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自己破産の管財事件とは?手続の内容や流れ・管財になる基準を解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

Q
自己破産の管財事件(管財手続)とは何?
A

管財事件とは、裁判所によって破産管財人が選任され、財産の調査・換価処分、債権者の調査・支払い、免責の調査などが実施されるタイプの破産手続です。破産手続の原則的形態です。

このページでは、自己破産の管財事件(管財手続)について説明します。

このページで説明していること
  • 自己破産における管財事件とは
  • 管財事件の遂行者:破産管財人とは
  • 管財事件で行われること(財産の換価処分・債権者への支払い・免責調査)
  • 裁判所費用の少額化:少額管財の運用
  • 管財事件の手続の流れ・期間・費用
  • 管財事件と同時廃止・少額管財と通常管財(特定管財)の振り分け
  1. 自己破産における管財事件(管財手続)とは
  2. 破産管財人とは
    1. 破産管財人に選任される人
    2. 破産管財人との打ち合わせ(面談)
  3. 管財事件で行われること
  4. 管財手続1:財産の調査・管理処分
    1. 管理処分の対象になる財産
      1. 自由財産(処分しなくてもよい財産)
      2. 裁判所の運用で自由財産となるもの
    2. 財産の調査
    3. 財産の管理
    4. 財産の換価処分
  5. 管財手続2:債権者の調査・支払い
    1. 破産債権の調査手続
    2. 財団債権者に対する支払い
    3. 破産債権者への配当
    4. 支払うだけの財産がない場合
  6. 管財手続3:免責の調査
    1. 免責不許可事由
    2. 裁量免責
    3. 免責に関する破産管財人の意見
  7. 少額管財:管財手続の運用
    1. 少額管財の運用が開始された理由
    2. 少額管財の引継予納金
    3. 少額管財の利用条件:弁護士への依頼
    4. 少額管財の運用が実施されている裁判所
  8. 管財事件(少額管財)の手続の流れ
  9. 個人の自己破産における管財事件の手続にかかる期間
  10. 個人の自己破産における管財事件の費用
  11. 管財事件と同時廃止事件の違い
  12. 管財事件と同時廃止の振り分け基準
    1. 東京地裁の場合
    2. 同時廃止と管財事件の振り分けチェックのチャート
  13. 少額管財と通常管財(特定管財)の振り分け基準
    1. 少額管財と通常管財(特定管財)の違い
    2. 少額管財にするための条件
  14. 自己破産の管財事件に関するよくある質問
    1. 管財事件を回避する方法はある?
    2. 引継予納金を一括で準備できない場合はどうすればよい?
  15. 弁護士の探し方
  16. 参考書籍

自己破産における管財事件(管財手続)とは

自己破産は、裁判所から免責を許可してもらうことにより、借金全額を帳消し(免責)にできる手続です。

この自己破産の手続には、裁判所により破産管財人が選任される「管財事件(管財手続)」と、選任されない「同時廃止事件(同時廃止手続)」があります。

管財事件が、破産手続の原則的形態です。

管財事件では、破産管財人が、財産の調査・換価処分、債権者の調査・支払い、免責の調査などを遂行していきます。

破産管財人とは

前記のとおり、管財事件(管財手続)では、裁判所によって破産管財人が選任されます。そして、この破産管財人が破産手続を進めていきます。

破産管財人に選任される人

破産法では、破産管財人に選任されるための資格などは特に定められていません。しかし、実際に破産管財人に選任されるのは、弁護士に限られています。

具体的には、自己破産を申し立てた地方裁判所の管轄地域内に所在する法律事務所に所属し、破産管財人名簿に登録している弁護士が選任されるのが通例です。

この名簿登録している弁護士の中から、事件の処理に適切な弁護士を裁判所が選任します。申立てした人が選ぶことはできません。

例えば、東京地方裁判所に自己破産を申し立てた場合、東京23区に所在する法律事務所に所属し、破産管財人名簿に登録している弁護士が選ばれます。

なお、もちろん申立てを依頼している弁護士とは別の弁護士が選ばれます。

破産管財人との打ち合わせ(面談)

