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破産手続開始原因となる支払不能とは?

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破産手続開始原因の1つである「支払不能」とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない客観的状態にあることをいいます(破産法2条11号)。

破産手続開始原因となる支払不能とは

破産法 第2条

  • 第11項 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成18年法律第108号)第2条第9項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

破産法 第15条

  • 第1項 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第30条第1項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
  • 第2項 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

破産法 第16条

  • 第1項 債務者が法人である場合に関する前条第1項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
  • 第2項 前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。

破産法 第30条

  • 第1項 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、破産手続開始の決定をする。
  • 第1号 破産手続の費用の予納がないとき(第23条第1項前段の規定によりその費用を仮に国庫から支弁する場合を除く。)。
  • 第2号 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
  • 第2項 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。

破産手続は、裁判所による破産手続開始決定によって開始されます。

しかし、破産手続開始の申立てをすれば常に開始決定がされるわけではありません。破産手続開始の要件を満たしていなければ開始決定はされません。

破産手続開始要件には形式的要件実体的要件があります。この実体的要件として、債務者に「破産手続開始原因」があることが挙げられています(破産法30条1項)。

そして、破産手続開始原因があるというためには、債務者が支払不能または債務超過でなければなりません。

この破産手続開始原因の1つである「支払不能」とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない客観的状態にあることをいいます(破産法2条11項)。

なお、この支払不能の定義は、通常の法人破産や個人破産の場合の支払不能の定義です。

信託財産破産の場合の支払不能は、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない客観的状態のことをいうとされています。

破産手続開始原因となる支払不能といえるためには、以下の要件を満たしている必要があります。

支払不能の要件
  • 支払能力を欠いていること
  • 弁済期にある債務を弁済できないこと
  • 一般的かつ継続的に債務を弁済することができないこと
  • 客観的にみて上記の状態であること

また、支払不能といえるかどうかの判断は、破産手続開始決定時点を基準時として判断されます。

支払能力を欠くこと

破産手続開始原因となる支払不能であると認められるためには、債務者が支払能力を欠いていることが必要となります。

支払能力とは、金銭など財産上の給付を履行しうる債務者の経済的力量のことをいいます。

支払能力を欠いているといえるかどうかは、単に財産の有無によって評価されるわけではなく、財産のほか、債務者の信用・労力・技能なども考慮して評価することになります。

したがって、財産が無い場合でも、債務者の信用や労力によって、さほど困難なく弁済のための資金調達が可能であれば、支払能力を欠いているとまではいえません。

逆に、債務者に財産があっても、換価するのが困難な財産であるため、その財産を支払いに回すことができないような場合には、支払能力を欠いていると評価されることがあります。

弁済期にある債務を弁済できないこと

破産手続開始原因となる支払不能であると認められるためには、債務者が弁済期にある債務を弁済できないことが必要となります。

支払不能かどうかは、すでに弁済期が到来している債務を弁済できるかどうかによって判断されます。

したがって、まだ弁済期が到来していない将来の債務について、支払いをすることができなくなると見込まれるとしても、すでに弁済期が到来している債務を支払うことができるのであれば、支払不能には当たらないことになります。

また、あくまで債務を「弁済できない」ことが求められますので、債務を「弁済しない」ことに正当な理由があるような場合には、弁済できないというわけではないので、やはり支払不能には当たらないことになります。

一般的かつ継続的に債務を弁済できないこと

破産手続開始原因となる支払不能と認められるためには、債務者が一般的かつ継続的に債務を弁済できないことが必要となります。

一般的に弁済できないというのは、すべての債務を弁済するだけの資力が不足しているために、すべての債務を通常どおりに支払うことができないということです。

したがって、一部の債権については全額支払うことができたとしても、全体的資力不足のために、その他の債権について通常どおりの支払いができないというような場合には、一般的弁済ができない状態にあるといえます。

他方、一部の債権について支払いができなかったとしても、それが全体的資力不足によるものではない場合には、一般的弁済ができない状態にあるとはいえないことになります。

また、一般的に弁済できないだけでなく、継続的に債務を弁済できないことも求められます。

継続的に弁済できないというのは、突発的な出来事による資力の喪失でないことを意味します。

したがって、単に一時的な資金不足にすぎず、今月分だけは一般的に支払えないものの、来月からは通常通り一般的に支払えるようになるというような場合は、支払不能に当たりません。

客観的状態であること

破産手続開始原因となる支払不能といえるためには、「債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない」という状態が客観的状態であることが必要とされます。

つまり、債務者等が主観的には弁済可能であると判断していたとしても、客観的にみて支払能力を欠くために一般的継続的弁済が不可能であると判断されれば、支払不能であると評価されることになります。

逆に、債務者等が主観的には弁済ができないと判断していたとしても、客観的にみれば支払能力があり、または一般的継続的弁済が可能であると判断されれば、支払不能とは評価されません。

とはいえ、支払不能という客観的状態を外部から判断するのは困難であるということも少なくありません。

そこで、破産手続開始の申立てを行う際に支払不能の証明を容易にするために、支払停止があった場合には支払不能であったものと推定できるものとされています(破産法15条2項)。

支払停止とは、「債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為」のことをいいます(最一小判昭和60年2月14日集民144号109頁)。

支払停止自体は破産手続開始原因ではありませんが、支払停止は破産手続開始原因である支払不能を推定させる事情とされており、実際、支払不能の判断において重要な意味を有しています。

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