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自己破産における少額管財とは?同時廃止や通常管財との違い・各地の運用など解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

Q
自己破産の少額管財とは何?
A

自己破産には、破産管財人が選任される管財事件と選任されない同時廃止事件があります。少額管財とは、裁判所に納付する費用(引継予納金)の金額を低額にする管財事件の運用を意味します。

このページでは、自己破産の少額管財について、わかりやすく説明します。

このページで説明していること
  • 自己破産の少額管財とは何か
  • 少額管財の利用条件:弁護士への依頼
  • 少額管財のメリット・通常管財との違い
  • 少額管財のデメリット・同時廃止との違い
  • 管財事件と同時廃止・少額管財と通常管財の振り分け基準
  • 少額管財の手続の流れ・期間・費用
  • 少額管財・特定管財・同時廃止の違い
  • 少額管財を運用している裁判所
  1. 自己破産の管財事件と同時廃止事件
  2. 少額管財とは:引継予納金を少額化した管財事件
  3. 少額管財の利用条件:弁護士への依頼
  4. 少額管財のメリット(通常管財との比較)
    1. メリット1:引継予納金が低額になる
    2. メリット2:手続が簡略化されている
    3. メリット3:手続が終わるまでの期間が短い
  5. 少額管財のデメリット(同時廃止との比較)
    1. デメリット1:同時廃止より費用がかかる
    2. デメリット2:同時廃止よりも手続が複雑
    3. デメリット3:同時廃止よりも時間がかかる
  6. 管財事件と同時廃止の振り分け基準
    1. 管財と同時廃止のどちらになるか【チェック用チャート】
    2. 参考:東京地方裁判所の場合
    3. 基準1:換価できる財産がある
      1. 換価できる財産から外れるもの
      2. 裁判所ごとの換価基準・自由財産拡張基準の違い
    4. 基準2:一定額以上の現金がある場合
    5. 基準3:否認対象行為がある場合
    6. 基準4:免責不許可事由がある場合
      1. 免責不許可事由の具体例
    7. 基準5:個人事業者や法人経営者である
  7. 少額管財と特定管財の振り分け基準
  8. 少額管財手続の流れ
  9. 少額管財の期間
  10. 少額管財の費用
  11. 少額管財・通常管財(特定管財)・同時廃止の違い
  12. 注意:少額管財を採用していない裁判所もある
  13. 全国の裁判所における少額管財の運用状況
    1. 北海道地方(札幌高等裁判所管内)
    2. 東北地方(仙台高等裁判所管内)
    3. 関東・東海・甲信地方(東京高等裁判所管内)
      1. 東京地方裁判所における運用
    4. 中部地方(名古屋高等裁判所管内)
    5. 近畿地方(大阪高等裁判所管内)
      1. 大阪地方裁判所における運用
    6. 中国地方(広島高等裁判所管内)
    7. 四国地方(高松高等裁判所管内)
    8. 九州・沖縄地方(福岡高等裁判所管内)
    9. まとめ
  14. 弁護士の探し方
  15. 参考書籍

自己破産の管財事件と同時廃止事件

自己破産とは、裁判所に免責許可を決定してもらうことで、一定の財産を処分する代わりに借金全額を帳消し(免責)にできる手続です。

この自己破産の手続には、裁判所により破産管財人が選任される管財事件と、選任されずに簡易的に終わる同時廃止事件があります。管財事件が、破産手続の原則的形態です。

管財事件と同時廃止には、以下のような違いがあります。

比較項目管財事件(少額管財)同時廃止
破産管財人の選任選任される選任されない
財産の調査・換価処分ありなし
ただし、裁判所によって書面による調査は行われます。
公的資格の制限ありあり
同時廃止でも公的資格の制限はあります。
居住の制限ありなし
ただし、住所変更の際には裁判所への申告は必要です。
郵便物の転送ありなし
手続の期間6か月~1年6か月~10か月
予納金の額手数料・郵便切手代・官報公告費(概ね3万円)のほか
引継予納金20万円が必要
手数料・郵便切手代・官報公告費のみ(概ね2万円)