管財手続では、各種調査のため、破産管財人と破産者の打ち合わせ(面談)が行われるのが通常です。

裁判所に提出された自己破産の申立書や添付書類の詳細、申立書等に書いていない財産や事情があるかなどが聴取されます。

面談の時期は、裁判所での自己破産の手続が開始してから1〜2週間以内が一般的です。

ただし、東京地方裁判所(霞が関)では、自己破産の「申立て」から概ね1週間以内に面談しなければならないことになっています。破産手続開始前の面談であるため、気をつけましょう。

管財事件で行われること

前記のとおり、管財事件(管財手続)では、破産管財人が各種の業務(破産管財業務)を遂行します。

大きく分けると、以下の3つの管財業務があります。

管財事件で行われること(管財業務)
  1. 財産の調査・管理・換価処分
  2. 債権者の調査・支払い
  3. 免責の調査

以下、それぞれについて説明していきます。

管財手続1:財産の調査・管理処分

自己破産の手続では、破産管財人が、自己破産した人(破産者)の財産を換価処分して、債権者に分配します。

そのため、裁判所での自己破産手続が開始すると、破産者の財産(後述する自由財産を除く)の管理処分権はすべて破産管財人に専属します。破産者本人でも、勝手に財産を処分できなくなります。

この管理処分権に基づいて、破産管財人は財産の調査・管理・換価処分を進めていきます。

管理処分の対象になる財産

上記のとおり、破産者の財産は破産管財人の管理処分の対象になりますが、すべての財産が対象になるわけではありません。

破産法で定められている一定の財産(自由財産)は、管理も処分もされません。破産した人が自分で自由に使用・処分できます。

そのため、個人の自己破産で管理処分の対象となるのは「自由財産を除く財産」です。

自由財産(処分しなくてもよい財産)

前記のとおり、破産法で定められている自由財産は、破産しても処分されずに済みます。
具体的には、以下の財産が自由財産となります。

自由財産
  • 裁判所の自己破産手続が開始した後に取得した財産(新得財産)
  • 99万円以下の現金
  • 法律上差押えが禁じられている財産(差押禁止財産)
  • 裁判所によって自由財産として認められた財産(自由財産の拡張)
  • 破産管財人が管理処分権を放棄した財産(破産財団からの放棄)

裁判所の運用で自由財産となるもの

また、裁判所によっては、自由財産として扱う基準を設けているところもあります。

例えば、東京地方裁判所の場合は、以下の財産も自由財産として扱われ、強制的に処分されることがありません。

大阪地方裁判所の場合は、以下のような自由財産拡張基準があります。

大阪地裁の自由財産拡張基準
  1. 20万円以下の預貯金・積立金
  2. 20万円以下の保険解約返戻金
  3. 20万円以下の自動車
  4. 20万円以下の敷金・保証金返還請求権
  5. 支給見込額の8分の1が20万円以下の退職金債権
  6. 20万円以下の電話加入権
  7. 上記1~6の財産は、20万円を超える場合でも、これらを自由財産としなくとも経済的再生の機会を十分確保できると見込まれる場合を除いて、拡張相当とする。
  8. 上記1~6の財産であっても、破産手続開始後に発見されたものは原則として拡張不相当とする。
  9. 自由財産合計額が99万円を超える場合は、99万円を超えないように配慮して、拡張相当とする財産を選択する。

なお、自由財産の拡張基準は裁判所により異なります。事前に弁護士に相談して確認することをお勧めします。

財産の調査

自己破産の手続でまず始めに行われるのは、破産者の財産の調査です。

個人消費者の自己破産であれば、あまり複雑な財産はないのが通常であるため、基本的には面談での事情聴取や書類(特に預金通帳や取引明細)のチェックで調査します。

ただし、不動産や自動車などの処分が必要な場合や、事業所・店舗がある個人事業者の場合は、現地調査するケースがあります。

財産の管理

前記のとおり、破産者の財産は(自由財産を除いて)破産管財人が管理処分権を持つことになります。そのため、財産は破産管財人が管理することになり、破産者は自分のものであっても、勝手に処分できません。

