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自賠責保険の仮渡金とは?もらえる金額や手続の必要書類などを解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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仮渡金とは、損害賠償の額が確定する前であっても、将来損害賠償として支払われるであろう当座の資金の支払いを自賠責保険会社や共済組合に対して請求できる制度のことです。

自賠責保険・共済の仮渡金とは

交通事故に遭った場合、被害者は、加害者に対して損害賠償を請求できます。自動車による人身事故の場合には、自賠責保険・共済が適用されます。

そのため、加害者は、被害者に損害賠償を支払った後、自賠責保険会社や共済組合に対して、支払った分の保険金を請求できます。これを「加害者請求」といいます(自動車損害賠償保障法15条。以下「自賠法」と言います。)

他方、被害者は、加害者本人から損害賠償の支払いを受けていない場合、加害者の自賠責保険会社や共済組合に対して直接に損害賠償請求することができます。これを「被害者請求」といいます(自動車損害賠償保障法16条。以下「自賠法」と言います。)。

被害者請求には、「本請求」と「仮渡金」があります。

本請求とは、損害賠償の全額を請求することです。他方、仮渡金とは、損害賠償の額が確定する前であっても、将来損害賠償として支払われるであろう当座の資金の支払いを自賠責保険会社共済組合に対して請求できる制度のことです。

仮渡金の趣旨

仮渡金の趣旨は、本来であれば損害賠償額が確定するまでの間の当座の費用を被害者に保障することにあります。

損害賠償が支払われるまでの期間

前記のとおり、被害者は、自ら加害者の自賠責保険会社・共済組合に損害賠償を請求(被害者請求)できますが、被害者請求をすれば、すぐに損害賠償金が支払われるわけではありません。

支払いがなされるのは、原則として、本請求の示談・和解が成立または裁判が確定し、支払われるべき損害賠償金額が確定した段階です。

特に争いがない場合でも、治療が長くかかる場合もあります。後遺障害事故の場合であれば、後遺障害の症状固定になるまで数か月かかることもあるでしょう。

治療や症状固定後に請求することになるため、実際の支払いはさらに遅くなります。争いがあり、訴訟によって支払いを求める場合には、半年以上かかることも珍しくありません。

当座の資金の必要性

上記のとおり、実際の損害賠償金の支払いまではかなりの時間がかかります。

しかし、交通事故で怪我をしたら、治療費などはすぐに支払わなければなりません。死亡事故の場合であれば、葬儀費用の支払いなども必要です。被害者や遺族には、当座の資金が必要となるのです。

この当座の各種費用の支払のため、損害賠償金額が確定するまで待っていられないケースはよくあります。これを放置していては、被害者を保護する自賠責保険・共済の趣旨に反します。

そこで、被害者保護のために設けられた制度が、自賠責保険における「仮渡金」の制度です。

この仮渡金によって、被害者は損害賠償額が確定する前に一定の金銭を受け取ることができ、当座の資金に充てることが可能になるのです。

仮渡金の支払額の上限・支払基準

仮渡金の支払金額の上限や支払基準は、自賠法17条1項およびそれに基づく自賠法施行令5条によって定められています。具体的には、以下のとおりです。

仮渡金の支払額の上限
  • 死亡者1人につき、290万円
  • 以下の傷害を受けた者1人につき、40万円
    • 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有する場合
    • 上腕又は前腕骨折で合併症を有する場合
    • 大腿又は下腿の骨折
    • 内臓破裂で腹膜炎を起こした場合
    • 14日以上入院を要する傷害で30日以上の医師の治療が必要な場合
  • 以下の傷害を受けた者1人につき、20万円
    • 脊柱の骨折
    • 上腕又は前腕の骨折
    • 内臓破裂
    • 入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を必要とする場合
    • 14日以上の入院を必要とする場合
  • 11日以上の医師の治療を要する傷害を受けた者1人につき、5万円