少額管財とは:引継予納金を少額化した管財事件

管財事件は破産手続の原則的形態ですが、自己破産する人にとって大きなネックとなるのが、裁判所に納める費用(引継予納金)です。

引継予納金は、ケースによっては50万円〜数百万円にもなります。これでは、個人の債務者は自己破産を利用するのが難しくなります。

とは言え、何でも同時廃止にしてしまっては、十分に調査できず、財産隠しや不正が行われるリスクがあります。そこで、考え出されたのが、少額管財です。

少額管財とは、管財事件として破産管財人による調査を実施しつつ、引継予納金の金額を低額にして個人消費者や小規模事業者でも自己破産を利用しやすいようにする運用です。

現在では、東京地方裁判所や大阪地方裁判所をはじめとする多くの裁判所で、少額管財(名称が異なる場合もあります。)の運用が実施されています。

少額管財の利用条件:弁護士への依頼

引継予納金は、基本的に破産管財人の報酬と最低限の処理費用です。万が一、申し立てた人(破産者)の財産を処分してもお金が集まらなかった場合のために、あらかじめ最低限の費用を確保しておくことが引継予納金の目的です。

破産手続で処理しなければならない業務が多いほど、破産管財人の報酬や処理費用が必要となるため、その分引継予納金も高額になります。

少額管財で引継予納金の金額を低額にするには、破産管財人の業務量を減らすことによって破産管財人報酬を抑える必要があります。

そして、破産管財人の業務量を減らすには、自己破産を申し立てる前に、専門的・客観的に十分な財産・債権者・免責の調査が行われることが求められます。

そのため、少額管財を利用できるのは、事前の十分な調査を行える弁護士に依頼している場合に限られていることがほとんどです。本人だけでの申立てや司法書士に依頼しての申立てでは、少額管財を利用できません。

【参考】弁護士を探したい方はこちら

少額管財のメリット(通常管財との比較)

少額管財ではない管財事件のことを「通常管財」といいます(裁判所によっては特定管財・大規模管財などと呼ぶこともあります。)。

通常管財と比較した場合、少額管財には以下のようなメリットがあります。

メリット1:引継予納金が低額になる

一番の違いは、裁判所に納める引継予納金の金額です。

少額管財の場合は、原則20万円で済みます。他方、通常管財(特定管財)の場合は、裁判所により異なるものの、最低50万円です。事案によっては数百万円になるケースもあります。

例えば、東京地方裁判所の特定管財の場合、予納金は以下のとおりです(以下の金額は一応の目安とされています。)。

負債総額法人破産個人破産
5000万円未満70万円50万円
5000万~1億円未満100万円80万円
1億~5億円未満200万円150万円
5億~10億円未満300万円250万円
10億~50億円未満400万円400万円
50億~100億円未満500万円500万円
100億円以上700万円~700万円~

少額管財の方が、特定管財と比べて、圧倒的に費用面でのメリットがあります。

メリット2:手続が簡略化されている

少額管財では、破産管財人の業務量を減らすため、随所で通常管財よりも手続が簡略化されています。

例えば、少額管財の場合には、債権調査手続の省略、破産管財人による裁判所への報告事項の簡易化、配当手続を原則簡易配当とするなどの運用がとられることがあります。

自己破産を申し立てる人にとっても、手続の労力の面で少額管財の方が有利です。

メリット3:手続が終わるまでの期間が短い

手続が簡略化されているため、手続が終わるまでの期間が特定管財よりも短いのも、少額管財のメリットです。

通常管財(特定管財)の場合は、1年を超えるケースも珍しくはありません。

他方、少額管財の場合は、裁判所の破産手続は3か月〜半年程度で終わることが多いです。個人消費者の自己破産であれば、不動産の売却などがない限り、3か月ほどで終わることもあります。

少額管財のデメリット(同時廃止との比較)

前記のとおり、自己破産の手続には、破産管財人が選任されない同時廃止事件があります。

同時廃止と比較した場合、少額管財とは以下のような違いがあります。

デメリット1:同時廃止より費用がかかる

少額管財は、通常管財(特定管財)と比べると、大幅に費用を抑えられます。とは言え、同時廃止と比べれば、費用がかかります。

個人消費者の自己破産の場合、少額管財にかかる費用は、引継予納金を含めて24万円前後です。他方、同時廃止の場合は、引継予納金がありません。そのため、費用総額は、2〜3万円ほどで済みます。

