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小規模個人再生の再生計画が認可されるための要件とは?

個人再生の画像
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小規模個人再生の再生計画が認可されるためには、民事再生法に定める再生計画の不認可事由がないことが必要となります

再生計画認可の要件

小規模個人再生の再生計画を認可してもらうためには、まずは、再生手続を開始してもらわなければ話になりません。再生手続を開始してもらうためには、再生手続開始要件を具備している必要があります。

小規模個人再生では再生債権者による再生計画案の決議が行われます。再生手続が開始されたとしても、この再生計画案の決議において可決されなければいけません。この決議において否決されると、再生手続は廃止(打ち切り)になってしまいます。

再生計画案の決議において可決された後、裁判所において、再生計画を認可するか否かの審査が行われます。

小規模個人再生において再生計画が認可されるためには、再生計画認可の要件を満たしていなければなりません。再生計画認可の要件とは、民事再生法で定める再生計画不認可事由がないことです。

この再生計画不認可事由には、民事再生全般に共通する不認可事由だけでなく、個人再生に固有の不認可事由もあります。

民事再生全般に共通する再生計画不認可事由がないこと

民事再生法 第174条

  • 第1項 再生計画案が可決された場合には、裁判所は、次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
  • 第2項 裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合には、再生計画不認可の決定をする。
  • 第1号 再生手続又は再生計画が法律の規定に違反し、かつ、その不備を補正することができないものであるとき。ただし、再生手続が法律の規定に違反する場合において、当該違反の程度が軽微であるときは、この限りでない。
  • 第2号 再生計画が遂行される見込みがないとき。
  • 第3号 再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき。
  • 第4号 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき。

民事再生法 第231条

  • 第1項 小規模個人再生において再生計画案が可決された場合には、裁判所は、第174条第2項(当該再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものであるときは、第202条第2項)又は次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。

個人再生の手続は、個人にも利用できるように民事再生手続を簡易化した民事再生の特則ですが、民事再生手続の1つであることに変わりはありません。

したがって、小規模個人再生においても、民事再生全般に共通する再生計画認可の要件を満たしている必要があります。

民事再生全般に共通する再生計画認可要件とは、民事再生法174条2項各号に定める再生計画不認可事由がないことです。

小規模個人再生においても、民事再生法174条2項各号に定める再生計画不認可事由があれば、再生計画は不認可となります(民事再生法231条1項)。

具体的に言うと、民事再生全般に共通する再生計画認可要件としては、以下のものが必要です。

民事再生全般に共通する再生計画認可要件
  • 再生手続に不備を補正できない重大な法律違反がないこと
  • 再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと
  • 再生計画遂行の見込みがあること
  • 再生計画の決議が不正の方法によって成立したものでないこと
  • 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反していないこと(清算価値保障原則を満たしていること)

    清算価値保障原則を満たしていること

    個人再生においては、清算価値保障原則が適用されると解されています。清算価値保障原則とは、計画弁済総額は破産した場合の配当予想額を上回っていなければならないとする原則のことです。

    計画弁済総額が持っている財産の換価価値の総額以上でなければならないということです。

    清算価値保障原則は、明文はないものの、「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反していないこと」の要件に含まれていると解されています。

    したがって、破産した場合の配当予想額(清算価値の額)が最低弁済額を上回っている場合には、破産した場合の配当予想額(清算価値の額)の方を計画弁済総額としなければなりません。

    例えば、最低弁済額が100万円であったとしても、破産の場合に換価対象となる財産の価値の総額が200万円であった場合には、計画弁済総額を200万円としなければならないということです。

    個人再生に固有の再生計画不認可事由がないこと

    民事再生法 第231条

    • 第1項 小規模個人再生において再生計画案が可決された場合には、裁判所は、第174条第2項(当該再生計画案が住宅資金特別条項を定めたものであるときは、第202条第2項)又は次項の場合を除き、再生計画認可の決定をする。
    • 第2項 小規模個人再生においては、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合にも、再生計画不認可の決定をする。
    • 第1号 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないとき。
    • 第2号 無異議債権の額及び評価済債権の額の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び第84条第2項に掲げる請求権の額を除く。)が5000万円を超えているとき。
    • 第3号 前号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円を超え5000万円以下の場合においては、当該無異議債権及び評価済債権(別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権及び第84条第2項各号に掲げる請求権を除く。以下「基準債権」という。)に対する再生計画に基づく弁済の総額(以下「計画弁済総額」という。)が当該無異議債権の額及び評価済債権の額の総額の10分の1を下回っているとき。
    • 第4号 第2号に規定する無異議債権の額及び評価済債権の額の総額が3000万円以下の場合においては、計画弁済総額が基準債権の総額の五分の一又は100万円のいずれか多い額(基準債権の総額が100万円を下回っているときは基準債権の総額、基準債権の総額の5分の1が300万円を超えるときは300万円)を下回っているとき。
    • 第5号 再生債務者が債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨の記載をした場合において、再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき。

    小規模個人再生において再生計画を認可してもらうためには、民事再生共通の不認可事由がないことだけではなく、さらに、「個人再生に固有の不認可事由がないこと」も必要です。

