
「倒産」と「破産」は同じものとして扱われがちですが、厳密に言えば、両者は異なる概念です。「倒産」は「破産」を含む大きな概念で、「倒産」というカテゴリーの中の1つとして「破産」が含まれています。
また、「倒産」は、法律上統一的な定義のない講学上の概念で、実際には倒産法という名称の法律や倒産手続という名称の法的手続はありません。他方、「破産」は現実に存在する法制度です。破産法とそれに基づく破産手続という現実に存在する法律・法的手続があります。
「倒産」と「破産」
「倒産」と「破産」という2つの法律用語は、よく同じものとして扱われています。しかし、厳密に言うと、「倒産」と「破産」は別の意味を持つ概念です。
大まかに言えば、「倒産」は「破産」を含む大きな概念で、「倒産」というカテゴリーの中の1つに「破産」があります。
例えば、倒産に関する法律体系を講学上「倒産法」と呼んでいますが、複数ある倒産法のうちの1つが「破産法」です。
同様に、倒産に関する法的手続を講学上「倒産手続」と呼んでいますが、複数ある倒産手続のうちの1つが「破産手続」です。
したがって、「倒産」しているので「破産」したということはもちろんありますが、「倒産」しているけれども「破産」はしていない、ということもあり得るわけです。
倒産とは
「倒産」という用語は、一部の法律(中小企業倒産防止共済法など)で使われているものの、実は、法律上統一的な定義のない講学上の用語です。
実際、「倒産法」という名称の法律はありませんし、「倒産手続」という名称の法的手続もありません。
あえて定義するならば、倒産とは、会社などの法人や個人(自然人)が経済的に破綻し、弁済期にある債務を一般的継続的に弁済できなくなること、またはそのおそれがある状態になること、と定義できるでしょう。
法人・会社が倒産した場合、「経営破綻」と言われることもあります。
講学上、倒産法や倒産手続は、裁判所の手続によって行われる「法的整理」と裁判外で行われる「私的整理」に分類できます。
また、最終的に債務者の財産をすべて清算してしまう清算型と、財産すべては清算せずに、債務の減額等によって事業などの再生を図る再建型の2種類に分類されることもあります。
具体的な倒産法・倒産手続としては、破産法に基づく破産手続、会社法に基づく特別清算手続、民事再生法に基づく再生手続、会社更生法に基づく更生手続などがあります。
つまり、「倒産」といってもさまざまな手続があるのです。必ずしも「倒産」=「破産」ではありません。
「倒産」にはもちろん「破産」も含まれますが、「倒産」であっても、「破産」ではなく、民事再生などであることもあり得るということです。
破産とは
講学上の概念である「倒産」と異なり、「破産」は実際に存在する法制度です。
具体的に言うと、「破産手続」とは、裁判所によって選任された破産管財人が、破産者の財産を管理・換価処分して、それによって得た金銭を各債権者に対して弁済または配当する手続です。
そして、この破産手続を規律する法律が「破産法」です。
前記のとおり、倒産法・倒産手続のうちの1つが、破産法に基づく破産手続です。破産法に基づく破産手続は、倒産法の体系において最も基本的な法律・手続と考えられています。
倒産法体系における分類でいえば、破産法に基づく破産手続は、清算型の法的整理ということになります。
「倒産」の一類型が「破産」であるということです。


倒産・破産と廃業
「倒産」や「破産」と同じように使われてしまいがちな用語として「廃業」という用語があります。「倒産」と「破産」が異なる概念であるように、この「廃業」は、「倒産」とも「破産」とも異なる概念です。
「廃業」とは、事業を廃止することです。
廃業では、「倒産」またはそれに含まれる「破産」のように、経済的に破綻し、弁済期にある債務を一般的継続的に弁済できなくなることなどは、前提とされていません。
経済的に破綻して倒産し、破産手続などをとることによって廃業することもあれば、経済的に全く健全でも、何らかの理由で廃業することもあるでしょう。
「廃業」=「倒産」、「廃業」=「破産」とは限らないということです。
なお、経済的に破綻していない法人・会社が廃業するための法的手続としては、清算手続があります。