
債務整理を行う場合,弁護士や司法書士から各債権者に宛てて「受任通知」を送付するのが通常です。受任通知とは,弁護士が債務者の代理人として債務整理手続を行うことを各債権者に知らせる通知です。「介入通知」「債務整理開始通知」などと呼ばれることもあります。
受任通知を送付すると,貸金業者や債権回収会社からの直接の取立てが停止されるという法的な効果を生じます。
受任通知(介入通知・債務整理開始通知)とは
債務整理において,まず最初に行われる共通の手続は,弁護士から各債権者宛てに「受任通知」を送付することです。
個人(自然人)の債務整理の場合,その方針が自己破産・個人再生・任意整理のいずれであっても,受任通知の送付をまず行うのが通常です。
受任通知とは「弁護士(または司法書士)が債務者の代理人となって債務整理手続を行います」ということを,債権者に知らせるための通知です。「介入通知」とか「債務整理開始通知」と呼ばれることもあります。
受任通知送付による取立て停止の効力
前記のとおり,受任通知(介入通知)は,弁護士が債務者の方の代理人となったことを債権者に知らせるというものですが,ただそれだけの通知ではありません。
受任通知最大の意義・効力は,それを送付することによって,消費者金融やクレジット会社などの貸金業者や債権回収会社(サービサー)による債務者に対する直接の取立てが停止するということです。
受任通知の送付による直接の取立ての停止は,事実上の効力ではなく,貸金業法や債権管理回収業に関する特別措置法によって定められた法的な効力です。
したがって,受任通知を送達した後は,貸金業者から直接電話がかかってきたり,FAXや郵便が送られてきたり,担当者が家に押しかけてきたりということがなくなります。
取立てが停止することによって,ある程度,生活の安定を取り戻すことができますし,その間に債務整理手続の準備をすることができるようになります。
受任通知の効力の注意点
受任通知の効果については注意点があります。
まず,取り立て停止の法的な効果が生ずるのは貸金業者や債権回収会社(サービサー)などだけで,買掛先など一般の債権者に対しては効力を有しません。
もっとも,弁護士等から受任通知が送付されると,たいていの債権者はとりあえず直接の取立ては停止してくれます。特に,銀行やリース会社などの金融機関は,取立てを停止してくれるのが通常です。
また,直接の取立てが停止されるだけですので,貸金業者や債権回収会社であっても,訴訟などの裁判手続によって貸金の返還を請求することまでは停止できません。
ただし,受任通知送付後一定期間は裁判などを起こすことも停止してくれるのが通常です(まったく停止せずに訴訟を提起してくる業者も、ごく一部いるので注意が必要です。)。
受任通知の記載事項
受任通知(介入通知)には,今後は弁護士等が代理人となって債務整理の手続を行うこと,支払いを停止すること,および,直接の取立てを停止するよう求める旨を記載します。
また,それらだけでなく,取引履歴の開示請求も併せて記載するのが一般的でしょう。
加えて,受任通知には,その通知を送付したことが消滅時効を更新させる債務の承認には当たらないということも,念のため書き添えておくのが通常です。
過払金が発生している見込みが高いものの,消滅時効完成が間近で取引履歴の開示を待っている暇がないような場合には,受任通知に,過払金が発生しているときには,その過払金の返還を請求する旨を記載しておくということもあります。