デメリット2:同時廃止よりも手続が複雑

同時廃止では、裁判所の破産手続が開始と同時に打ち切り(廃止)になるため、実際に行われるのは免責手続(裁判所での手続は免責審尋)だけです。

他方、少額管財では、通常管財(特定管財)よりも簡略化されているとは言え、破産管財人による調査や換価処分、債権調査・配当、免責調査などが行われます。

そのため、少額管財の方が同時廃止よりも手続にかかる労力は大きくなるでしょう。

デメリット3:同時廃止よりも時間がかかる

前記のとおり、少額管財であっても、裁判所の手続は最低3か月はかかります。財産処分などに時間がかかれば、期間はさらに伸びます。

他方、同時廃止の場合、終わるまでの期間は、裁判所の破産手続開始から概ね2か月半〜3か月ほどです。延長されることもありません。

手続きにかかる時間の面でいっても、同時廃止の方が少額管財よりも破産を申し立てる人にとって有利です。

管財事件と同時廃止の振り分け基準

管財事件になるか同時廃止になるかは、裁判所に自己破産を申し立てた際に、裁判所によって決められます。どちらにするかを自分で選択することはできません。

管財事件が原則・同時廃止が例外であるため、「同時廃止にできない場合はすべて管財事件」になります。具体的には、以下のいずれかの事情がある場合、管財事件になります。

管財事件になるケース
  • 換価できる財産がある(または、財産が存在する疑いがある)
  • 一定額以上の現金がある
    • 東京地裁:33万円
    • 大阪地裁:現金と預貯金の合計額が50万円以上
  • 破産管財人が否認権を行使すべき不正・不公平な行為をした(または、不正・不公平な行為をした疑いがある)
  • 免責不許可事由がある(または、免責不許可事由が存在する疑いがある)
  • 個人事業者や法人役員である(または過去に事業者や役員だった)

管財と同時廃止のどちらになるか【チェック用チャート】

自己破産を申し立てた場合、少額管財になるか同時廃止になるかは、以下のチェック用チャートで確認してみましょう。

自己破産が管財事件と同時廃止のどちらになるかを、換価できる財産、一定額以上の現金、否認権の対象となる不正・不公平な行為、免責不許可事由、個人事業者または法人役員の5項目から簡易判定するフローチャート。該当する項目があれば管財事件、すべて該当しなければ同時廃止となる流れを示している。

参考:東京地方裁判所の場合

東京地裁の場合、以下のようなケースで管財事件になると公表されています。

東京地裁で公表されている管財事件の条件
  • 債務者に、33万円以上の現金がある場合
  • 債務者に、20万円以上の換価対象資産がある場合(預貯金、保険の解約返戻金、未払報酬・賃金など)
  • 債務者が所有する不動産の被担保債権額が不動産処分価格の1.5倍未満の場合
  • 債務者の資産調査が必要な場合
  • 債務者が法人の場合
  • 債務者が法人の代表者又は個人事業者の場合
  • 債務者の免責調査を経ることが相当な場合

基準1:換価できる財産がある

換価できる財産がある場合、破産管財人が処分してお金に換え、債権者に分配しなければいけません。そのため、換価できる財産がある場合は、管財事件になります。

また、財産が存在する疑い(財産漏れや財産隠しの疑い)がある場合も、破産管財人の調査が必要であるため、管財手続になります。

ただし、個人の自己破産では、処分しなくてよい財産(自由財産)が認められています。そのため、自由財産しか持っていない場合は、換価できる財産はない扱いになります。

換価できる財産から外れるもの

自由財産に該当する財産を持っていたとしても、換価できる財産があるとは判断されません(現金は除きます。)。自由財産になるのは、以下の財産です。

換価できる財産から外れるもの
  • 裁判所の破産手続が開始された後に取得した財産(新得財産)
  • 法律上差押えが禁止されている財産
    例)家具・家電、年金など

裁判所ごとの換価基準・自由財産拡張基準の違い

また、各裁判所では、換価できる財産として扱わないものの範囲を拡張しています。例えば、東京地裁の場合は、以下のような財産があっても換価できる財産として扱われません。

