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個人再生における再生計画認可要件(不認可事由がないこと)とは?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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個人再生における再生計画を認可してもらうためには、再生手続開始の要件とは別に、民事再生法で定める再生計画認可の要件を満たしていなければなりません。再生計画認可の要件とは、民事再生法に定める「再生計画不認可事由がないこと」です。

この再生計画不認可事由には、民事再生全般に共通する不認可事由のほか、個人再生全般に共通する不認可事由、小規模個人再生・給与所得者等再生それぞれに固有の不認可事由があります。これらすべての不認可事由がないことが、再生計画認可の要件として必要です。

また、住宅資金特別条項を利用する場合には、住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の不認可事由もあります。この場合も、不認可事由がないことが再生計画認可の要件として必要です。

個人再生における再生計画認可の要件

個人再生によって借金・債務を整理するためには、裁判所によって再生手続を開始してもらった上で、その手続内において再生計画を認可してもらう必要があります。

個人再生も裁判手続ですから、そもそも手続を開始してもらう時点で、民事再生法で定められている再生手続開始の要件を満たしていなければなりません。

しかし、再生手続が開始されたからといって、当然に再生計画も認可してもらえるわけではありません。

再生計画を認可してもらうためには、再生手続を開始してもらうための要件とは別に、再生計画を認可してもらうための要件を満たしている必要があります。再生計画認可の要件とは、民事再生法に定める「再生計画不認可事由がないこと」です

再生手続開始の要件は再生手続開始の時点においてその有無が判断されますが、再生計画認可の要件(不認可事由がないこと)は、再生計画認可または不認可・棄却決定をする際にその有無が判断されることになります。

個人再生による債務整理ができるかどうかを考えるに当たっては、再生計画認可要件・再生計画不認可事由とはどのようなものなのかについて知っておく必要があります。

個人再生における再生計画認可の要件としては、以下のものが必要となります。

民事再生全般に共通する再生計画認可要件

民事再生法 第174条

  • 第1項 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
  • 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
  • 第1号 再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
  • 第2号 再生計画が遂行される見込みがないとき。
  • 第3号 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
  • 第4号 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。

個人再生は、正式に言うと「小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」という民事再生手続(再生手続)の特則です。そのため、個人民事再生と呼ばれることもあります。

個人再生も、民事再生の特則である以上、基本的には通常の民事再生(通常再生)と同様の規律を受けることになります。

そのため、個人再生においても、通常の民事再生手続における再生計画認可の要件(不認可事由がないこと)を満たしている必要があります。具体的には、以下の民事再生共通の再生手続開始要件が必要です。

民事再生手続全般に共通する再生計画認可要件
  • 再生手続に不備を補正できない重大な法律違反がないこと
  • 再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと
  • 再生計画遂行の見込みがあること
  • 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったものでないこと
  • 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反していないこと(清算価値保障原則を満たしていること)

※なお、前記民事再生法174条2項3号および4号の要件は再生債権者による決議のあることを前提としているため、再生計画案の決議が行われない給与所得者等再生においては問題となりません。

小規模個人再生・給与所得者等再生に共通する個人再生に固有の再生計画認可要件

民事再生法 第231条

  • 第1項 小規模個人再生において再生計画案が可決された場合には、裁判所は、第174条第2項(当該再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものであるときは、第202条第2項)又は次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
  • 第2項 小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
  • 第1号 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき。
  • 第2号 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第84条第2項に掲げる請求権の額を除く。)が5000万円を超えているとき。
  • 第3号 前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円を超え50000万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第84条第2項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の10分の1を下回っているとき。
  • 第4号 第2号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の5分の1又は100万円のいずれか多い額(基準債権の総額が100万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の5分の1が300万円を超えるときは300万円)を下回っているとき。
  • 第5号 再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合において、再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき。

