
借金返済・多重債務の問題を解決するためには、債務者本人で交渉する方法やおまとめローンを利用する方法などもありますが、いずれも抜本的な解決とは言えません。抜本的な解決を目指すのであれば、法的な解決方法を選択すべきです。
借金返済・多重債務の問題は、法的な解決が可能です。この法的な解決方法のことを「債務整理」と呼んでいます。
借金返済・多重債務の問題
裁判所の統計によると、毎年、概ね7万人ほどの人が自己破産を申し立てています。任意整理には統計はありませんが、100万~200万件前後と推計されています。一般の人が思っている以上に多くの人が借金に苦しんでいるということです。
いったん借金の支払いが厳しくなると,生活は次第に追い詰められていきます。経済的に追い詰められると,精神的にも追い詰められてしまいがちです。しかも,なかには非常に厳しい取り立てをする相手方もいますから,そうなると,さらに精神的に追い詰められてしまいます。
そこで,借金を返すために他の金融業者から借金をするという悪循環が始まります。まさに,「自転車操業」となってしまうわけです。
このように,複数の業者からの借金を抱えていることを「多重債務」と言うことがあります。そして,多重債務を背負っている人のことを「多重債務者」と言うことがあります。
多重債務状態となると,自力で解決することは困難です。そのため,経済的にも精神的にも窮地に立たされていると感じてしまうようになります。
「自殺も考えた」というのは,決して冗談ではないでしょう。精神的に追い込まれ,うつ病などになってしまった人も大勢います。
さらに,貸金業法の改正により,現在では,年収の3分の1を超える借入れができなくなっています。そのため,借りて返すということさえできなくなり,返済ができなくなっていくということが起きています。
サラ金・クレジットカード会社からの借金
ひとくちに借金返済の問題といっても,いろいろなものがあるかと思いますが,なかでも多いのは,やはり,サラ金やクレジットカード会社からの借金が返せなくなるというものではないでしょうか。
サラ金(消費者金融)やクレジットカード会社(信販会社)などは,かつて,利息制限法の制限を超える高い利率で貸付を行っていたことがありました。
現在では,貸金業法等の改正により,利息制限法所定の制限利率を超えるような利息で貸付けを行ったり,過剰に融資する業者はかなり減りました。とはいえ,決して低くない利率です。
例えば,利率年15パーセントで100万円を借りた場合,年間の利息は15万円,毎月の利息は1万2500円です。毎月2万円ずつ返済していたとしても,半分以上が利息の支払いということになります。
これでは,完済するまでにどのくらいかかるのか分かりません。返済が終わる前に生活が苦しくなり,返済のためにまた借入れをしてしまう状態になってしまうこともあります。
実際,以前よりはかなり減ってきているものの,現在でも,まだクレジット・サラ金会社からの借入れによって返済が苦しいという方は後を絶ちません。
このクレジット・サラ金会社からの借入れの問題を,「クレサラ問題」とか「サラクレ問題」とか呼ぶことがあります。
銀行カードローンによる借金
最近では,サラ金やクレジットカード会社からの借金だけでなく,銀行カードローンからの借金も多くなっています。
銀行カードローンの場合,サラ金などと異なり,貸金業法の規制を受けません。貸金業法の規制を受けないということは,総量規制などの制限がないということです。
しかも,銀行は貸付に際してサラ金やクレジットカード会社を保証会社としてしており,仮に,貸付けが焦げ付いても,保証会社から支払いを受けることができるため,銀行自体は大きなダメージを受けないようになっています。
そのため,事案によっては,かつての貸金業者のように過剰融資ではないかと思われる事案も散見されており,むしろ,現在では,このカードローンによる過剰融資の方が問題視されているくらいです。
しかも,銀行系カードローンの利率は,消費者金融からの借入れの利率とほとんど異なりません。
そのため,実際,最近の事案では,銀行カードローンによる多重債務となっている方が少なくありません。
住宅ローンによる借金の増大
上記のほか,多く見られるのは,住宅ローンの問題です。
住宅を購入したのは良いものの,その後の長く続く不景気で収入が減少し,住宅ローンを支払い続けることができなくなってしまうというものです。
住宅ローンの支払いが厳しくなったにもかかわらず,自宅を残したいという思いから,無理をして他の金融機関などから借入てをして,その結果,多重債務に陥ってしまうことがあるのです。
借金返済問題の私的な解決方法とその問題点
借金返済の問題を解決するために債務者自身で行える方法としては、自ら債権者と交渉して返済計画を変更してもらう方法や、いわゆるおまとめローンなどを利用する方法が考えられます。
自分で債権者と交渉する方法
借金整理の方法としては,弁護士や司法書士に依頼したりおまとめローンを利用したりせず,自分で貸金業者等と交渉するという方法も考えられます。
近時は,貸金業者側でも,債務者本人による返済計画の変更などには応じてくれているようです。債務者本人による返済計画の変更の場合には,ブラックリストに登録されることはないようです。