処分が必要となる財産は、破産管財人に引き渡すことになります。

財産の換価処分

破産者の財産は、自由財産を除いて、最終的に破産管財人によって換価処分されます。

誰にいくらで売却するのかなど換価の方法は、裁判所と破産管財人で決められます。ケースによっては、破産管財人が親族などに財産買取りを持ち掛けることもあります。

なお、換価して取得した金銭は、破産管財人名義の預金口座で管理されます。

管財手続2:債権者の調査・支払い

財産の換価処分で得た金銭は、破産管財人によって、以下の形で支払われます。

債権者への支払い
  • 財団債権者
    財団債権とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権のことです。例えば、税金や国民健康保険料などの債権が財団債権に該当します。財団債権者には、配当手続を経ないで弁済されます。
  • 破産債権者
    破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないもののことです。借金やクレジットカードの残高などは破産債権に該当します。破産債権者に対しては、配当手続によって支払われます。

そのため、破産手続では、支払いをすべき債権者に漏れがないように、破産管財人によって調査が行われます。

なお、債権者の調査や確定はすべて破産管財人が行うため、破産者が何かすることはほとんどありません。債権に関する事情説明や資料の提出程度でしょう。

破産債権の調査手続

破産手続では、破産債権を調べるための破産債権調査手続が設けられています。
おおまかな流れは、以下のとおりです。

タイムラインのタイトル
  • ①
    裁判所から債権者一覧表に記載されている債権者に通知される

    破産手続が開始されると、裁判所から、申立てで提出された債権者一覧表に記載されている各債権者に対して、債権を届け出るよう求める通知が送られます。

  • ②
    各債権者が裁判所(または破産管財人)に債権を届け出る

    裁判所から通知を受けた債権者は、裁判所に各自の債権の内容や金額を裁判所(または破産管財人)に届け出ます。

  • ③
    届け出られた債権を破産管財人が認否する

    債権者から届け出られた債権届出書をもとに、破産管財人が債権届出を認めるか異議を出すかを判断して、認否を行います。

  • ④
    異議がある場合は債権評価手続を行う

    破産管財人が異議を出した破産債権については、裁判所の債権評価手続で破産債権として認めるか否かを審査します。

  • ⑤
    破産債権を確定させる

    破産管財人が異議を述べなかった債権、債権評価手続で認められた債権は、破産債権として確定し、配当を受けることができます。

なお、財団債権には特別な調査手続は設けられていません。適宜の方法で破産管財人が調査・確定します。

財団債権者に対する支払い

財団債権とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権のことです。この財団債権を有する債権者が財団債権者です。

例えば、税金や国民健康保険料などの債権が財団債権に該当します。

財団債権者への支払いは、破産債権者よりも優先されます。まず財団債権者にすべて支払って、なお余剰があれば破産債権者に配当されます。

財団債権者への支払は配当ではなく、破産管財人が破産手続外で直接弁済します。

破産債権者への配当

破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないもののことです。この破産債権を有する債権者を破産債権者といいます。

貸金業者や金融機関からの借金・ローン、クレジットカードの残高などは、破産債権です。

財団債権者への弁済が完了しても余剰があれば、破産債権者に支払われます。破産債権者へは、配当手続によって支払われます。この破産債権者への配当も、破産管財人が実施します。

支払うだけの財産がない場合

いかに破産管財人が調査・換価処分するとは言っても、全額を払えるだけのお金が集まるはずはありません。個人の破産の場合は、1円も支払えないこともあります。

支払うだけのお金が集まらなかった場合は、債権の調査や弁済・配当の手続は実施されません。むしろ、個人破産では本格的な債権調査や支払いがされないことの方が多いでしょう。

