この記事にはPR広告が含まれています。

過払い金返還請求を最初に認めた最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決とは?

過払い金の画像
point

過払い金(過払金)返還請求も当然に認められていたわけではありません。過払金返還請求を最初に認めた最高裁判所判例は、最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決です。

過払い金(過払金)返還請求とは

利息制限法の制限利率を超える利率利息は無効であり、その制限超過利息は元本に充当されます。

そして,計算上元本が完済となった後もなおも返済を続けると,その払い過ぎた金銭は「過払金(過払い金)」として貸金業者に対して返還を請求できることになります。

現在では,この過払い金(過払金)返還請求は「当たり前のこと」になっていますが,はじめから「当たり前のこと」であったわけではありません。むしろ,かつては過払い金返還など認められないのが「当たり前のこと」だったのです。

そもそも,制限超過利息を元本に充当できることが最高裁判所においてはじめて認められたのが,最大判昭和39年11月18日です。

その後,最三小判昭和43年10月29日では,制限超過利息の当事者間における充当指定特約も無効とされるに至りました。

しかし,これらの判例においても,貸金業者に対して,払い過ぎた利息(過払金)の返還を請求できるというところまでは,はっきりと認められたわけではありませんでした。

その過払い金返還請求を真正面から認めた画期的な判例が,最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決です。

最大判昭和43年11月13日の解説

最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決は,以下のとおり判示しています。

上告代理人三輪長生の上告理由一および二について。

債務者が利息制限法所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息・損害金を任意に支払つたときは,右制限をこえる部分は,民法491条により,残存元本に充当されるものと解すべきことは,当裁判所の判例とするところであり(昭和35年(オ)第1151号,同39年11月18日言渡大法廷判決,民集18巻9号1868頁参照),論旨引用の昭和35年(オ)第1023号,同37年6月13日言渡大法廷判決は右判例によつて変更されているのであつて,右判例と異なる見解に立つ論旨は採用することができない。

同三について。

思うに,利息制限法1条,4条の各2項は,債務者が同法所定の利率をこえて利息・損害金を任意に支払つたときは,その超過部分の返還を請求することができない旨規定するが,この規定は,金銭を目的とする消費貸借について元本債権の存在することを当然の前提とするものである。けだし,元本債権の存在しないところに利息・損害金の発生の余地がなく,したがつて,利息・損害金の超過支払ということもあり得ないからである。この故に,消費貸借上の元本債権が既に弁済によつて消滅した場合には,もはや利息・損害金の超過支払ということはありえない。

したがつて,債務者が利息制限法所定の制限をこえて任意に利息・損害金の支払を継続し,その制限超過部分を元本に充当すると,計算上元本が完済となつたとき,その後に支払われた金額は,債務が存在しないのにその弁済として支払われたものに外ならないから,この場合には,右利息制限法の法条の適用はなく,民法の規定するところにより,不当利得の返還を請求することができるものと解するのが相当である。

引用元:裁判所サイト

この判例は,当時,過払金返還請求の最大の問題となっていた利息制限法第1条第2項等の解釈自体を債務者に有利になるような判断をしました。

旧利息制限法第1条第2項(現在ではすでに削除されています。)は,利息制限法所定の制限利率を超える利息であっても,債務者が任意にそれを支払ってしまったときには,その制限超過部分の返還を求めることができないと規定していました。

文言どおりに読むと,任意に制限超過利息を支払ってしまった場合には,もはや過払い金の返還を請求することができないというようにも捉えることができます。

しかし,この昭和43年11月判例は,「第1条第2項は任意支払いがあったとしても制限超過部分の支払いを有効とするまで認めた規定ではない」という昭和39年判例をさらに進化させた判断をしています。

すなわち,最大判昭和43年11月13日は,以下のような解釈をしています。

旧利息制限法第1条第2項等の規定は任意の利息の支払いについて定めたものであるところ,利息というものは元本に対して発生するものである以上,利息の支払いは,元本が存在していることを当然の前提としている。

利息制限法の制限利率を超える制限超過部分は元本に充当されていく(最大判昭和39年11月18日)。

制限超過部分次々と元本に充当していくことにより、借金の元本も完全に充当されて消滅する。

利息の支払いは元本の存在を当然の前提としているから、元本が消滅したことにより、利息や遅延損害金が発生することもなくなる。

制限超過部分を元本に充当した結果、元本全額がすべて充当されて計算上完済となって元本が消滅した場合、それに伴って利息や遅延損害金も発生していないことになる。

そもそも利息や遅延損害金が発生していない以上、任意か否かにかかわらず、利息や遅延損害金の支払いなどということも考えられない。

任意の利息や遅延損害金の支払いが考えられないということは、旧利息制限法第1条第2項等の適用も考えられない。

制限超過部分を充当し、その結果元本がすべて充当されたにもかかわらず、なお金銭を支払っていたという場合、もはや元本も利息もないのにただお金を支払っていただけに他ならない。

したがって、債務者は、その貸金業者に対し、その支払った金銭を不当利得であるとして返還請求できる。

これが,昭和43年11月判例の考え方です。

制限超過部分を元本充当することによって、元本が消滅している以上、それ以降に支払われた金銭については、貸金業者側に受け取るべき法律上の原因もありません。法律上の原因なく金銭を受け取っている以上、それは不当利得です。

したがって、債務者は、その貸金業者に対し、支払った金銭を不当利得として返還請求できるという判断がなされたのです。この返還を請求できる払い過ぎた金銭が、現在でいう「過払い金」です。

実務に与えた影響

今や、過払金返還請求は当たり前に行われています。TVでCMなどやっているくらいですから、多くの方も知っていることでしょう。

この過払金返還請求権を認めたのが、上記の最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決です。現在隆盛している過払金返還請求を初めて認めた画期的な判例であり,過払い金返還請求の最大の根拠となる判例であると言えます。

したがって、実務に与えた影響が極めて大きい判例です。

なお、この判例では、元利一括返済をした場合でも過払金返還請求できるのかについては、明確な判断をしていませんが、その点については、後の最高裁判所第三小法廷昭和44年11月25日判決で解決されています。

タイトルとURLをコピーしました