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破産管財人の帳簿等の物件検査権とは?範囲・対象・方法などを解説

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

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破産管財人は、破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができます(破産法83条1項後段)。また、破産管財人は、職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社等の帳簿、書類その他の物件を検査することもできます(破産法83条2項後段、3項)。これらの破産管財人の権限のことを「帳簿等の物件検査権」といいます。

破産管財人の調査権限

破産手続では、裁判所によって選任された破産管財人が、破産者の財産を換価処分して、それによって得られた金銭を、各債権者に対して公平・平等に弁済または配当します。

とはいえ、各債権者への公平・平等な分配を実現するには、どのような債権(破産者から見れば負債)があるのか、換価処分できる財産は何かなどを事前に調査することが必要です。

この破産管財人による各種の調査の実効性を担保するため、破産法では、破産管財人に各種の調査権限が与えられています

破産管財人には、破産者や破産した法人の役員などに説明を請求する権限が認められているだけでなく「物件検査権」も与えられています。

破産管財人の帳簿等の物件検査権とは

物件検査権とは、破産法で定められた一定の者が有する帳簿、書類その他の物件を検査できる破産管財人の権限のことです。

破産管財人には、破産法40条で定める説明義務者や破産者の子会社等に対して説明を求める権限(説明請求権)が与えられています(破産法83条1項前段、2項前段、3項)。

しかし、単に説明を受けただけでは、財産や負債の正確な情報を得ることができないこともあります。また、説明を受けたとしても、その正確性や真正を確かめるための資料が必要となることもあります。

そのため、破産管財人には、破産者や、破産法人の代表者・役員など破産法40条1項および2項において説明義務を課されている関係者が持っている破産に関する物件を検査する権限が与えられているのです(破産法83条1項前段)。

また、上記関係者のほか、破産管財人は、破産会社の子会社等に対しても、その業務または財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を検査することもできます(破産法83条2項後段、3項)。

破産者や法人の役員などに対する物件検査権(破産法83条1項前段)

破産法 第83条

  • 第1項 破産管財人は、第40条第1項各号に掲げる者及び同条第2項に規定する者に対して同条の規定による説明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができる。

破産法 第40条

  • 第1項 次に掲げる者は、破産管財人若しくは第144条第2項に規定する債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。ただし、第5号に掲げる者については、裁判所の許可がある場合に限る。
  • 第1号 破産者
  • 第2号 破産者の代理人
  • 第3号 破産者が法人である場合のその理事、取締役、執行役、監事、監査役及び清算人
  • 第4号 前号に掲げる者に準ずる者
  • 第5号 破産者の従業者(第2号に掲げる者を除く。)
  • 第2項 前項の規定は、同項各号(第1号を除く。)に掲げる者であった者について準用する。

引用元:e-Gov法令検索

破産管財人は、破産法40条1項各号および2項に規定する者(説明義務者)が有する破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができます(破産法83条1項後段)。

物件検査権の相手方

破産法83条1項後段によって物件を検査権の対象となるのは、「破産法40条1項各号および2項に規定する者」です。具体的には、破産管財人は以下の者が有する物件を検査できます。

破産法83条1項前段に基づく説明請求権の相手方
  • 破産者
  • 破産者の代理人(および過去に破産者の代理人であった者)
  • 破産者が法人である場合は、その理事・取締役・執行役・監事・監査役・清算人・これらに準ずる者(および過去に理事・取締役・執行役・監事・監査役・清算人・これらに準ずる者であった者)
  • 破産者の従業員(および過去に破産者の従業員であった者)