仮渡金請求の注意点

自賠責保険会社・共済組合に仮渡金を請求する場合は、以下のポイントに注意しておく必要があります。

仮渡金請求は1回しかできない

仮渡金の請求は、原則1回限りとされています。複数回にわたって行うことができません。

仮渡金を請求する場合には、過不足のないよう事前に必要となる金額を調べ、1回で必要となる資金を請求できるように準備しておく必要があります。

仮渡金の額は最終的な損害賠償額から控除される

仮渡金は、あくまで本請求による損害賠償の先払いにすぎません。最終的に請求できるはずの損害賠償以外に当座の費用をもらえるものではありません。

そのため、仮渡金で受け取った金額は、最終的な損害賠償額から控除されます。

なお、最終的に確定した損害賠償額よりも受け取った仮渡金の方が大きかった場合、差額を自賠責保険会社・共済組合に返還しなければなりません。

仮渡金の消滅時効にも注意

仮渡金も被害者請求による損害賠償請求権ですから、本請求と同じく時効によって消滅してしまう場合があります。時効消滅すると、仮渡金請求はできなくなります(被害者請求もできなくなります。)

具体的には、以下の期間で時効消滅します。

被害者請求(仮渡金請求)の消滅時効期間
  • 後遺障害のない傷害事故:事故発生の翌日から3年
  • 後遺障害事故:後遺障害の症状固定日の翌日から3年
  • 死亡事故:死亡日の翌日から3年

もし仮渡金の請求が必要な場合は、消滅時効期間が経過する前に請求手続を済ませておきましょう。

加害者請求には仮渡金はない

仮渡金制度は、被害者のために当座の資金を用意する制度です。そのため、仮渡金を請求できるのは、被害者請求の場合だけです。加害者請求に仮渡金制度はありません。

仮渡金請求の手続

自賠責保険会社・共済組合に仮渡金を請求する場合の手続は、以下の流れで進みます。

  • 加害者の自賠責保険会社・共済組合に連絡し、書類を受け取る
  • 必要書類を自賠責保険会社・共済組合に提出する
  • 自賠責保険会社・共済組合から仮渡金が支払われる

以下、それぞれについて説明します。

加害者の自賠責保険会社・共済組合に連絡する

仮渡金を請求する場合、まずは被害者自ら、加害者の自賠責保険会社・共済組合に連絡し、仮渡金を請求する旨を伝えます。連絡先は、「加害者」の自賠責保険会社・共済組合です。

仮渡金請求する旨を伝えると、仮渡金請求に必要となる書類一式(仮渡金支払請求書など)を送ってもらえます。

必要書類を自賠責保険会社・共済組合に提出する

仮渡金請求するには、以下のような書類が必要となります。

必要書類入手先
仮渡金支払請求書加害者の自賠責保険会社・共済組合
交通事故証明書自動車安全運転センター
事故発生状況報告書加害者の自賠責保険会社・共済組合
印鑑登録証明書住民登録している市区町村役場
診断書治療を受けた医師・病院
(死亡事故)死亡診断書(死体検案書)治療を受けた医師・病院
(死亡事故)被害者の戸籍謄本(出生から死亡まで)本籍地の市区町村役場

仮渡金支払請求書や事故発生状況報告書は、必要事項を記載する必要があります。その上で、他の必要書類とともに、加害者の自賠責保険会社・共済組合に提出します。

自賠責保険会社・共済組合から仮渡金が支払われる(概ね1週間)

提出した書類に問題がなければ、概ね1週間ほどで自賠責保険会社・共済組合から仮渡金が指定した銀行預金口座に振り込まれます

自賠責保険・共済の内払金(廃止)との違い

かつては、この仮払金に類似する制度として「内払金」がありました。この内払金には、仮払金のような法的根拠はなかったものの、実務上認められていた制度です。

具体的には、当座の資金が必要となった場合に、概ね10万円単位ごとに損害賠償額の確定前に金銭の支払いを求めることができる制度でした。

この内払金の制度は、現在ではすでに廃止されています。

任意保険の仮払い(内払い)との違い

任意保険の場合、「仮払い(内払い)」制度が認められています。仮払いも、自賠責保険・共済の仮渡金と同じく、損害賠償額の確定前に、被害者が当座の資金を任意保険会社に請求できる制度です。