管財手続3:免責の調査

個人債務者が自己破産する目的は、裁判所に免責を許可してもらうことです。免責を許可してもらえないのであれば、自己破産する意味がありません。

もっとも、自己破産を申し立てれば必ず免責が許可されるわけではありません。破産法で定める免責不許可事由があると、免責が許可されないケースもあります。

ただし、免責不許可事由があると常に免責が不許可になるわけでもありません。裁判所の裁量で免責が許可されること(裁量免責)も多いです。

そのため、破産管財人は、免責不許可事由があるか否か、免責不許可事由がある場合は裁量免責を認めても良いと言えるだけの事情があるか否かを調査することになります。

免責不許可事由

免責不許可事由に該当するのは、例えば、以下のような事由です。

破産管財人との打ち合わせでは、借金をした経緯や増えた原因、財産の処分状況や行方など、免責に関することも聞かれるのが通常です。

裁量免責

免責不許可事由がある場合、破産管財人は、裁量免責にしてもよいかどうかを調査します。

裁量免責の判断には、自己破産の手続が開始されるまでの経緯など一切の事情が考慮されます。特に重視されるのは、以下のような事情です。

裁量免責でよく考慮される事情
  • 借金の原因が解消されているか
    例えば、ギャンブルが原因であれば、ギャンブルをやめているかなど
  • 生活が改善されているか
    借金をしないでも済むように収支を考えて、堅実な生活を送っているかなど
  • 真摯に反省しているか
    借金を返済できなくなった原因を見つめ直して、反省しているか。反省文の提出を求められる場合もあります
  • 破産手続に協力しているか
    裁判所や破産管財人からの質問・要請に誠実に対応し、破産管財業務に協力しているか

結局は、隠し事をせずに正直に事情を話すことが、裁量免責を得る一番の方法です。

免責に関する破産管財人の意見

免責の調査をするのは破産管財人ですが、実際に免責の許可・不許可を決定するのは裁判所です。

破産管財人は、免責調査を踏まえて、免責を許可すべきか不許可にすべきかについての意見を裁判所に提出します。

ただし、この破産管財人の意見は、かなり決定的な意味を持っています。破産管財人が「免責相当(免責許可してよい)」との意見を出すと、免責が許可されるのが通常です。

少額管財:管財手続の運用

現在の自己破産手続では、管財事件について「少額管財」と呼ばれる運用が各裁判所で実施されています。

少額管財とは、手続を簡略化して破産管財人の負担を軽減することにより、裁判所に納付する引継予納金を少額にする管財手続の運用のことです。

個人の自己破産の場合、大半は少額管財になるでしょう。

少額管財の運用が開始された理由

管財事件(管財手続)では、裁判所(破産管財人)に引継予納金を納付しなければいけません。

しかし、引継予納金の額が高額すぎると、特に個人債務者は自己破産を利用できなくなってしまうおそれがあります。

とは言え、どのような場合でも同時廃止にしてしまうと、十分な調査ができず、財産隠しや不正が横行してしまう危険性もあります。

そこで、個人債務者でも利用しやすいように引継予納金を少額にしつつ、破産管財人による調査も行えるように考え出された運用が、少額管財です。

少額管財の引継予納金

少額管財ではない管財手続のことは「特定管財」などと呼ばれることがあります。

例えば、東京地裁の場合、特定管財の引継予納金は最低でも50万円です。債権額によっては、数百万円になることもあります。

他方、少額管財の場合、引継予納金は原則20万円です。特定管財と比べると、かなりの違いがあります。

なお、引継予納金は原則一括払いですが、東京地裁本庁では、4回までの分割払いも認められています。

少額管財の利用条件:弁護士への依頼

少額管財で引継予納金を少額にできるのは、破産管財人の負担を軽減することによって、破産管財人報酬を抑えることができるからです。

そして、破産管財人の負担を軽くするには、裁判所に自己破産を申し立てる前に、適切かつ十分な財産・債権者・免責の調査がされている必要があります。

そのため、少額管財を利用できるのは「弁護士に依頼している場合」に限定されています。本人だけでの申立てや司法書士に依頼した場合の申立てでは、少額管財になりません。

自己破産をする場合は、司法書士に依頼するよりも、弁護士に依頼する方が全体の費用を抑えられることが多いです。

少額管財の運用が実施されている裁判所

現在、少額管財の運用は、東京地裁や大阪地裁をはじめとして、全国的に行われています。

裁判所によっては、少額管財ではなく、小規模管財や簡易管財のような名称で実施されているところもありますが、基本的な内容は同じです。

ただし、少額管財はあくまで裁判所の「運用」です。破産法で少額管財の手続が定められているわけではありません。

そのため、裁判所によっては少額管財を実施していない場合もあります。事前に弁護士に相談して、少額管財の運用が行われているかを念のため確認しておいた方がよいでしょう。