民事再生法 第241条

  • 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
  • 第1号 第174条第2項第1号又は第2号に規定する事由(再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合については、同項第1号又は第202条第2項第2号に規定する事由)があるとき。
  • 第2号 再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき。
  • 第3号 再生計画が住宅資金特別条項を定めたものである場合において、第202条第2項第3号に規定する事由があるとき。
  • 第4号 再生債務者が、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者に該当しないか、又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき。
  • 第5号 第231条第2項第2号から第5号までに規定する事由のいずれかがあるとき。
  • 第6号 第239条第5項第2号に規定する事由があるとき。
  • 第7号 計画弁済総額が、次のイからハまでに掲げる区分に応じ、それぞれイからハまでに定める額から再生債務者及びその扶養を受けるべき者の最低限度の生活を維持するために必要な1年分の費用の額を控除した額に2を乗じた額以上の額であると認めることができないとき。
     再生債務者の給与又はこれに類する定期的な収入の額について、再生計画案の提出前2年間の途中で再就職その他の年収について5分の1以上の変動を生ずべき事由が生じた場合  当該事由が生じた時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税、個人の道府県民税又は都民税及び個人の市町村民税又は特別区民税並びに所得税法 (昭和40年法律第33号)第74条第2項に規定する社会保険料(ロ及びハにおいて「所得税等」という。)に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額
     再生債務者が再生計画案の提出前2年間の途中で、給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった場合(イに掲げる区分に該当する場合を除く。)  給与又はこれに類する定期的な収入を得ている者でその額の変動の幅が小さいと見込まれるものに該当することとなった時から再生計画案を提出した時までの間の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を1年間当たりの額に換算した額
     イ及びロに掲げる区分に該当する場合以外の場合  再生計画案の提出前2年間の再生債務者の収入の合計額からこれに対する所得税等に相当する額を控除した額を2で除した額
  • 第3項 前項第7号に規定する1年分の費用の額は、再生債務者及びその扶養を受けるべき者の年齢及び居住地域、当該扶養を受けるべき者の数、物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定める。

前記のとおり、個人再生は、通常民事再生の特則ですから、通常民事再生とは異なる個人再生に固有の再生計画認可要件もあります。

個人再生の再生計画を認可してもらうためには、前記民事再生全般に共通する認可要件のほか、個人再生に固有の再生計画認可の要件(不認可事由がないこと)も満たしている必要があります。

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続がありますが、これら両方の手続に共通する個人再生に固有の再生計画認可要件としては、以下のものがあります(民事再生法231条2項3号、4号、241条2条5号)。

再生債権額が5000万円を超えないこと

再生債権が5000万円を超える場合は、再生計画不認可となります。この金額には利息や遅延損害金も含まれます。ただし、住宅資金特別条項を利用する場合の住宅ローン債権の金額は含まれません。

個人再生を申し立てる際には、債権額が5000万円を超えてしまっていないかをよく確認しておく必要があります。

なお、仮に5000万円を超えてしまっても、個人再生が利用できないというだけですので、通常の民事再生の利用は可能です。

計画弁済総額が最低弁済額以上であること

個人再生であってもいくらでも減額できるというわけではありません。減額できる金額の最低基準は法律で決められています。その最低金額が最低弁済基準額です。これを下回る場合も再生計画は不認可となります。

最低弁済額の基準は、以下のとおりです。

最低弁済額の基準
  • 無異議債権・評価済債権の総額が3000万円以下の場合
    • 基準債権額が100万円未満 → 最低弁済額は「基準債権の額」
    • 基準債権額が100万円以上500万円未満 → 最低弁済額は「100万円」
    • 基準債権額が500万円以上1500万円未満 → 最低弁済額は「基準債権額の5分の1」
    • 基準債権額が1500万円以上3000万円以下 → 最低弁済額は「300万円」
  • 無異議債権・評価済債権の総額が3000万円を超え5000万円以下の場合
    → 最低弁済額は「無異議債権・評価済債権の総額の10分の1」

小規模個人再生に固有の再生計画認可要件

民事再生法 第230条

  • 第6項 第4項の期間内に再生計画案に同意しない旨を同項の方法により回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えないときは、再生計画案の可決があったものとみなす。
  • 第7項 再生計画案に同意しない旨を第4項の方法により回答した議決権者のうち第百172条第2項(同条第3項において準用する場合を含む。)の規定によりその有する議決権の一部のみを行使したものがあるときの前項の規定の適用については、当該議決権者一人につき、議決権者総数に1を、再生計画案に同意しない旨を第4項の方法により回答した議決権者の数に2分の1を、それぞれ加算するものとする。

前記のとおり、個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生という2つの種類の手続が設けられています。このうち、基本類型となるのが小規模個人再生です。

小規模個人再生と給与所得者等再生には、前記のとおり共通する要件もありますが、それぞれに固有の要件もあります。小規模個人再生に固有の再生計画認可の要件としては、以下のものがあります。

※なお、再生計画案の決議が可決されたことは、厳密に言うと再生計画認可の要件そのものではありませんが、可決されなければ手続が廃止により打ち切りとなり、認可を受けることもできなくなるため、要件の1つとして挙げています。