もっとも、利息や遅延損害金のカットなどは望めないでしょう。また、債務額が膨れ上がってしまっている場合には、債務者本人による話し合いだけでは解決しきれないことも少なくありません。
おまとめローンを利用する方法
借金問題を解決する方法として,よく取り上げられるのが,いわゆる「おまとめローン」です。おまとめローンとは,要するに,他で抱えてしまった借金を返すために,その返済金額をローンで借り入れるというものです。
例えば,A社・B社・C社からそれぞれ100万円ずつ借金をしているという場合,これらとは別のD社から300万円を借り入れ,それをA・B・C社にそれぞれ返済し,借金をD社のみに一本化してしまうということです。
確かに,このおまとめローンは,A・B・C社には約定どおり返済することになりますから、ブラックリストに登録されないというメリットはあります。
しかし,おまとめローンにも利息は付きます。A・B・C社に返済をする場合には利息も付して返済するのが一般的です。
したがって,おまとめローンとして借り入れる金額は,A社等からの借金に利息を付けた金額ということになり,そして,さらには,これにおまとめローンとしての利息もつけられてしまうということです。
例えば,A・B・C社からそれぞれ100万円ずつ借入れ,利息が合計で100万円ついていた場合,D社からおまとめローンをする際には,200万円を借り入れなければならないということになります。
そして,このおまとめローン自体にも,利息が付くことになりますから,200万円に利息を付けた金額をD社に返済していかなければならないということです。
仮に年利が10パーセントであるとすると,単純に考えて,年間20万円も余分に支払わなければならなくなります。
つまり,おまとめローンは,間違いなく,借金を増やしてしまうことになります。もちろん,毎月の返済金額が減ることもあり得ますが,トータルでみると,相当程度の借金を増やすことになりますので,利用する場合には注意が必要でしょう。
借金返済の問題を抜本的に解決しようというのであれば、おまとめローンはあまりお勧めできる方法ではありません。
私的な解決方法の問題点
前記の本人交渉やおまとめローンも、毎月の返済額を減額させるという効果はありますから、まったく無意味な方法ではありません。
しかし、これらの方法は、毎月の返済額を減らせるというだけで、借金そのものを減額できるわけではありません。むしろ、借金の総額は増えてしまいます。そのため、抜本的な解決にはなりません。
また、いずれの方法も限界はあります。借金の額が大きく膨れ上がってしまっている場合には、本人交渉やおまとめローンだけでは、解決できません。それどころか、そもそも利用することさえできないでしょう。
借金返済の問題を抜本的に解決したいのであれば、後述する法的な解決方法を選択すべきです。
借金返済・多重債務問題の法的解決方法(債務整理)
前記のとおり,借金・多重債務問題が深刻化すると,経済的に圧迫され,精神的にも非常に苦しいことになってしまい,自殺などを考えるというようなことすらあり得ます。
確かに,かつてほど借金問題がクローズアップされることは少なくなりました。しかし,現在でも借金問題に苦しんでいる方は少なくありません。借金の問題は現在進行形で進んでいるのです。
また、前記の債務者本人による交渉やおまとめローンでは、限界があります。借金が大きく膨れ上がってしまっている場合には、本人交渉やおまとめローンを利用することさえ難しいこともあります。
しかし、解決方法がないわけではありません。なぜなら、借金返済・多重債務の問題は、法律によって解決することができます。借金返済・多重債務問題の法的な解決方法のことを「債務整理(さいむせいり)」といいます。
借金返済・多重債務の問題は,勇気と覚悟さえあれば,必ず解決できる問題です。あきらめる必要はまったくないのです。
債務整理の種類
債務整理は,借金返済・多重債務問題を解決するための法的解決方法の総称です。債務整理の方法としては,具体的には「任意整理」「自己破産」「個人再生」などがあります。
任意整理とは,弁護士等が債権者と裁判外で交渉し,生活を立て直せるような返済計画に変更してもらうという手続です。
これに対して,自己破産と個人再生は,裁判手続です。
自己破産は,自由財産と呼ばれる財産を除く財産を換価処分して債権者に配当し,それでも支払い切れない債務の支払い義務を免責してもらうという裁判手続です。
個人再生は,債務全額まで免責されませんが,借金を最大で10分の1にまで減額した上で,3年から5年の分割払いにする再生計画を立案し,それを裁判所に認可してもらうという裁判手続です。
利息制限法の制限利率を超える利息を支払い続けていた場合,払い過ぎた分を「過払金」として返還してもらえることがあります。これも,債務整理の一種と言えるかもしれません。
これらの他にも,事情によっては,消滅時効の援用や相続の放棄・限定承認などによって債務整理をすることもあります。
抜本的な解決を目指すならば債務整理を選択すべきです
上記のとおり、債務整理にはさまざまな方法があります。それぞれの事情にあった解決方法を選択できます。しかも、いずれも法的な手続ですので、各手続の内容や結果に違いがあるとしても、借金返済の問題を確実に解決することができるというメリットがあります。
したがって、借金返済の問題を本気で解決しようというのであれば、間違いなく、この債務整理手続を選択すべきでしょう。