    個人再生に特有の不認可事由は、上記民事再生法231条2項各号に定められています。これらのうちの1つでもあると、やはり小規模個人再生の認可は受けられないのです。

    小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する個人再生に固有の再生計画認可要件

    前記民事再生法231条2項各号のうち、1号を除く2号から5号までの不認可事由は、小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する個人再生に固有の再生計画不認可事由です。これらがあると、再生計画は認可されません。

    したがって、再生計画認可の要件としては、民事再生法231条2項2号から5号までの不認可事由がないことが、小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する個人再生に固有の再生計画認可の要件として必要となります。

    具体的に言うと、以下の要件が必要であるということです。

    小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する個人再生固有の再生計画認可要件

    再生債権総額が5000万円を超えていないこと

    小規模個人再生特有の不認可事由の1つに「再生債権額が5000万円を超えていないこと」があります。これに該当する場合にも、再生計画は不認可となります。

    この5000万円要件は、再生計画認可の要件であるだけでなく、再生手続開始の要件にもなっています。

    したがって、再生手続開始の時点では再生債権総額が5000万円を超えていなかったとしても、その後の債権調査の結果、利息遅延損害金その他の負債が発見され、再生手続開始決定時に5000万円を超えていたことが判明した場合には、再生計画は不認可となります。

    計画弁済総額が最低弁済額を下回っていないこと

    小規模個人再生特有の不認可事由の1つに「計画弁済総額が最低弁済額を下回っていないこと」があります。これに該当する場合にも、再生計画は不認可となります。

    小規模個人再生においては、大幅な減額が可能とはいえ、無制限であると債権者に大きな不利益を与えすぎることになります。

    そのため、再生債権者に過大すぎる不利益を与えないように、再生計画に基づく弁済金額の最低限度額が定められているのです。

    その最低限度の金額のことを「最低弁済額」といいますが、この最低弁済額を下回る計画弁済総額を定めた再生計画は認可されません。最低弁済額の基準は、以下のとおりです。

    最低弁済額の基準
    • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円以下の場合で、かつ基準債権額が100万円未満の場合は、その基準債権額
    • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円以下の場合で、かつ基準債権額が100万円以上500万円未満の場合は、100万円
    • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円以下の場合で、かつ基準債権額が500万円以上1500万円未満の場合は、基準債権の5分の1の額
    • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円以下の場合で、かつ基準債権額が1500万円以上の場合は、300万円
    • 無異議債権および評価済債権の総額が3000万円を超え5000万円以下の場合には、その無異議債権等の10分の1以上の額

    無異議債権とは、再生債権の認否に対して異議がなされなかった再生債権のことをいい、評価済債権とは、再生債権の評価手続によって確定された再生債権のことをいいます。

    基準債権とは、無異議債権および評価済債権から別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権と民事再生法84条2項各号の債権を除いた債権のことをいいます。

    住宅資金特別条項を利用する場合の住宅ローンの金額は、この無異議債権や基準債権には含まれません。

    最低弁済額について、一応のめどとして簡単に考えるならば、以下のように考えることになるでしょう(住宅資金特別条項を利用する場合は対象となる住宅ローンの金額を債権額から除きます。)。

    最低弁済額の目安
    • 債権額が100万円未満の場合は「その債権額」
    • 債権額が100万円以上500万円未満の場合は「100万円」
    • 債権額が500万円以上1500万円未満の場合は「債権額の5分の1の金額」
    • 債権額が1500万円以上3000万円未満の場合は「300万円」
    • 債権額が3000万円以上5000万円以下の場合は「債権額の10分の1の金額」
    • 債権額が5000万円を超える場合は「個人再生利用不可」

    小規模個人再生に固有の再生計画認可要件

    小規模個人再生には、固有の不認可事由があります。それは、「再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがないこと」です(民事再生法231条2項1号)。これに該当する場合には、再生計画は不認可となります。

    したがって、小規模個人再生の再生計画認可要件として、再生債務者が将来において継続的または反復して収入を得る見込みがあることが必要となるということです。

    この要件は「利用適格要件」とも呼ばれます。利用適格要件は、再生計画認可の要件であるだけでなく、再生手続開始の要件にもなっています。

    つまり、再生手続の開始から再生計画の認可まで、利用適格要件は必要となるのです。

    したがって、再生手続開始の時点で利用適格要件を満たしていても、再生計画認可決定の時点で利用適格要件を満たさなくなった場合、つまり、将来的に反復継続して収入を得る見込みがなくなった場合には、再生計画が不認可となります。

    小規模個人再生の再生計画認可要件のまとめ

    以上をまとめると、再生計画認可の要件としては、以下の要件が必要ということになります。

    小規模個人再生の再生計画認可要件(まとめ)
    • 再生手続に不備を補正できない重大な法律違反がないこと
    • 再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと
    • 再生計画遂行の見込みがあること
    • 再生計画の決議が不正の方法によって成立したものでないこと
    • 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反していないこと(清算価値保障原則を満たしていること)
    • 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること(収入要件)
    • 再生債権総額が5000万円を超えていないこと
    • 計画弁済総額が最低弁済基準を下回っていないこと
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