
貸金業法では「総量規制」という貸付けへの規制が設けられています。総量規制とは、貸金業者に年収の3分の1を超える貸付けを禁止する規制のことをいいます。
過剰貸付の禁止
貸金業法 第13条の2
- 第1項 貸金業者は、貸付けの契約を締結しようとする場合において、前条第1項の規定による調査により、当該貸付けの契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは、当該貸付けの契約を締結してはならない。
- 第2項 前項に規定する「個人過剰貸付契約」とは、個人顧客を相手方とする貸付けに係る契約(住宅資金貸付契約その他の内閣府令で定める契約(以下「住宅資金貸付契約等」という。)及び極度方式貸付けに係る契約を除く。)で、当該貸付けに係る契約を締結することにより、当該個人顧客に係る個人顧客合算額(住宅資金貸付契約等に係る貸付けの残高を除く。)が当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に3分の1を乗じて得た額をいう。次条第5項において同じ。)を超えることとなるもの(当該個人顧客の利益の保護に支障を生ずることがない契約として内閣府令で定めるものを除く。)をいう。
平成22年6月18日から施行された貸金業法で設けられた新制度の1つに,「総量規制(過剰貸付けに関する規制)」と呼ばれるものがあります。
クレサラ・借金問題を大きくしてしまった原因の1つが,過剰な貸付けです。つまり,返済能力のない借主に対しても,特に慎重な審査もせずに貸付けをしてしまっていたということが,その借主の多重債務化を促進させてしまっていたということです。
そこで,貸金業法では,過剰な貸付けを抑制するために,「貸金業者は,貸付の契約を締結しようとする場合において,返済能力の調査により,当該貸付の契約が個人過剰貸付契約その他顧客等の返済能力を超える貸付けの契約と認められるときは,当該貸付けの契約をしてはならない。」と規定しています(貸金業法13条の2第1項)。
総量規制とは
貸金業法13条の2第1項に言う「個人過剰貸付契約」とは,個人顧客を相手方とする貸付契約で,その貸付けをすることにより,その個人顧客の借入れ合計金額が「基準額」を超えることになるものをいうとされています(同条2項)。
この基準額とは「その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額に3分の1を乗じて得た額」のことです。
ここで言う内閣府令とは、貸金業法施行規則です。「その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるもの」の算定方法は、同規則10条の22で定められています。端的に言えば、年間の給与や年金等の収入です。
この年間の給与や年金等の収入の3分の1の金額が、貸付けの限度額となります。
したがって,簡単に言うと,総量規制とは,個人の年収の3分の1を超える貸付けの契約を締結することは許されなくなるということです。これは,消費者の側から言うと,自分の年収の3分の1を超える借金をすることはできなくなるということになります。
今では,個人の方については年収3分の1を超える金額の貸付けはできません,というような注意喚起がなされていますが,それは,この総量規制に基づくものです。
総量規制の例外
総量規制は,個人に対する貸付について,その個人の方の年収の3分の1を超える金額の貸付けを禁止するという制度です。
もっとも,すべての借入れが総量規制によって制限されることになるというわけではありません。「住宅資金貸付契約等」は,総量規制から除外されることになっています。
したがって,「住宅資金貸付契約等」は,年収の3分の1を超えていても借入れが可能となります。
住宅資金貸付契約等とは,代表的なものは住宅ローンや自動車購入ローンなどです。具体的には以下のとおりです。
また、これら以外にも、以下の場合は総量規制の対象外になっています。
- 個人事業者に対する貸付け
- 銀行・信用金庫など貸金業者でない金融機関による貸付け
銀行カードローンなどは、貸金業法の規制を受けないため、総量規制の対象外です。最近では、むしろ、銀行カードローンによる多重債務の方が問題になってきています。