過払金(過払い金)とは,利息制限法所定の制限利率を超える利率の利息を支払い続け,その制限超過利息を借入金元本に充当した結果,計算上,借入金元本が完済となった後に,さらに支払った金銭のことをいいます。
過払金(過払い金)の記事一覧
過払金(過払い金)の記事一覧は、以下のとおりです。
- 過払金の利息(記事一覧)
- 過払い金に利息を付けて返還請求できるか?
- 貸金業者を悪意の受益者と認めた最高裁判所第二小法廷平成19年7月13日判決(平成17年(受)第1970号)とは?
- 貸金業者を悪意の受益者と認めた最高裁判所第二小法廷平成19年7月13日判決(平成18年(受)第276号)とは?
- 期限の利益喪失特約下で制限超過利息を受領したしたことのみでは貸金業者を悪意の受益者であると推定することはできないとした最高裁判所第二小法廷平成21年7月10判決とは?
- CFJを悪意の受益者であると認定した最高裁判所第一小法廷平成23年12月1日判決(平成23年(受)第307号)とは?
- 旧プロミスを悪意の受益者であると認定した最高裁判所第一小法廷平成23年12月1日判決(平成23年(受)第407号)とは?
- アコムを悪意の受益者であると認定した最高裁判所第一小法廷平成23年12月15日判決とは?
- 過払金の利息の発生時期(記事一覧)
- 過払金の利息の利率(記事一覧)
なお、その他債務整理に関する記事は、以下のページをご覧ください。
過払金(過払い金)の概要
前記のとおり、過払金(過払い金)とは,利息制限法所定の制限利率を超える利率の利息を支払い続け,その制限超過利息を借入金元本に充当した結果,計算上,借入金元本が完済となった後に,さらに支払った金銭のことをいいます。
この過払金は不当利得です。したがって、過払金が発生している場合、借主は、貸金業者等の貸主に対して、過払い金返還を請求することができます。
もっとも、今では当たり前に認められている過払金返還請求も、最初から当然に認められていたわけではありません。最初に過払い金返還請求を認めた最高裁判例は、最大判昭和43年11月13日です。
さらに、最三小判昭和44年11月25日では、元利一括返済の場合でも過払金返還請求できることが認められ、現在の過払い金返還請求の基礎が固められました。
この過払金返還請求をすることに、特段のデメリットはありません。過払金返還請求をしても、ブラックリストはおろか信用情報に掲載されることもありません。ただし、後に自己破産や個人再生をする場合には、否認権の問題などに注意する必要はあります。
この過払金返還請求は、すでに完済している貸金業者に対してすることも可能です。ただし、後述する消滅時効があるので、完済業者に対して過払い金返還請求をしようという場合には、早めに行動する必要があります。
過払金返還請求をする際は、まず、貸金業者に対して取引履歴開示を請求して、その取引履歴をもとに引き直し計算をして、過払金の有無を確認します。その上で、貸金業者と交渉または訴訟を提起して過払い金の回収を進めていくことになります。
過払金返還請求権にも消滅時効があります。消滅時効期間には、取引終了時から10年です。令和2年4月1日以降に発生した過払金については、取引終了時から10年または過払金返還請求できることを知った時から5年となります。
過払金を請求する場合、利息を付けて請求できます。ただし、平成18年1月13日より前に発生していた利息については、消費者側で貸金業者が「悪意の受益者」であったことを主張立証する必要があります。
過払金返還請求における最大の争点は、取引の個数の問題です。取引の個数の問題とは、複数の取引がある場合に、その一方の取引で発生した過払金を別の取引の借入金債務に充当できるのかという問題です。この問題には、取引分断型と取引併存型があります。
貸金業者が取引履歴の全部または一部を開示してこなかった場合、取引経過を推定により再現して引き直し計算を行い、それによって算出された過払金を請求することもあります。この推定計算による場合、過払金返還請求訴訟では、推定計算の合理性が争われることになります。
過払金返還債務の承継という争点もあります。これは、ある貸金業者が、債権譲渡などによって貸金債権を別の業者に移動させた場合に、譲渡等前の取引で発生していた過払金を譲受等業者に対して請求できるかという争点です。
過払金返還請求の訴訟を提起する場合、裁判管轄は、請求する過払金元本の額がいくらなのかによって異なります。140万円以下の場合は簡易裁判所に、140万円を超える場合には地方裁判所に提起します。
過払金返還請求を弁護士や司法書士に依頼する場合は、実費のほか、弁護士や司法書士に対する報酬も必要となってきます。報酬には、着手金と成功報酬があります。債務残高がある場合とすでに完済している場合とで費用も異なっているのが一般的です。
弁護士の探し方
「過払金返還請求をしたいけれど、どの弁護士を選べばいいのか分からない」
という方は少なくないでしょう。
現在では、多くの法律事務所が債務整理・過払金返還請求を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、過払金返還請求を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。
しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。
債務整理・過払金返還請求の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。
そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。
ちなみに、過払金返還請求の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。
参考書籍
本サイトでも過払金返還請求について解説していますが、より深く知りたい方のために、過払金返還請求の参考書籍を紹介します。
編集:名古屋消費者信用問題研究会 出版:民事法研究会
過払金返還請求の教科書のような本。やや古いので判例や論点のアップデートは必要ですが、過払金返還請求を知るためには、よい本です。
監修:名古屋消費者信用問題研究会 出版:民事法研究会
タイトルどおり、過払金返還請求に関するほとんどの論点を網羅している実務の解説書。ただし、最新の判例などのアップデートは必要です。
著者:輿石武裕 出版:日本加除出版
簡易裁判所裁判官による過払金返還請求の裁判例解説書。最高裁判例だけでなく下級審裁判例も多く掲載。ただし、こちらも古い本なのでアップデートが必要です。
編集:岡口基一 出版:ぎょうせい
岡口元裁判官による実務家に人気の要件事実の解説書。第4巻には、過払金返還請求の要件事実についても解説されています。