物件検査の対象となる「破産者」

破産管財人は、「破産者」が有する物件を検査できます(破産法83条1項後段、40条1項1号)。この「破産者」とは個人の破産者であると解されています。

法人破産の場合は、法人そのものに検査を受け入れることをもとめるわけではなく、法人の役員などに対して物権検査を受け入れることを求めることになります。

物件検査の対象となる「破産者の代理人」

破産管財人は、「破産者の代理人」が有する物件も検査できます(破産法83条1項後段、40条1項2号)。代理人には、法定代理人だけでなく、任意代理人も含みます。

例えば、破産者が成年被後見人である場合の成年後見人や、破産者が依頼している代理人弁護士などが「破産者の代理人」です。

また、現時点で破産者の代理人である者だけでなく、過去に代理人であった者が有する物件の検査も可能です(破産法40条2項)。

法人破産における「法人の役員」

前記のとおり、法人破産の場合には、破産管財人は、破産した法人の理事・取締役・執行役・監事・監査役・清算人・これらに準ずる者が有する物件を検査できます(破産法83条1項前段、40条1項3号、4号)。

代表者に限られません。上記の役員であれば、物件検査権の対象になります。

また、現時点で破産した法人の理事・取締役・執行役・監事・監査役・清算人・これらに準ずる者だけでなく、過去に上記役員であった者が有する物件も検査の対象になります(破産法40条2項)。

そのため、すでに役員を退いている場合でも、破産に関係する事項を知っていると判断する場合には、破産管財人はその退任した過去の役員の物件を検査することもできるのです。

事業者破産における「従業員」

法人や個人事業者(自営業者)のような事業者の破産の場合、破産管財人は、破産した法人や事業者の従業員が有する物件も検査できます(破産法83条1項前段、40条1項5号)。

ただし、従業員に対して物権検査権を行使する場合には、裁判所の許可が必要です(破産法40条1項ただし書き)。

検査できる帳簿・書類その他の物件

破産管財人が検査できるのは、破産財団に関する帳簿、書類その他の物件です。

検査できる物件の範囲

破産財団とは、「破産者の財産又は相続財産若しくは信託財産であって、破産手続において破産管財人にその管理及び処分をする権利が専属するもの」のことです(破産法2条14号)。

破産者が破産手続開始時に有していた財産は、(個人破産における自由財産を除いて)すべて破産財団に組み入れられるので(破産法34条1項)、破産者の財産に関するほとんどの物件が検査対象になると言ってよいでしょう。

なお、破産財団に属する財産そのものは検査の対象になりません。というより、破産財団に属する財産そのものの管理処分権は破産管財人に専属しているので(破産法78条1項)、検査の受忍を求める必要なく破産管財人が自由に調べることができるからです。

説明義務者以外の者が所有する物件

破産管財人が検査できる「破産財団に関する帳簿、書類その他の物件」は、一般的には、破産者など説明義務者が所有する帳簿等に限られないと解されています(なお、説明義務者が所有する物に限られるとする見解もあります。)。

したがって、破産財団に関する帳簿等であれば、破産者が所有する物件でなくても、破産法83条1項後段に基づく検査の対象となります。

例えば、破産者の家族名義の書類(通帳や取引明細など)であっても、破産者の財産(破産財団)に関するものであれば、検査の対象になる場合はあります。

「帳簿、書類その他の物件」の意味

破産管財人の検査権の対象となる「帳簿」や「書類」には、会計帳簿や貸借対照表などの商業帳簿に限られず、計算関係書類・税務申告書・株主総会議事録・取締役会議事録・契約書・稟議書なども広く含まれると解されています。

また、「物件」には、書類だけでなく、フロッピー・ハードディスク・フラッシュメモリなど可視性・可読性が確保されている有体物に記録された電磁的記録も含まれると解されています。

そのため、破産財団に関する情報が記録されているパソコンやスマートフォンも、検査の対象になり得ます。

検査の方法

破産管財人は、破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を「検査」することができます。検査とは、相手方の管理下にある物件を見て調べることを意味します。

もっとも、検査権があるとはいえ、直接的・物理的強制を伴うことは許されず、物件所持者の意思に反して占有場所に立ち入ったり、捜索したりすることはできないと解されています。

