
利息制限法の制限利率を超える利率の利息を支払うと、その制限超過部分がそのまま過払金(過払い金)になるわけではありません。制限超過部分は元本に充当され、計算上元本が完済されたにもかかわらず支払われた金銭が過払金となります。
この過払金は、貸金業者の不当利得となるため、貸金業者に対して過払い金の返還を請求できることになります。
過払金(過払い金)とは
最近では、TVCMやラジオなどで取り上げられるため、過払金(過払い金)については多くの人が知るようになってきました。もっとも、なぜ借金を返済すると過払金が発生するのか、なぜ過払金の返還を請求できるのかについては、よく分からないという人も多いかもしれません。
TVCM、ラジオ、インターネットなどで「利息制限法に違反する利息は返還を請求できる」とか「払い過ぎた利息を取り戻す」などといった広告がされることがあります。間違いというほどではないのですが、正確でもありません。
利息制限法では、借金の利息の利率を一定限度に制限しています。この利息制限法の制限利率を超える部分は無効になります。とはいえ、この制限超過部分がそのまま過払金となり、返還を請求できるわけではありません。
過払い金が発生するのは、利息制限法に違反する制限超過部分が元本に充当され、計算上元本が完済になったにかかわらず金銭が支払われた場合です。そして、その金銭は不当利得となり、貸金業者に対して返還請求できることになります。
このページの以下で詳しく説明します。
過払い金が発生する仕組み
過払い金が発生する仕組みを、段階ごとに分解すると、以下のようになります。
利息制限法は、借金の利息について利率を一定限度に制限しています。この利息制限法の制限利率に違反する場合、その制限を超える部分(制限超過部分)は無効となります。
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利息制限法の制限利率を超える利率の利息を支払った場合、その制限超過部分の利息支払いは無効となり、元本に充当されます。
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制限超過部分の支払いを繰り返した場合、制限超過部分が次々と元本に充当されていくことにより、計算上、元本が完済されることになります。
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計算上元本が完済されているにもかかわらず、それを知らずに、さらに借金の返済を続けてしまうことがあります。この計算上の元本完済後に支払われた金銭が「過払金」です。
以下でさらに詳しく説明します。
利息制限法による利率の制限
利息制限法は、借金の利息の利率を一定限度に制限しています。制限利率は、借金の元本額によって異なります(利息制限法1条)。
- 元本額が10万円未満の借金
→ 年20パーセントまで - 元本額が10万円以上100万円未満の借金
→ 年18パーセントまで - 元本額が100万円以上の借金
→ 年15パーセントまで
この利息制限法の制限利率に違反する場合、制限利率を超える部分(制限超過部分)は絶対的に無効となります。
制限超過部分の元本充当
前記のとおり、利息制限法の制限利率を超過する部分は、絶対的に無効となります。したがって、制限超過部分を支払っていたとしても、その支払いは有効なものとはなりません。
この無効となった制限超過部分は、元本に充当されます。元本に充当されるとは、つまり、元本に対して返済をしたものとして扱われるということです(最大判昭和39年11月18日)。
元本完済後の支払い=過払い金の発生
前記のとおり、利息制限法の制限超過部分は元本に充当されます。したがって、制限超過部分の支払いを続けていくと、それが次々と元本に充当されていく結果、いずれ、計算上、元本が完済されるときが来ます。
もっとも、計算上は完済となっていても、それを貸金業者側が教えてくれるわけではありませんか。表面上は借金が残っている形になっています。そのため、完済していることを知らずに、借金が残っていると思って返済を続けてしまいます。
この計算上の完済後に支払った金銭が「過払金」となります。
過払金返還請求のからくり
前記のとおり、計算上の完済後に支払った金銭が、過払金と呼ばれるものです。この過払金は、貸金業者に対して返還を請求できます。
この過払金返還請求は、法律的に言うと、不当利得返還請求です。特別なからくりがあるわけではなく、法的な根拠のある請求です。
過払金は、利息制限法の制限超過部分を元本に充当した結果、計算上元本が完済になった後に支払われた金銭です。元本が完済している以上、本来であれば支払う必要のないものです。貸金業者からみれば受け取る法律上の原因がありません。
法律上の原因なく支払いを受けているのですから、それは貸金業者が不当に利得しているということです。したがって、支払いをした借主は、不当利得返還請求権に基づいて、貸金業者に対して過払い金返還を請求できるのです(最大判昭和43年11月13日)。