管財事件(少額管財)の手続の流れ

前記のとおり、個人の自己破産の場合は、管財事件となる場合であっても少額管財として手続が進められるのが通常です。

具体的には、自己破産の少額管財の手続は、以下のような流れで進むのが一般的です。

管財事件(少額管財)の手続の流れ
  • ステップ1
    弁護士への依頼

    少額管財を利用できるのは、弁護士に依頼して自己破産を申し立てた場合だけに限られます。そのため、まずは弁護士に相談・依頼することが必要です。

  • ステップ2
    借入れ・返済のストップ

    弁護士に自己破産を依頼した後は、債権者への返済をストップします。また、新規の借入れやクレジットカードの利用も禁止されます。

  • ステップ3
    受任通知の送付:取立てのストップ

    自己破産の依頼後すぐに、弁護士が各債権者に債務整理の依頼を受けた旨の通知(受任通知)を送付します。この受任通知が送付されると、貸金業者や債権回収業者からの電話・訪問・郵便による直接の取り立てが停止されます。

  • ステップ4
    取引履歴の開示請求・引き直し計算

    受任通知の送付とあわせて債権者(特に貸金業者)に取引履歴の開示も請求します。開示された取引履歴をもとに引き直し計算を行い、利息制限法に従った正当な借金額を調査します。

  • ステップ5
    申立ての準備:債権調査

    上記貸金業者の債権だけでなく、自己破産の申立てをする前に、債権者は誰か、債権額はいくらか、担保などは設定されているかなどの債権を調査します。

  • ステップ6
    申立ての準備:財産調査

    自己破産の申立てをする前に、どのような財産を持っているか、その財産の価値はどれくらいか、換価処分の対象になるかなどを調査します。

  • ステップ7
    申立ての準備:免責調査

    自己破産の申立てをする前に、免責不許可事由はあるか、免責不許可事由がある場合は裁量免責が得られるかなどを調査します。

  • ステップ8
    申立書の作成・必要書類の作成・収集

    自己破産の申立てをする際に裁判所に提出しなければならない申立書や添付書類を作成し、必要となる書類を集めます。

  • ステップ9
    裁判所への自己破産申立て

    準備が整ったら、管轄の地方裁判所に申立書と必要書類一式を提出して自己破産を申し立てます。申立て後、裁判所で法律要件のチェック・管財事件とするか同時廃止とするかの審査が行われます。

  • ステップ10
    破産手続開始決定・破産管財人の選任

    申立てに不備がなければ、裁判所によって破産手続の開始が決定され、破産管財人が選任されます。

  • ステップ11
    破産管財人による調査・財産の換価処分

    破産手続が開始されると、破産管財人が破産者の財産・債権・免責についての調査を行い、財産の換価処分を行います。また、調査の一環として、破産者(および代理人弁護士)と破産管財人の打ち合わせ(面談)が行われるのが通常です。

  • ステップ12
    裁判所での債権者集会

    申立てから概ね3か月後に、裁判所で債権者集会が開催されます。債権者集会には、裁判官、破産管財人、破産者(および代理人弁護士)が出席します。債権者も出席できますが、金融機関の債権者が出席することは少ないです。

  • ステップ13
    裁判所での免責審尋

    債権者集会までに破産管財人の換価業務がすべて終了していれば、破産手続は終了します(終了しない場合は、さらに1~3か月後に債権者集会が行われます。)。債権者集会が終了すると、そのまま引き続き免責を許可してよいかどうかに関する免責審尋が行われます。

  • ステップ14
    裁判所による免責許可決定

    免責審尋から概ね1週間ほどで裁判所によって免責許可が決定されます。免責許可の決定書は、代理人弁護士宛てに送付されます。免責許可決定は概ね1か月ほどで確定します。確定すれば自己破産の手続は完了です。