加害者が任意保険に加入している場合は、自賠責保険・共済の仮渡金請求をせず、任意保険会社から仮払金を受け取ることが多いでしょう。

そのため、自賠責保険会社や共済組合に仮渡金を請求するケースは、加害者が任意保険に加入していなかった場合や任意保険会社が仮払いに応じない場合などでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

弁護士に依頼するメリット

「交通事故の損害賠償請求は弁護士に頼んだ方がいいの?」
とお悩みの方は少なくないでしょう。

実は、交通事故の損害賠償額には、保険会社の基準と裁判基準(弁護士基準とも呼ばれます。)があります。保険会社の基準は、裁判基準よりもかなり低額に抑えられています。

そのため、自分で保険会社と示談交渉する場合よりも、弁護士に依頼して裁判基準で示談交渉または訴訟をしてもらう方が、損害賠償額が高額になる可能性が高いのです。弁護士に依頼する一番のメリットは、その点にあります。

特に、自動車保険に弁護士特約を付けてある場合には、弁護士費用を保険金で支払うことが可能です。そのため、自己負担がほとんどないまま、弁護士に依頼することができます。弁護士特約がある場合には、間違いなく弁護士に依頼すべきです

北千住いわき法律事務所

  • 被害者の相談無料
  • メール相談可・土日祝日対応可
  • 着手金無料(完全成功報酬・費用の後払い可能)
  • 損害賠償額が増額しない場合は弁護士報酬0円
  • 弁護士特約の利用可能
  • 所在地:東京都足立区

やよい共同法律事務所

  • 相談無料
  • 全国対応・メール相談可
  • 着手金無料(完全成功報酬型)
  • 増額できなければ弁護士費用は無料
  • 弁護士特約の利用可能
  • 所在地:東京都港区

参考書籍

本サイトでも交通事故損害賠償について解説していますが、より深く知りたい方のために、交通事故損害賠償の参考書籍を紹介します。

民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準
出版:日弁連交通事故相談センター東京支部
通称「赤い本」。交通事故損害賠償請求を扱う弁護士は、ほとんどが持っている必携書。東京地裁の実務を中心に、損害賠償額の算定基準(裁判基準)を解説しています。この本の基準が実務の基準と言ってよいほどに影響力があります。毎年改定されています。

交通事故損害額算定基準 -実務運用と解説-
出版:日弁連交通事故相談センター
通称「青本」。こちらは、赤い本と違って、東京地裁だけでなく、全国の裁判所における裁判例を紹介しています。2年に1回改訂されています。

民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)別冊判例タイムズ38号
編集:東京地裁民事交通訴訟研究会 出版:判例タイムズ社
こちらも実務必携と言われる書籍。交通事故では過失相殺がよく問題となりますが、その過失相殺率の認定基準を解説する実務書です。東京地裁の裁判官が中心となって執筆されている本ですが、この本の認定基準が全国的な実務の基本的な認定基準となっています。

大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第4版)
編集:大阪民事交通訴訟研究会 出版:判例タイムズ社
大阪地裁交通部(第15民事部)の裁判官による大阪地裁における交通事故損害賠償額算定基準を解説する実務書。大阪地裁で交通事故訴訟をする場合には必携です。(※なお、大阪弁護士会交通事故委員会による「交通事故損害賠償算定のしおり(通称、緑の本)」とは異なります。こちらは、裁判官執筆の本です。)

新版注解交通損害賠償算定基準
著者:高野真人ほか 出版:ぎょうせい
赤い本や青本の解説書。実務書の解説書という珍しい本ですが、赤い本や青本はどちらかと言うと資料集的な実務書であるため、詳細な理由付けなどが説明されていない部分もあります。本書は、そこを解説しています。赤い本や青本とセットで持っていると便利です。

交通事故損害賠償法(第3版)
編集:北河隆之 出版:弘文堂
交通事故損害賠償に関する法律の体系書。実務マニュアル的なものではなく、理論的な面の解説も体系的にまとめられており、交通事故損害賠償の基本書といった感じの本です。

逐条解説自動車損害賠償保障法(第3版)
著者:北河隆之ほか 出版:弘文堂
弁護士・裁判官など実務家による自動車損害賠償保障法の逐条解説書。1冊持っていると便利です。

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