大阪地方裁判所では、以下の財産がある場合に管財事件になるとされています。

大阪地方裁判所の振り分け基準
  • 現金・預金残高の合計額が50万円を超える場合
  • 預金以外の個別の財産が20万円以上の場合

裁判所によって若干の違いがあるため、あらかじめ弁護士に相談して確認しておいた方がよいでしょう。

基準2:一定額以上の現金がある場合

99万円以下の現金は自由財産であるため、自己破産しても没収されることはありません。ただし、以下の金額の現金を持っている場合は、破産手続の費用(引継予納金)を支払えるため、管財事件になります。

現金の基準
  • 東京地裁:33万円以上の現金
  • 大阪地裁:現金と預貯金の合計額が50万円以上

裁判所によって現金の振り分け基準が異なるため、あらかじめ弁護士に相談して確認しておくことをお勧めします。

基準3:否認対象行為がある場合

債権者を害する不正行為(詐害行為)や特定の債権者にだけ利益を与える行為(偏頗行為)がある場合、破産管財人は否認権を行使して、財産を取り戻さなければいけません。

そのため、否認対象行為がある場合またはその疑いがある場合は、管財事件になります。例えば、以下のような行為は否認対象行為と判断される可能性があります。

否認対象行為と判断されるケース
  • 家族・親族に財産の名義を変更した
  • 知人に財産をただであげてしまった
  • 家族・親族からの借金だけ返済した
  • 家族・親族が連帯保証人になっている借金だけ返済した

基準4:免責不許可事由がある場合

自己破産を申請(申立て)したからと言って、必ず借金の帳消し(免責)が認められるわけではありません。破産法で定められた一定の事由(免責不許可事由)がある場合は、免責を許可してもらえないケースもあります。

ただし、免責不許可事由がある場合でも、裁判所の裁量で免責が許可されることも多いです。

これら免責に関する調査は、破産管財人が行います。

そのため、免責不許可事由がある場合またはその疑いがある場合は、免責調査のため、管財事件になります。

免責不許可事由の具体例

例えば、以下のようなケースでは、免責不許可事由があると判断される可能性があります。

免責調査が必要と判断されるケース
  • 家族・親族に財産の名義を変更した
  • 知人に財産をただであげてしまった
  • 闇金から借金した
  • クレジットカードで購入した商品を、代金完済前に転売した(換金行為)
  • 家族・親族の借金だけ返済した
  • 浪費・ギャンブル・投資の失敗で借金を過大に増やした

基準5:個人事業者や法人経営者である

個人事業者の場合、事業資産や事業に関わる債務が消費者よりも多いのが通常です。そのため、破産管財人の調査の必要性が大きいと言えます。

また、法人の役員(特に代表者)の場合も、法人資産や負債と個人の資産が混在しているケースが多く、これも破産管財人の調査が求められます。

そのため、個人事業者や法人経営者の場合は、原則として管財事件になります。

ただし、個人事業者とは名ばかりで、実質は給与所得者と変わらない場合には、同時廃止になる可能性はあります。

少額管財と特定管財の振り分け基準

同時廃止ではなく管財事件になる場合は、さらに少額管財になるか通常管財(特定管財)になるかが判断されます。これも裁判所が決定します。

ただし、弁護士に依頼している場合、個人の自己破産であれば、少額管財になるのが通常です。

通常管財になるのは、債権者が100名以上や債務額が億単位、社会的に問題になっている事案などに限られるでしょう。

他方、弁護士に依頼していない場合は、特定管財になります。

少額管財手続の流れ

自己破産の少額管財手続は、以下のような流れで進むのが一般的です。

管財事件(少額管財)の手続の流れ
  • ステップ1
    弁護士への依頼

    少額管財を利用できるのは、弁護士に依頼して自己破産を申し立てた場合だけに限られます。そのため、まずは弁護士に相談・依頼することが必要です。

  • ステップ2
    借入れ・返済のストップ

    弁護士に自己破産を依頼した後は、債権者への返済をストップします。また、新規の借入れやクレジットカードの利用も禁止されます。

  • ステップ3
    受任通知の送付:取立てのストップ

    自己破産の依頼後すぐに、弁護士が各債権者に債務整理の依頼を受けた旨の通知(受任通知)を送付します。この受任通知が送付されると、貸金業者や債権回収業者からの電話・訪問・郵便による直接の取り立てが停止されます。