  • ステップ15
    債権者への配当

    財産の換価処分によって債権者に配当できるだけのお金が集まっていた場合には、債権者への支払いや配当手続が行われます。なお、この手続に破産者が参加する必要はありません。

なお、裁判所によって手続の進め方が異なる場合もあります。事前に弁護士に相談して確認しておくことをお勧めします。

個人の自己破産における管財事件の手続にかかる期間

管財事件では、破産管財人によって財産の調査・換価処分や債権者の調査や配当などが行われます。そのため、事件の規模によって終了するまでにかかる期間は違ってきます。

特に、特定管財(少額管財でない管財事件)の場合、数年単位になることもあります。

ただし、前記のとおり、個人の自己破産の場合は、少額管財になるのが通常です。また、少額管財にならなかったとしても、完全に特定管財として手続が進むのではなく、少額管財と同じように簡略化された形で手続が進むのが一般的です。

そのため、個人の自己破産の場合は、特定管財よりもかなり短い期間で手続が終わります。具体的には、少額管財の場合、弁護士に依頼してから手続が終わるまでにかかる期間は、概ね以下のとおりです。

手続期間の目安
申立ての準備2~3か月
ただし、弁護士費用を分割払いにしている場合は、支払いが終わるまで
申立て~免責許可決定3か月
ただし、処分に時間がかかる財産がある場合や隠し財産の調査が必要など、破産管財人の業務に時間がかかる場合は、半年から1年以上かかるケースもあります。
免責許可決定~確定1か月
合計6か月~1年

個人の自己破産における管財事件の費用

自己破産の管財事件の場合、同時廃止と異なり、引継予納金(主に破産管財人の報酬)が必要になります。そのため、同時廃止よりも費用が高額になります。

具体的には、個人の自己破産における管財事件の場合、以下の費用が必要になります。

費目金額の目安
裁判手数料(収入印紙代)1,500円
予納郵券(郵便切手代)概ね4,000円~6,000円
※裁判所により異なります。
予納金(官報公告費)概ね2万円
引継予納金少額管財の場合:原則20万円
※少額管財でない場合:50万円以上
弁護士費用30~40万円
合計60~70万円
※少額管財でない場合は、上記以上の金額になる可能性があります。

弁護士費用は、分割払いにしてもらえることが多いです。一方、東京地裁を除いて、引継予納金の分割払いは原則として認められていません。

管財事件と同時廃止事件の違い

前記のとおり、自己破産では、破産管財人が選任されずに簡易的に手続が進行する同時廃止になる場合もあります。

同時廃止とは、破産手続が開始と同時に打ち切り(廃止)になる事件類型です。実際に実施されるのは、免責手続(免責審尋)だけです。そのため、管財手続に比べて、かなり簡易的に手続が終わり、費用もかかりません。

具体的に言うと、管財事件と同時廃止には、以下のような違いがあります。

比較項目管財事件(少額管財)同時廃止
破産管財人の選任選任される選任されない
財産の調査・換価処分ありなし
ただし、裁判所によって書面による調査は行われます。
公的資格の制限ありあり
同時廃止でも公的資格の制限はあります。
居住の制限ありなし
ただし、住所変更の際には裁判所への申告は必要です。
郵便物の転送ありなし
手続の期間6か月~1年6か月~10か月
予納金の額手数料・郵便切手代・官報公告費(概ね3万円)のほか
引継予納金20万円が必要
手数料・郵便切手代・官報公告費のみ(概ね2万円)

上記のとおり、管財事件に比べると、同時廃止の方が手続期間が短く、費用も廉価であるため、破産を申し立てる人の立場からすると、同時廃止の方が有利と言えるでしょう。

管財事件と同時廃止の振り分け基準

いかに同時廃止の方が管財事件よりも自己破産を申し立てる人にとって有利とは言っても、どちらにするかを自分で選べるわけではありません。管財事件と同時廃止のどちらになるかは、申立てした際に裁判所が決定します。

