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自己破産すると電話加入権も処分されるのか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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電話加入権とは、施設設置負担金を支払うことによって、の固定電話回線を架設して利用することができる権利のことです。

自己破産すると、この電話加入権も処分の対象になるのが原則ですが、各裁判所では、処分しなくてもよい自由財産として扱っている場合が多いでしょう。

自己破産における電話加入権の取扱いの原則

電話加入権とは、施設設置負担金を支払うことによって,NTTの固定電話回線を架設して利用することができる権利です。電話加入権も処分すればお金になりますから、財産の1つといえます。

この電話加入権は差押禁止財産ではありません。したがって、自由財産とはならず、自己破産すると換価処分しなければならないのが原則です。

仮に電話加入権が換価処分されれば,その加入権に基づく固定電話は使えなくなってしまいます。

ただし、後述のとおり、多くの裁判所では、電話加入権を自由財産の拡張によって自由財産として扱うことにしており、処分しなくてよいものとされています。

各地方裁判所における電話加入権の取扱い

前記のとおり、電話加入権は換価処分の対象となるのが原則です。

しかし、固定電話が利用できなくなってしまうと、最低限度の通信手段を失ってしまい、破産者の生活に悪影響を及ぼす可能性があります。

何より、現在は、携帯電話・スマートフォンの時代です。個人非事業者の場合、固定電話を持っていない人も少なくありません。そのため、電話加入権にはさほどの価値がありません。

それにもかかわらず,譲渡先を探さなければならないなど手間のかかる換価処分をしなければならないとすると,費用対効果から考えて,非合理的面です。

そこで,東京地方裁判所大阪地方裁判所をはじめとして多くの裁判所では、電話加入権を自由財産として取扱う財産換価基準・自由財産拡張基準を設けています。

つまり,電話加入権は,自己破産しても処分する必要がなく,それに基づく固定電話もそのまま使い続けることができるというわけです。

ただし、上記のとおり、現在では、携帯電話やスマートフォンをはじめ、固定電話でも、電話加入権なしで利用できるものがあります。今や電話加入権の処分は、あまり問題にならないといってもよいかもしれません。

電話加入権と同時廃止の関係

同時廃止となるのは,「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」です。したがって,電話加入権と他の財産を併せても,破産手続費用を支払うのに足りない場合には,同時廃止になります。

さらに,前記のとおり,多くの裁判所では,電話加入権は自由財産として扱われ,破産財団に組み入れられないことになります。

そのため,電話加入権の価額は考慮されず,その他の財産で破産手続費用を支払うのに不足するのであれば,同時廃止となります。

たとえば,破産手続開始時に換価価値2万円の電話加入権と19万円の財産を持っていたとします(他の財産・免責不許可事由は無いものとします。)。

この場合,原則でいくと,合計で21万円の財産があり、破産手続費用(20万円)を支払えるので,同時廃止とはなりません。

しかし,東京地裁などの換価基準で考えると、電話加入権は自由財産となり破産財団に組み入れられませんから、破産財団としては、電話加入権を除いた19万円しか無いことになります。

したがって,20万円の破産手続費用を支払うだけの財産が無いので,同時廃止になります。

ただし,これはあくまで「運用」です。場合によっては,財産が20万円を超えていると判断されて,管財手続(個人の場合、通常は少額管財)となるということも絶対に無いとは言えませんので,念のため、弁護士等に相談して確認しておいた方がよいでしょう。

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