  • ステップ4
    取引履歴の開示請求・引き直し計算

    受任通知の送付とあわせて債権者(特に貸金業者)に取引履歴の開示も請求します。開示された取引履歴をもとに引き直し計算を行い、利息制限法に従った正当な借金額を調査します。

  • ステップ5
    申立ての準備:債権調査

    上記貸金業者の債権だけでなく、自己破産の申立てをする前に、債権者は誰か、債権額はいくらか、担保などは設定されているかなどの債権を調査します。

  • ステップ6
    申立ての準備:財産調査

    自己破産の申立てをする前に、どのような財産を持っているか、その財産の価値はどれくらいか、換価処分の対象になるかなどを調査します。

  • ステップ7
    申立ての準備:免責調査

    自己破産の申立てをする前に、免責不許可事由はあるか、免責不許可事由がある場合は裁量免責が得られるかなどを調査します。

  • ステップ8
    申立書の作成・必要書類の作成・収集

    自己破産の申立てをする際に裁判所に提出しなければならない申立書や添付書類を作成し、必要となる書類を集めます。

  • ステップ9
    裁判所への自己破産申立て

    準備が整ったら、管轄の地方裁判所に申立書と必要書類一式を提出して自己破産を申し立てます。申立て後、裁判所で法律要件のチェック・管財事件とするか同時廃止とするかの審査が行われます。

  • ステップ10
    破産手続開始決定・破産管財人の選任

    申立てに不備がなければ、裁判所によって破産手続の開始が決定され、破産管財人が選任されます。

  • ステップ11
    破産管財人による調査・財産の換価処分

    破産手続が開始されると、破産管財人が破産者の財産・債権・免責についての調査を行い、財産の換価処分を行います。また、調査の一環として、破産者(および代理人弁護士)と破産管財人の打ち合わせ(面談)が行われるのが通常です。

  • ステップ12
    裁判所での債権者集会

    申立てから概ね3か月後に、裁判所で債権者集会が開催されます。債権者集会には、裁判官、破産管財人、破産者(および代理人弁護士)が出席します。債権者も出席できますが、金融機関の債権者が出席することは少ないです。

  • ステップ13
    裁判所での免責審尋

    債権者集会までに破産管財人の換価業務がすべて終了していれば、破産手続は終了します(終了しない場合は、さらに1~3か月後に債権者集会が行われます。)。債権者集会が終了すると、そのまま引き続き免責を許可してよいかどうかに関する免責審尋が行われます。

  • ステップ14
    裁判所による免責許可決定

    免責審尋から概ね1週間ほどで裁判所によって免責許可が決定されます。免責許可の決定書は、代理人弁護士宛てに送付されます。免責許可決定は概ね1か月ほどで確定します。確定すれば自己破産の手続は完了です。

  • ステップ15
    債権者への配当

    財産の換価処分によって債権者に配当できるだけのお金が集まっていた場合には、債権者への支払いや配当手続が行われます。なお、この手続に破産者が参加する必要はありません。

裁判所によって手続の進み方に違いがある場合があります。あらかじめ弁護士に相談して流れを確かめておきましょう。

少額管財の期間

少額管財の場合は、弁護士に依頼してから手続が終了するまで、以下の期間がかかるのが一般的です。なお、以下の期間は、個人の自己破産の場合を想定しています。

手続期間の目安
申立ての準備2~3か月
ただし、弁護士費用を分割払いにしている場合は、支払いが終わるまで
申立て~免責許可決定3か月
ただし、処分に時間がかかる財産がある場合や隠し財産の調査が必要など、破産管財人の業務に時間がかかる場合は、半年から1年以上かかるケースもあります。
免責許可決定~確定1か月
合計6か月~1年

少額管財の費用

少額管財事件の場合に必要となる費用の目安は、以下のとおりです。
なお、以下の金額は、個人の自己破産の場合を想定しています。

費目金額の目安
裁判手数料(収入印紙代)1,500円
予納郵券(郵便切手代)概ね4,000円~6,000円
※裁判所により異なります。
予納金(官報公告費)概ね2万円
引継予納金原則20万円
弁護士費用30~40万円
合計60~70万円