自己破産では管財手続が原則、同時廃止が例外であるため、管財事件になるのは「同時廃止にできない場合」すべてです。

具体的には、以下のような場合は、管財事件になる(同時廃止にできない)でしょう。

管財事件になるケース
  • 換価すべき財産がある(または、財産が存在する可能性がある)
  • 一定額以上の現金を持っている
    • 東京地裁 33万円以上
    • 大阪地裁 現金と預貯金の合計額が50万円以上
  • 不正・不公平な行為によって財産を失っているため、破産管財人が否認権を行使して取り戻す必要がある(または、否認権行使の対象となる不正・不公平な行為が存在する可能性がある)
  • 免責不許可事由がある(または、免責不許可事由が存在する可能性がある)
  • 個人事業者・自営業者または法人役員である(または、過去に個人事業者・自営業者または法人役員であった)

東京地裁の場合

東京地裁の場合、以下のようなケースで管財事件になると公表されています。

東京地裁で公表されている管財事件の条件
  • 債務者に、33万円以上の現金がある場合
  • 債務者に、20万円以上の換価対象資産がある場合(預貯金、保険の解約返戻金、未払報酬・賃金など)
  • 債務者が所有する不動産の被担保債権額が不動産処分価格の1.5倍未満の場合
  • 債務者の資産調査が必要な場合
  • 債務者が法人の場合
  • 債務者が法人の代表者又は個人事業者の場合
  • 債務者の免責調査を経ることが相当な場合

同時廃止と管財事件の振り分けチェックのチャート

管財事件になるか同時廃止になるかは、以下のチャートで確認してみてください。

自己破産が管財事件と同時廃止のどちらになるかを、換価できる財産、一定額以上の現金、否認権の対象となる不正・不公平な行為、免責不許可事由、個人事業者または法人役員の5項目から簡易判定するフローチャート。該当する項目があれば管財事件、すべて該当しなければ同時廃止となる流れを示している。

少額管財と通常管財(特定管財)の振り分け基準

前記のとおり、裁判所では引継予納金を少額化する少額管財の運用が実施されています。

一方、少額管財でない管財事件は、一般的には「通常管財」と呼ばれています。東京地裁では「特定管財」と呼ばれます。また、大規模管財などと呼ばれることもあります。

少額管財でない管財事件になると、引継予納金の額が大幅に高額になります。そのため、同時廃止ではなく管財事件になった場合は、少額管財になるか通常管財になるかが重要となってきます。

※なお、ややこしいですが、東京地裁では、すでに少額管財の方が一般的な運用となっているため、少額管財のことを通常管財と呼び、少額管財ではない場合を特定管財と呼んでいます。

少額管財と通常管財(特定管財)の違い

少額管財と通常管財(特定管財)の最大の違いは、もちろん引継予納金の額です。

少額管財の場合、引継予納金は原則20万円とする裁判所が大半です。一方、通常管財の場合は、裁判所により異なりますが、50万円以上です。

しかも、通常管財の場合は、債権額によって引継予納金の額は増額されます。つまり、「最低50万円」なのです。大規模な事件の場合は、数百万円になるようなこともあります。

少額管財にするための条件

管財事件が少額管財になる第一の条件は、「弁護士に依頼していること」です。個人の自己破産では、弁護士に依頼している場合、ほとんどのケースで少額管財になるでしょう。

一方、司法書士に依頼した場合や本人申立ての場合は、特定管財になります。そのため、自己破産をする場合は、むしろ弁護士に依頼した方が費用の総額が低額で済むことがあります。

なお、個人の自己破産ではほとんどないですが、債権者数が数百人、負債額は数億円、数千万円の資産がある、社会的に問題となっているなど、多くの管財業務を要する可能性のある大規模事件の場合には、弁護士に依頼しても通常管財になることはあり得ます。

自己破産の管財事件に関するよくある質問

ここでは、個人の自己破産における管財事件に関するよくある質問を、Q&A形式で説明します。

管財事件を回避する方法はある?