給与所得者等再生に固有の再生計画認可要件

給与所得者等再生は、個人再生のうちでも特別類型に当たる手続です。

この給与所得者等再生の場合も、民事再生共通の要件・個人再生共通の要件のほかに、給与所得者等再生に固有の再生計画認可の要件(不認可事由がないこと)があります。

給与所得者等再生に固有の再生計画認可の要件としては、以下のものがあります。

住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可要件

再生計画に住宅資金特別条項を定める場合には、前記までの各再生計画認可要件のほか、住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の認可要件(不認可事由がないこと)も満たしている必要があります。

住宅資金特別条項を定めた再生計画に固有の認可要件としては、以下のものがあります。

住宅資金特別条項を定めた場合の再生計画認可要件

小規模個人再生の再生計画認可要件(まとめ)

小規模個人再生の場合に再生計画認可決定を受けるための要件をまとめると、以下のとおりです。

小規模個人再生の再生計画認可要件(まとめ)
  • 再生計画案の決議が可決されたこと(不同意回答をした再生債権者が再生債権者の頭数総数の半数に満たず、かつ、不同意回答をした再生債権者の再生債権額が再生債権の総額の2分の1を超えていないこと)
  • 再生手続に不備を補正できない重大な法律違反がないこと
  • 再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと
  • 再生計画遂行の見込みがあること
  • 再生計画の決議が不正の方法によって成立したものでないこと
  • 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反していないこと(清算価値保障原則を満たしていること)
  • 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること(利用適格要件)
  • 再生債権総額が5000万円を超えていないこと
  • 計画弁済総額が最低弁済額以上であること
  • 債権者一覧表に住宅資金特別条項を利用する意思があるという記載をした場合には、再生計画に住宅資金特別条項を定めていること

なお、小規模個人再生において住宅資金特別条項を利用する場合には、上記のほかに、前記の住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可要件も満たしている必要があります。

給与所得者等再生の再生計画認可要件(まとめ)

給与所得者等再生の場合に再生計画認可決定を受けるための要件をまとめると、以下のとおりです。

給与所得者等再生の再生計画認可要件(まとめ)
  • 再生手続に不備を補正できない重大な法律違反がないこと
  • 再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと
  • 再生計画遂行の見込みがあること
  • 再生債権額が5000万円を超えないこと
  • 再生計画に基づく弁済額が民事再生法231条2項3号および4号に定める最低弁済額を下回っていないこと
  • 再生計画が再生債権者の一般の利益に反しないこと(清算価値保障原則を満たしていること)
  • 債務者に給与またはこれに類する定期的な収入を得ていること
  • 定期的な収入の額の変動の幅が小さいと見込まれること
  • 過去の給与所得者等再生の再生計画が遂行された場合の当該再生計画認可決定確定日、ハードシップ免責がされた場合の当該再生計画認可決定確定日、破産免責許可決定確定日から7年以内にされた申立てでないこと
  • 計画弁済総額が可処分所得額の2年分以上であること
  • 債権者一覧表に住宅資金特別条項を利用する意思があるという記載をした場合には、再生計画に住宅資金特別条項を定めていること

なお、給与所得者等再生において住宅資金特別条項を利用する場合には、上記のほかに、前記の住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可要件も満たしている必要があります。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

弁護士の探し方

「個人再生をしたいけど、どの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。

現在では、多くの法律事務所が個人再生を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、個人再生を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。

しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。

債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。

そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。

ちなみに、個人再生の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。

レ・ナシオン法律事務所
・相談無料
・全国対応・メール相談可・LINE相談可
・所在地:東京都渋谷区

弁護士法人東京ロータス法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・休日対応・メール相談可
・所在地:東京都台東区

弁護士法人ひばり法律事務所
・相談無料(無料回数制限なし)
・全国対応・依頼後の出張可
・所在地:東京都墨田区

参考書籍

本サイトでも個人再生について解説していますが、より深く知りたい方のために、個人再生の参考書籍を紹介します。

個人再生の実務Q&A120問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
個人再生を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、個人再生実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

個人再生の手引(第2版)
編著:鹿子木康 出版:判例タイムズ社
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官および裁判所書記官・弁護士らによる実務書。東京地裁の運用が中心ですが、地域にかかわらず参考になります。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、民事再生(通常再生)・個人再生の実務全般について解説されています。

はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。

書式 個人再生の実務(全訂6版)申立てから手続終了までの書式と理論
編集:個人再生実務研究会 出版:民事法研究会
東京地裁・大阪地裁の運用を中心に、個人再生の手続に必要となる各種書式を掲載しています。書式を通じて個人再生手続をイメージしやすくなります。

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