少額管財・通常管財(特定管財)・同時廃止の違い

少額管財・通常管財(特定管財)・同時廃止には、以下のような違いがあります。

比較項目少額管財通常管財同時廃止
破産管財人の選任選任される選任される選任されない
引継予納金原則20万円50万円以上なし
手続の期間6か月~1年6か月~数年6か月~10か月

注意:少額管財を採用していない裁判所もある

少額管財は、あくまで各裁判所の「運用」です。破産法で少額管財手続が定められているわけではありません。

そのため、裁判所によっては、少額管財(または類する運用)を採用していないところもあり得ます。

事前に弁護士に相談して、少額管財が運用されているかを確認しておくことをお勧めします。

全国の裁判所における少額管財の運用状況

全国の裁判所における少額管財の運用について調査してみました。公表されている情報のみから作成したものですので不明点が多く、あくまで参考程度にとどまるものです。

公表がないからといって、少額管財の運用がないとは限りません。詳細を知りたい場合は、裁判所に問い合わせるか、または、各地の弁護士等に相談されることをお勧めします。

北海道地方(札幌高等裁判所管内)

裁判所少額管財の有無引継予納金の額分納の可否
札幌地方裁判所あり20万円以上(ただし、事案により異なる。)
※札幌弁護士会サイトによると20~50万円
不可(一括のみ)
函館地方裁判所未公表20~50万円
(函館弁護士会サイトから)
未公表
旭川地方裁判所未公表未公表未公表
釧路地方裁判所未公表未公表未公表

東北地方(仙台高等裁判所管内)

裁判所少額管財の有無引継予納金の額分納の可否
仙台地方裁判所あり
(簡易管財)
原則20万円(仙台弁護士会サイトから)未公表
福島地方裁判所未公表未公表未公表
山形地方裁判所未公表未公表未公表
盛岡地方裁判所未公表未公表未公表
秋田地方裁判所未公表未公表未公表
青森地方裁判所未公表未公表未公表

関東・東海・甲信地方(東京高等裁判所管内)

裁判所少額管財の有無引継予納金の額分納の可否
東京地方裁判所(本庁)あり原則20万円4回までの分納可能
東京地方裁判所立川支部あり原則20万円4回までの分納可能(10万円以上積み立てるまで開始決定はされない。)
横浜地方裁判所あり
(小規模管財)
原則20万円不可(一括のみ)
さいたま地方裁判所あり原則20万円不可(一括のみ)
千葉地方裁判所あり原則20万円不可(一括のみ)
水戸地方裁判所なし未公表未公表
宇都宮地方裁判所未公表未公表未公表
前橋地方裁判所未公表未公表未公表
静岡地方裁判所あり原則20万円未公表
甲府地方裁判所あり原則20万円未公表
長野地方裁判所未公表未公表未公表
新潟地方裁判所未公表未公表未公表

東京地方裁判所における運用

上記のとおり、東京地方裁判所では,少額管財の運用がなされています。

実際,個人や小規模事業者の場合には,そのほとんどが同時廃止か少額管財になるといってよいと思います(ただし,法人・会社や個人事業者・自営業者の場合には,原則として,同時廃止にはならないという運用がされています。)。

通常の管財事件(特定管財)となるのは,大企業やそれなりに大規模な中小企業,刑事事件絡みや債権者数が著しく多い場合などの紛争性の大きな会社破産の場合などに限られてきます。

東京地裁管内では、少額管財の場合、原則として引継予納金は20万円とされています。東京地裁本庁・立川支部ともに、月5万円ずつの分割払いも可能とされています。

また,手続の期間も,本庁・立川支部ともに,基本的には,申立てから2か月~5か月程度で終了することになります。

中部地方(名古屋高等裁判所管内)

裁判所少額管財の有無引継予納金の額分納の可否
名古屋地方裁判所あり
(少額予納管財)
原則20万円原則不可
津地方裁判所あり
(少額予納管財)
原則22万円原則不可
岐阜地方裁判所あり
(少額予納管財)
原則20万円原則不可
福井地方裁判所あり原則20万円未公表
金沢地方裁判所未公表未公表未公表
富山地方裁判所あり原則20万円未公表