あくまで、相手方の了解を得て、検査しなければなりません。例えば、いきなり破産者の自宅に立ち入って物件を検査するようなことはできません。

ただし、物件所持者が破産者本人である場合は、検査を拒絶すれば、刑罰を科せられることがあります。

実務では、破産管財人と破産者との面談・打ち合わせの際に破産者に持参してもらって検査をしたり、事前に日程や段取りを決めた上で事務所や倉庫などの現場へ破産管財人が赴いて検査することが多いでしょう。

検査の受忍を求める相手方

上記のとおり、検査できる物件は、破産財団に関する帳簿等の物件です。

ただし、この物件の検査を受け入れなければならないのは、説明義務者だけではありません。破産財団に関する物件を所持・占有している者すべてに対して、検査の受入れ(受忍)を求めることができると解されています。

例えば、破産財団に関する物件を、破産者の家族が所持している場合、その家族も破産管財人による検査を受け入れる必要があるのです(なお、検査されるのはあくまで破産財団に関する物件です。破産財団に関わらない破産者の家族の固有財産に関する物件まで検査権が及ぶわけではありません。)。

物件検査権と説明義務

前記のとおり、破産管財人は、破産法40条1項各号および2項に規定する者が有する破産財団に関する物件を検査できます。

この破産法40条1項各号および2項に規定する者は、破産管財人から説明を求められた場合、説明をしなければならない法的義務(説明義務)が課されています。

単に破産管財人に説明請求権や物権検査権を認めるだけでなく、相手方に説明義務を課すことによって、破産管財人の調査の実効性を高めることが目的です。

検査を拒絶した場合のペナルティ

破産者が検査を拒んだ場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方の刑罰を科されることがあります(破産法268条3項)。

なお、破産者以外の説明義務者が検査を拒絶した場合の破産犯罪はありませんが、説明を拒絶すれば、刑罰(破産法268条1項、2項)を科されることはあります。

破産会社の子会社等に対する物件検査権(破産法83条2項・3項)

破産法 第83条

  • 第2項 破産管財人は、その職務を行うため必要があるときは、破産者の子会社等(次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める法人をいう。次項において同じ。)に対して、その業務及び財産の状況につき説明を求め、又はその帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
  • 第1号 破産者が株式会社である場合 破産者の子会社(会社法第2条第3号に規定する子会社をいう。)
  • 第2号 破産者が株式会社以外のものである場合 破産者が株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合における当該株式会社
  • 第3項 破産者(株式会社以外のものに限る。以下この項において同じ。)の子会社等又は破産者及びその子会社等が他の株式会社の総株主の議決権の過半数を有する場合には、前項の規定の適用については、当該他の株式会社を当該破産者の子会社等とみなす。

引用元:e-Gov法令検索

法人破産の場合、破産管財人は、前記破産法40条に規定する説明義務者のほか、職務を行うために必要があるときには、破産法人の子会社等の業務および財産の状況に関する帳簿・書類・その他の物件を検査できます(破産法83条2項前段、3項)。

物件検査権の相手方

破産法83条1項後段に基づいて検査できるのは、「破産者の子会社等」の物件です。具体的には、破産管財人は以下の者の物件を検査できます(破産法83条2項前段、3項)。

破産法83条2項、3項に基づく説明請求権の相手方
  • 破産者の子会社等
    • 破産者が株式会社である場合は、破産者の(会社法2条3号に規定する)子会社
    • 破産者が株式会社以外のものである場合には、破産者が株主総会の議決権の過半数を有する株式会社
  • 株式会社でない破産者の子会社等(会社法2条3号に規定する子会社または破産者が株主総会の議決権の過半数を有する株式会社)、あるいは、破産者と子会社等が、総株主の議決権の過半数を有する株式会社

実際に説明を求めることになるのは、子会社等の理事や取締役などの役員や従業員です。

破産会社(親会社)
議決権の過半数(支配)
子会社(調査対象)
さらに過半数(支配)
孫会社(ここも調査対象!)

