この記事にはPR広告が含まれています。

倒産の意味・定義とは?

倒産法の画像
point

法律上に統一的な定義はないですが、「倒産」とは、一般的に、会社などの法人または個人(自然人)が経済的に破綻し、弁済期にある債務を一般的・継続的に支払えなくなることをいうと定義することができるでしょう。「倒産」には、法律上の倒産と事実上の倒産があります。

「倒産」の意味・定義

企業・会社など法人の経営破綻などをあらわす言葉として「倒産」という用語が用いられることがあります。

現代では日常用語として用いられていますが、実は、この「倒産」という用語には、それを統一的にあらわす明確な定義がありません。

そのため、経済的な破綻というニュアンスに違いはないものの、倒産をいかに定義するかについては、以下のとおり、さまざまな定義があります。

中小企業倒産防止共済法における「倒産」

「倒産」という用語が用いられている法律として「中小企業倒産防止共済法」があります。

中小企業倒産防止共済法は、法律の名称自体に「倒産」という用語を含んでいる上、以下のとおり、倒産についての定義規定も定めています。

中小企業倒産防止共済法 第2条

  • 第2項 この法律において「共済契約」とは、中小企業者が独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)に掛金を納付することを約し、機構がその中小企業者の取引の相手方たる事業者につき次の各号のいずれかに該当する事態(以下「倒産」という。)が生ずることに関し、この法律の定めるところにより共済金を貸し付けることを約する契約をいう。
  • 第1号 破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始又は特別清算開始の申立てがされること
  • 第2号 手形交換所において、その手形交換所で手形交換を行つている金融機関が金融取引を停止する原因となる事実についての公表がこれらの金融機関に対してされること。
  • 第3号 前二号に掲げるもののほか、過大な債務を負つていることにより事業の継続が困難となつているため債務の減免又は期限の猶予を受けることを目的とするものと認められる手続であつて、その開始日を特定することができるものとして経済産業省令で定めるものがされること。

もっとも、上記の規定はあくまで、「中小企業倒産防止共済法における倒産」を定義するものであって、法律一般における倒産を定義したものではありません。

とはいえ、倒産の定義を考えるに際しては、上記の中小企業倒産防止共済法における倒産の定義は参考になるでしょう。

企業信用を調査する会社等における「倒産」

企業信用を調査する会社などでは、独自に「倒産」とはどのようなものなのかを定義している場合があります。

具体的には、銀行取引停止処分があった場合、内整理(私的整理)が開始された場合、破産手続などの法的整理手続が開始された場合などに、倒産として扱うものとしています。

倒産の一般的な定義の検討

後述しますが、倒産法の体系には、破産法に基づく破産手続民事再生法に基づく再生手続などがあります。

この倒産法の体系において重要な意味を持つ概念が「支払不能」です。

支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない客観的状態にあることをいいます(破産法2条11号等)。

支払不能であることは破産手続の開始原因とされ、支払不能のおそれは再生手続の開始原因とされており、また、支払不能後の行為が否認権行使の対象とされるなど、支払不能という概念が、倒産法全体を通じて、債務者の経済状態が平常であるかどうか否かの基準とされています。

そこで、この支払不能概念をもとに倒産を定義するのであれば、倒産とは、会社などの法人や個人(自然人)が経済的に破綻し、弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できなくなること、またはそのおそれがある状態になることである、と定義できるでしょう。

なお、倒産というと会社・企業など法人や事業者のみを指すようにも思われますが、上記のとおり、個人(自然人)の経済的破綻による支払不能等も含まれると考えるのが通常です。

法律上の倒産と事実上の倒産

「倒産」というと、何らの法的な手続を行うというイメージが強いと思います。実際、倒産処理を行うための法的手続きが多数用意されています。

もっとも、前記のとおり、倒産という概念は支払不能等の状態を意味していますから、法的な手続を行わない倒産というものも観念できます。

そのため、倒産という場合、「法律上の倒産」と「事実上の倒産」に区別することができます。

法律上の倒産

前記のとおり、法律上、倒産という用語の一般的意味を明確に定義した規定はありません。もっとも、法律学の講学においては、「倒産法」や「倒産手続」という用語が使われています。

