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みなし弁済とは?

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現在ではすでに撤廃されていますが、旧貸金業規制法(現在は貸金業法)にはみなし弁済という消費者に不利益を与える制度がありました。

みなし弁済とは、貸金業者が利息制限法所定の制限利率を超える利息を受領したとしても、旧貸金業規制法43条所定の要件を満たす場合には、有効な利息の弁済があったものとみなすという制度です。

現在でも、過払金の利息の問題などにもかかわってくるため、過払金返還請求では、このみなし弁済が争点となることもあります。

みなし弁済とは

かつて,旧貸金業規制法(現在の貸金業法)には,「みなし弁済」という非常に消費者泣かせの法制度がありました。

みなし弁済とは,貸金業者が利息制限法所定の制限利率を超える利率利息を受領したとしても,旧貸金業規制法43条所定の要件を満たす場合には,有効な利息の弁済があったものとみなすという制度です。

このみなし弁済は,グレーゾーン金利を助長していた制度です。みなし弁済によりサラ金等の問題が大きな社会問題化したことから,最高裁判例によってその適用を実質的に否定され,さらに貸金業法の改正により現在では撤廃されています。

したがって,本当ならば今更その説明をすることもないのですが,一部貸金業者はいまだにこのみなし弁済を主張してくる場合があります。

また,過払い金の利息(悪意の受益者性)の問題にも関わってくる問題でもあるため,念のため,みなし弁済とはどのような制度であったのかを説明していきたいと思います。

みなし弁済の効果

利息制限法の制限超過利息は無効です。

したがって,仮に貸金業者がその制限超過利息を受領した場合には,その制限超過部分は元本に充当され,計算上元本が完済となった後も制限超過利息を受領すれば,法律上の原因がないものとなり,過払い金として消費者に返還しなければならないというのが原則です。

ところが,このみなし弁済が適用されると,本来無効であるはずの制限超過利息の受領が有効となってしまいます。

つまり,貸金業者が制限超過利息を受領したとしても,みなし弁済が適用されれば,その制限超過部分は元本に充当されることはなくなります。

したがって、制限超過部分を元本に充当して債務を減額することも、元本完済後に支払った金銭を過払い金として返還請求することもできなくなってしまうのです。

要するに,このみなし弁済という制度は,もっぱら,貸金業者が利息制限法違反を潜脱するために設けられた制度であったといってよいでしょう。

当時はサラ金等も巨大な資金力を有しており,政界にも影響力を持っていたことから,このような立法がなされたのでしょう。ちなみに,このみなし弁済を含む旧貸金業規制法は議員立法だそうです。

みなし弁済の要件

みなし弁済の成立要件は,以下のとおりです。

みなし弁済の成立要件
  • 貸金業登録されている貸金業者であること
  • 貸付の際に,旧貸金業規制法17条所定の要件を満たす書面(17条書面)を借主に交付したこと
  • 弁済を受領した際に,旧貸金業規制法18条所定の要件を満たす書面(18条書面)を借主に直ちに交付したこと
  • 借主が,利息の支払いと認識して約定利息を支払ったこと
  • 借主が,任意に約定利息を支払ったこと

こうしてみると,ずいぶん簡単な要件です。書面の交付など,それほど難しいことではありません。

また, 「任意に」とは「自分の意思に基づいて」という意味です。 無理やりにではないという程度の意味に過ぎません。

債務者は,支払った利息が制限超過になっているかどうかなど知らないのが通常です。

そうであるからといって,貸金業者の方から,「制限超過利息なので本当は無効ですけど支払ってくれませんか?」なんて言ってくれるわけがありません。

そのため,債務者の方は,貸金業者から制限超過部分を含めて支払うように請求が来れば言われるままに支払ってしまうのが通常でしょう。つまり,普通は「任意に」支払うに決まっているのです。

こんなに簡単にみなし弁済が認められてしまっては,利息制限法が利率を制限して消費者を保護しようとした趣旨がまったく失われてしまいます。

現に,多くの貸金業者はこのみなし弁済を利用し,平然と利息制限法に違反する利息を取ってきたのです。グレーゾーン金利の被害が拡大した原因は,罰則規定がないということのほか,このみなし弁済にあったと言っても間違いではないでしょう。

みなし弁済の適用を否定した判決

みなし弁済は,前記のとおり,利息制限法の定めをまったく骨抜きしてしまうという制度です。

高利を抑制して社会的弱者である借主を保護するという利息制限法の趣旨をまったく無視してしまう制度ですから,当然,消費者側から大きな批判がなされることになりました。

裁判においても,このみなし弁済は激しく争われていました。みなし弁済の適用を認めるという裁判例も少なからずありましたが,大半は,みなし弁済の要件を厳格に解釈した上で,その要件を満たしていないということで,みなし弁済の適用を否定するという裁判がなされていたました。

みなし弁済の要件(特に17条書面と18条書面の要件)を厳格に解釈する最高裁判例も多数出されています。

そして,平成18年1月13日に決定的な判決がなされました。最高裁判所第二小法廷平成18年1月13日判決(最二小判平成18年1月13日)です。

この判決は,みなし弁済が適用される場合はほとんどあり得ないというほどに厳格な判断をしています。みなし弁済の適用を実質的に否定した判例といってよいでしょう。

上記判例は,「本件期限の利益喪失特約の下で,債務者が,利息として,利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には,上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り,債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。」と判示しました。

期限の利益喪失約款とは,借主が支払いを遅滞した場合には,分割払いの合意(期限の利益)は効力を失い,残金を一括で支払わなければならないという約定のことをいいます。

この期限の利益喪失約款がある場合には,借主は,約定の残高を一括請求されると誤解し,事実上強制的に制限超過利息を支払わされるようなものであるから,そのような状況下で制限超過利息を支払ったとしても,それは任意の支払いとはいえないとし,みなし弁済の要件である支払いの任意性を満たさないから,みなし弁済は成立しないと判断しています。

貸金業者との取引で,このような期限の利益喪失約款のない契約など考えられません。

そうすると,ほとんどすべての貸金業者との契約では期限の利益喪失約款が設定されているのですから,上記判例は,実際上,ほとんどすべての貸金業者との取引においてみなし弁済は適用されない,と判断したのに等しいということになるのです。

この判決以降,下級審においても,みなし弁済の適用が認められることはほとんどなくなりました。

みなし弁済の撤廃

上記最二小判平成18年1月13日以降,さらにみなし弁済撤廃の声が大きくなったことはいうまでもないでしょう。

それでも,しばらくの間は,貸金業者からの強い反発もあったためか,みなし弁済を撤廃する立法はなかなかなされませんでしたが,ついにみなし弁済の撤廃を含む貸金業規制法の改正が決定され,平成21年になってようやくみなし弁済の撤廃が実現しました。

過払い金返還請求とみなし弁済

もっとも,すでにみなし弁済が撤廃されたとはいっても,債務整理や過払い金返還請求においてまったく関連性がなくなったというわけではありません。

特に,過払い金返還請求では,過払金の利息(貸金業者の悪意の受益者性)の問題においてみなし弁済が問題となってくることがあります。

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