物件検査を求めることができる「破産者の子会社等」とは

破産管財人が破産法83条2項に基づく物件検査の相手方は、「破産者の子会社等」です。

前記のとおり、この破産者の子会社等とは、破産者が株式会社である場合は「会社法2条3号に規定する子会社」、破産者が株式会社以外のものである場合は「破産者が株主総会の議決権の過半数を有する株式会社」です。

このうち会社法2条3号の子会社とは、総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として、財務および事業の方針の決定を支配している株式会社のことです(会社法2条3号、会社法施行規則3条1項)。

破産者が支配権を有している子会社等に命じて財産や業務の隠匿などを行うおそれがあるため、これらの子会社等の業務・財産に関する物件を検査する権限が認められているのです。

孫会社等に対する物件検査

破産管財人は、子会社等だけでなく、「子会社等が総株主の議決権の過半数を有する株式会社」または「破産者と子会社等が総株主の議決権の過半数を有する株式会社」の業務および財産の状況に関する物件を検査することができます(破産法83条3項)。

いわゆる孫会社等の物件も検査できるのです。この孫会社等も「破産者の子会社等」に含まれるものとして扱われます。

子会社等の物件検査権の要件

破産者や破産法人の役員などの説明義務者の物件検査権と違って、子会社等の物件検査権を行使できるのは、「破産管財人が職務を行うために必要があるとき」に限られます。

ただし、職務を行うために必要があるかどうかは破産管財人が判断します。裁判所の許可までは必要とされていません。

検査できる帳簿・書類その他の物件

破産法83条2項後段や3項で検査できるのは、「業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件」です。

検査できる物件の範囲

破産管財人が検査できる破産者の子会社等の物件は「業務および財産の状況」です。

説明義務者の場合と異なり、破産財団に関わるもの一切ではなく、子会社等の業務や財産状況に関するものが検査対象になります。

破産者の子会社等以外の者が所有する物件

説明義務者の場合と異なり、破産法83条2項・3項に基づく検査の対象は、破産者の子会社等が所有する物件に限られます

そのため、破産者の子会社等の業務や財産に関する物件であったとしても、破産者の子会社等の所有物でなければ検査権は及びません。

「帳簿、書類その他の物件」の意味

前記の説明義務者の物件検査権と同じく、「帳簿・書類」には、商業帳簿だけでなく、広く業務・財産に関する書類が含まれ、可視性・可読性が確保されている有体物に記録された電磁的記録も「物件」として検査の対象になります。

検査の方法

検査の方法も、基本的に説明義務者の物件検査権と同じです。破産者の子会社等の承諾なく、敷地内に侵入したり捜索したりすることまではできません。

検査の受忍を求める相手方

検査の受忍を求める相手方は、破産者の子会社等の「代表者等」です。具体的には、代表者、理事・取締役などの役員、従業員が検査の受忍を求める相手方となります。

検査を拒絶した場合のペナルティ

子会社等の代表者等が、破産管財人からの説明請求を拒みまたは虚偽の説明をした場合、当該子会社等の代表者等は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方の刑罰を科されることがあります(破産法268条4項)。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法の基本法が破産法です。破産以外の民事再生法などの倒産法を理解するためにも、破産法を理解しておく必要があります。

この破産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の試験科目になっています。分量が多い上に、かなり実務的な科目であるため、イメージも持ちにくい部分があります。

ただし、出題範囲は限られています。そのため、出題範囲に絞って効率的に勉強することが必要です。そのために、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

STUDYing(スタディング)
・司法試験・予備試験も対応
・スマホ・PC・タブレットで学べるオンライン講座
・有料受講者数20万人以上・低価格を実現

参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第6版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤 眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産・民事再生の実務(第4版)民事再生・個人再生編
編集:永谷典雄ほか 出版:きんざい
東京地裁民事20部(倒産部)の現役裁判官による破産実務の解説書。東京地裁の破産事件を扱う実務家必携の本。実務家でなくても、実際の手続運用を知っておくと、破産法をイメージしやすくなるでしょう。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産法(LEGAL QUEST)
著者:杉本和士ほか 出版:有斐閣
法科大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた基本書・概説書。破産法だけでなく、倒産法全般について分かりやすくまとめられています。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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