のバイク,そして,それ以外に10万円の財産を持っていたとします(他の財産・免責不許可事由は無いものとします。)。

この場合,破産法の原則でいくと,合計で30万円の財産があることになるので,同時廃止とはなりません。

しかし,換価基準・自由財産拡張基準で考えると,自動車とバイクは自由財産となり破産財団に組み入れられませんから,破産財団としては自動車とバイクを除いた10万円しか無いということになります。

したがって,20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いということになるので,同時廃止となります。

ただし,これはあくまで各裁判所の「運用」です。

場合によっては,財産が30万円(あるいは,自動車かバイクのどちらかは処分すべきである)あると判断されて,少額管財となるということも無いとは言えませんので,あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。

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