近畿地方(大阪高等裁判所管内)

裁判所少額管財の有無引継予納金の額分納の可否
大阪地方裁判所あり原則20万円原則不可(ただし、例外的に原則6回の積み立てが可能な場合がある。)
京都地方裁判所あり原則20万円未公表
神戸地方裁判所あり原則20万円未公表
奈良地方裁判所あり原則20万5000円未公表
大津地方裁判所あり原則20万5000円未公表
和歌山地方裁判所あり
(簡易管財)
原則20万5000円未公表

大阪地方裁判所における運用

上記のとおり、大阪地裁本庁や各支部でも、少額管財の運用がなされています。大阪地裁の場合も、管財事件の9割以上が少額管財相当とされていることから、個人や小規模事業者の場合はほとんど少額管財になっているものと思われます。

大阪地裁管内では、少額管財の場合、原則として引継予納金は20万円とされています。原則として予納金の分割はできませんが、同時廃止で申立てをして管財手続に移行した場合などには、6か月の積立て猶予期間が認められることがあります。

手続の期間は、3か月から8か月(積立が認められた場合)程度で終了することになります。

中国地方(広島高等裁判所管内)

裁判所少額管財の有無引継予納金の額分納の可否
広島地方裁判所あり最低20万円不可(一括のみ)
山口地方裁判所あり最低20万円未公表
岡山地方裁判所未公表未公表未公表
鳥取地方裁判所なし50万円~不可(一括のみ)
松江地方裁判所あり20万円以上未公表

四国地方(高松高等裁判所管内)

裁判所少額管財の有無引継予納金の額分納の可否
高松地方裁判所あり21万1000円未公表
徳島地方裁判所未公表未公表未公表
高知地方裁判所未公表未公表未公表
松山地方裁判所未公表未公表未公表

九州・沖縄地方(福岡高等裁判所管内)

裁判所少額管財の有無引継予納金の額分納の可否
福岡地方裁判所あり原則20万円未公表
佐賀地方裁判所未公表未公表未公表
長崎地方裁判所あり20万円以上未公表
大分地方裁判所未公表未公表未公表
熊本地方裁判所あり個人は23万円未公表
鹿児島地方裁判所あり20万円以上未公表
宮崎地方裁判所あり20万円以上未公表
那覇地方裁判所未公表未公表未公表

まとめ

こうしてみると、未公表のため不明の部分は多いのですが、おおむね全国の裁判所で引継予納金の最低額が20万円程度となっており、少額管財とは銘打っていないとしても、少額管財に近い運用が広く行われていることが分かります。

もっとも、最低20万円とはいっても、原則として20万円で例外的な場合にだけ20万円を超えるのか、最低20万円というだけで20万円を超える場合も普通にあるというのでは、かなり話が違ってきます。

やはり詳しくは、地元の弁護士等に相談して確認をした方がよいでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

弁護士の探し方

「自己破産をしたいけどどの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。

現在では、多くの法律事務所が自己破産を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、自己破産を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。

しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。

債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。

そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。

ちなみに、個人の自己破産の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。

弁護士法人東京ロータス法律事務所

  • 相談無料(無料回数制限なし)
  • 全国対応・休日対応・メール相談可
  • 所在地:東京都台東区

弁護士法人ひばり法律事務所

  • 相談無料(無料回数制限なし)
  • 全国対応・依頼後の出張可
  • 所在地:東京都墨田区

弁護士法人ちらいふく

  • 相談無料
  • 24時間対応・秘密厳守・匿名相談可能・メールフォーム・LINE相談可能
  • 所在地:東京都千代田区

参考書籍

本サイトでも自己破産について解説していますが、より深く知りたい方のために、自己破産の参考書籍を紹介します。

破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

破産・民事再生の実務(第4版)破産編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、破産事件の実務全般について解説されています。

破産管財の手引(第3版)
編著:中吉徹郎 出版:金融財政事情研究会
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。破産管財人向けの本ですが、申立人側でも役立ちます。

はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。

破産申立マニュアル(第3版)
編集:東京弁護士会倒産法部 出版:商事法務
東京弁護士会による破産実務書。申立てをする側からの解説がされています。代理人弁護士向けの本ですが、自己破産申立てをする人の参考にもなります。

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