Q
管財事件を回避して同時廃止にする方法はある?
A

管財事件になるか同時廃止になるかは、裁判所が決めることであるため、管財事件を回避して同時廃止にできるような技術的な方法はありません。

管財事件になるか同時廃止になるかは、裁判所が決めます。管財事件になるべき事案は管財事件となり、技巧的に同時廃止にする方法のようなものはありません。

ただし、逆に、本来なら同時廃止になったはずなのに、事前の調査が不足しているため、「破産管財人の調査が必要」と判断されて管財事件になってしまうことはあります。

そのため、自己破産を申し立てる場合は、弁護士に依頼して事前に十分な財産・債権・免責に関する調査をしてもらうことが重要です。

実際、弁護士に依頼して申し立てた方が、管財事件ではなく同時廃止になりやすいのは事実です。

引継予納金を一括で準備できない場合はどうすればよい?

Q
管財事件の引継予納金を一括で準備できない場合は、どうすればよい?
A

東京地裁では分割払い(最大4回まで)が可能です。他の裁判所の場合は、自己破産を申し立てるまでに積み立てて一括で支払えるよう準備したり、財産を処分して集めておいたりする必要があります。

管財事件では、裁判所に引継予納金を納付する必要があります。少額管財であっても、20万円はかかります。

東京地裁(本庁)では最大4回までの分割払いが認められていますが、他の裁判所では原則として分割は認められておらず、一括払いが必要です。

一括で引継予納金を準備できない場合は、自己破産を申し立てる前に準備しておく必要があります。例えば、以下のような方法で引継予納金を準備するのが一般的です。

引継予納金の準備
  • 弁護士に取り立てを止めてもらっている間に、積立てをしておく
  • 持っている財産を処分してお金に換えておく

むしろ一括で準備できないケースの方が多いでしょう。その場合は、上記のような方法で一括のための資金を用意しておきましょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

弁護士の探し方

「自己破産をしたいけどどの弁護士に頼めばいいのか分からない」
という人は多いのではないでしょうか。

現在では、多くの法律事務所が自己破産を含む債務整理を取り扱っています。そのため、インターネットで探せば、自己破産を取り扱っている弁護士はいくらでも見つかります。

しかし、インターネットの情報だけでは、分からないことも多いでしょう。やはり、実際に一度相談をしてみて、自分に合う弁護士なのかどうかを見極めるのが一番確実です。

債務整理の相談はほとんどの法律事務所で「無料相談」です。むしろ、有料の事務所の方が珍しいくらいでしょう。複数の事務所に相談したとしても、相談料はかかりません。

そこで、面倒かもしれませんが、何件か相談をしてみましょう。そして、相談した複数の弁護士を比較・検討して、より自分に合う弁護士を選択するのが、後悔のない選び方ではないでしょうか。

ちなみに、個人の自己破産の場合、事務所の大小はほとんど関係ありません。事務所が大きいか小さいかではなく、どの弁護士が担当してくれるのかが重要です。

弁護士法人東京ロータス法律事務所

  • 相談無料(無料回数制限なし)
  • 全国対応・休日対応・メール相談可
  • 所在地:東京都台東区

弁護士法人ひばり法律事務所

  • 相談無料(無料回数制限なし)
  • 全国対応・依頼後の出張可
  • 所在地:東京都墨田区

弁護士法人ちらいふく

  • 相談無料
  • 24時間対応・秘密厳守・匿名相談可能・メールフォーム・LINE相談可能
  • 所在地:東京都千代田区

参考書籍

本サイトでも自己破産について解説していますが、より深く知りたい方のために、自己破産の参考書籍を紹介します。

破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

破産・民事再生の実務(第4版)破産編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。東京地裁の運用を中心に、破産事件の実務全般について解説されています。

破産管財の手引(第3版)
編著:中吉徹郎 出版:金融財政事情研究会
東京地裁民事20部(倒産部)の裁判官・裁判所書記官による実務書。破産管財人向けの本ですが、申立人側でも役立ちます。

はい6民です お答えします 倒産実務Q&A
編集:川畑正文ほか 出版:大阪弁護士協同組合
6民とは、大阪地裁第6民事部(倒産部)のことです。大阪地裁の破産・再生手続の運用について、Q&A形式でまとめられています。

破産申立マニュアル(第3版)
編集:東京弁護士会倒産法部 出版:商事法務
東京弁護士会による破産実務書。申立てをする側からの解説がされています。代理人弁護士向けの本ですが、自己破産申立てをする人の参考にもなります。

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