現実には「倒産法」という名称の法律はありませんし、「倒産手続」という名称の法的手続もありません。

講学上、一般的な意味での倒産に関わる法令をまとめて「倒産法」と呼び、それら各法令に基づく手続一般をまとめて「倒産手続」と呼んでいるだけです。

倒産法には、主として、破産法・民事再生法・会社更生法・会社法があります。倒産手続も、これに応じて、主たるものは、破産手続・民事再生手続・会社更生手続・特別清算手続であるということになります。

上記4つの手続は裁判手続です。そのため、これらを「法的整理」と呼ぶことがあります。

「法律上の倒産」とは、法的整理手続(破産・民事再生・会社更生・特別清算)の開始が決定されたことを意味すると言えるでしょう。

これに対して、裁判外での倒産処理手続を「私的整理」と呼ぶことがあります。この私的整理も、倒産手続に含められるのが通常です。

その意味でいうと、「法律上の倒産」には、法的整理手続(破産・民事再生・会社更生・特別清算)のほかに、私的整理手続も含まれると解することができます(私的整理については、事実上の倒産に含めるとする考え方もあります。)。

事実上の倒産

前記の法的な倒産手続をとる場合は、いわゆる倒産状態になったことが非常にわかりやすい形で外部に示されることになりますが、そうでなくても、経済的破綻によって支払不能等になっているということはあり得ます。

経済的に破たんし倒産状態にありながら法的倒産手続をとっていない状態のことを「事実上の倒産」と呼ぶことがあります。

例えば、手形などの不渡りによる銀行停止処分を受けると、金融機関からの借入れが困難となるため、資金繰りが絶たれ、支払不能等になることがあります。

もっとも、単に支払不能等になっただけで会社などがなくなるわけではありません。

法的手続をとらないまま、経済的に破綻している会社などを存続させるということもあります。これが事実上の倒産と呼ばれる状態です。

要するに、悪い言い方をすれば、負債を放っておくという状態が、事実上の倒産ということです。

しかし、けじめをつけるのであれば、やはり法的手続をとって正式に法人などを清算させる方がよいことは間違いないでしょう。

清算型倒産と再建型倒産

前記のとおり、法律上の倒産には、破産・特別清算・民事再生・会社更生といった法的整理と、裁判外で行われる私的整理があります。この法律上の倒産は、さらに「清算型」と「再建型」に区別できます。

清算型の倒産とは、資産も負債も、債務者が法人であればその法人自体も清算するタイプの倒産手続です。破産手続や特別清算手続きがこれに当たります。

他方、再建型の倒産とは、一定の資産を残しながら、負債を整理することにより、債務者を存続させつつ経済的な再建を図っていくタイプの倒産手続です。民事再生や会社更生がこれに当たります。

私的整理も、基本的には再建型の倒産に含まれます。ただし、私的整理には、清算型の私的整理も存在します。

「倒産」と「破産」

「倒産」という用語は、「破産」という用語と混同されがちです。実際、多くの人は、倒産=破産と考えていると思われます。しかし、厳密に言うと、両者は異なるものと考えるべきです。

前記のとおり、倒産の手続には、破産手続のほかにも、特別清算、民事再生や会社更生、または私的整理などがあります。

したがって、「破産」は、たしかに「倒産」に含まれますが、「破産」=「倒産」ではありません。

破産を含めて、広く経済的破綻によって支払不能等の状態になること一般を倒産と考えるべきであるということです。

「倒産」と「廃業」

「倒産」という用語と混同されがちな用語として「廃業」という用語もあります。しかし、「倒産」=「廃業」ではありません。

廃業とは、事業を廃止することです。

しかし、倒産したからと言って、事業が必ず廃止されるとは限りません。民事再生などのように事業を継続しながら再建を図っていくタイプの倒産手続もあります。

また、廃業には、さまざまな原因があります。負債により経済的に破綻して廃業することもあれば、経済的理由でなく、事業目的の完了や後継者の不在などの理由から廃業することもあるでしょう。

これに対して、倒産は、さまざまな定義付けができるとしても、理由はやはり経済的な破綻に限られます。

したがって、「倒産」により「廃業」することはあるかもしれませんが、「倒産」=「廃業」とまでは言えません。

タイトルとURLをコピーしました