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破産手続開始の申立てとは?

破産法の画像
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破産手続は、破産裁判所による破産手続開始決定によって開始されます。破産手続を開始してもらうためには、管轄の地方裁判所に対して法定の記載事項を記載した破産手続開始の申立書を提出する方式によって「破産手続開始の申立て」をする必要があります。

申立てがされると、裁判所において破産手続開始要件の審査が行われ、要件を満たしていると判断された場合に破産手続開始決定が発せられることになります。

破産手続開始の申立てとは

破産手続は、裁判所の破産手続開始決定によって開始されます(破産法30条1項)。

もっとも、ある会社などの法人や個人(自然人)が支払不能または債務超過になると、当然に破産手続開始決定がされるわけではありません。

破産手続も私人間の法律関係に関する裁判手続ですから、私的自治の原則が妥当します。

そこで、破産手続開始決定は、地方裁判所に対して「破産手続開始の申立て」がなされた場合に開始されるのが原則とされています。

破産手続の「申請」と言われることもありますが、正式な法律用語としては「破産手続開始の申立て」です。

ただし、牽連破産の場合や一定の公益団体・認定地縁団体等が支払不能等になった場合には、例外的に、申立てがなくても裁判所が職権で破産手続を開始できるとされています。

破産手続開始の申立権者

前記のとおり、破産手続開始の申立てがなければ破産手続は開始されません。とはいえ、誰でも破産手続開始を申し立てることができるわけではありません。

誰が破産手続開始を申し立てることができるのかについては、破産法等で定められています。この破産手続開始を申し立てることができる資格を有する者のことを「破産申立権者」といいます。

破産手続開始申立権者としては、以下の者がいます。

破産手続開始の申立権者
  • 債権者
  • 債務者
  • 準債務者(法人破産の場合。法人の理事、会社の取締役、合同会社の社員等)
  • 監督官庁(ただし、銀行等一部の法人の破産の場合のみ)

債権者による申立て(債権者破産申立て)

破産手続開始の申立ては、債権者もすることができます(破産法18条1項)。債権者による破産手続開始の申立てのことを「債権者破産申立て」と呼んでいます。

債務者による申立て(自己破産申立て)

破産手続開始の申立ては、債務者もすることができます(破産法18条1項)。債務者自身が自ら申立てをすることから「自己破産申立て」と呼ばれています。

会社など法人の自己破産の場合における債務者とは、その法人・会社のことです。債務者である法人・会社の名義で申立てをする場合が、法人・会社の自己破産ということになります。

準債務者による申立て(準自己破産申立て)

法人破産においては、債権者や債務者(法人)だけでなく、当該法人の理事や取締役個人も申立権者とされています。

債務者である法人・会社に準ずるものであることから、これらの申立権者は「準債務者」と呼ばれます。そして、この準債務者による申立てのことを「準自己破産申立て」と呼んでいます。

具体的には、法人の理事、株式会社・相互会社の取締役、合同会社・合資会社の業務執行社員、清算人などが、準債務者としての申立権者に該当します(破産法19条1項、2項)。

申立てをするのは取締役等の個人名義で行いますが、破産するのはあくまで債務者である法人・会社です。申立てをした取締役等が破産するわけではありません。

監督官庁による申立て

法人破産・会社破産における申立権者は、上記の債権者・債務者・準債務者ですが、例外的に一部の法人については、その法人の監督官庁も破産手続開始を申し立てることができるとされています。

具体的には、銀行、信用金庫、証券会社、保険会社、農協等については、その監督庁も破産手続開始の申立権者になるものとされています(金融機関等の更生手続の特例等に関する法律490条1項、農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律3条1項等)。

破産手続開始の申立義務者

破産申立権者は、破産手続開始を申し立てる権利を有する者のことですが、これとは別に、破産手続開始の申し立てをしなければならない義務を負う者もいます。これを「破産申立義務者」といいます。

一般社団法人・一般財団法人の清算人、清算株式会社・清算持分会社の清算人は、法人の財産で債務を完済することが出来なくなった場合、破産手続開始の申立てをしなければならない義務を負うとされています。

また、公益性の高い法人についても、債務超過の状態に陥った場合には、その法人の理事等は破産手続開始の申し立てをしなければならない義務を負うとされていることがあります。

破産手続開始の申立ての方式

破産手続開始の申立ては、最高裁判所規則(破産規則)で定める事項を記載した書面でしなければならないとされています(破産法20条1項)。

この破産規則で定める事項を記載した書面のことを「破産手続開始の申立書」 と呼んでいます。

そして、この破産手続開始の申立書に必要な資料を添付した上で、管轄の裁判所に提出して破産手続開始の申立てを行う必要があります。

また、破産手続開始の申立てに際しては、手数料を納付する必要もあります。実務上は、申立ての手数料のほか、官報公告費用や郵券の予納も必要となります。

破産手続開始の申立書の記載事項

最高裁判所規則(破産規則)で定める事項としては、以下のものがあります(破産規則13条1項)。

破産手続開始の申立書の記載事項(破産規則13条1項)
  • 申立人の氏名・名称・住所、その法定代理人の氏名・住所
  • 債務者の氏名・名称・住所、その法定代理人の氏名・住所
  • 申立ての趣旨
  • 破産手続開始の原因となる事実

上記のほか、以下の事項も申立書への記載が必要とされています(破産規則13条2項)。

破産手続開始の申立書の記載事項(破産規則13条2項)
  • 債務者の収入・支出の状況、資産・負債の状況
  • 破産手続開始の原因となる事実が生ずるに至った事情
  • 債務者の財産に関してされている他の手続・処分で申立人に知れているもの
  • 債務者について現に係属する破産事件・再生事件・更生事件があるときは、当該事件が係属する裁判所・当該事件の表示
  • 関連債務者について破産事件・再生事件・更生事件があるときは、当該事件が係属する裁判所、当該事件の表示、関連債務者の氏名・住所
  • 債務者について外国倒産処理手続があるときは、当該外国倒産処理手続の概要
  • 債務者の使用人その他の従業者の過半数で組織する労働組合があるときは、当該労働組合の名称・主たる事務所の所在地・組合員の数・代表者の氏名
  • 債務者の使用人その他の従業者の過半数を代表する者がいるときは、当該者の氏名・住所
  • 債務者について営業許可機関があるときは、その機関の名称・所在地
  • 申立人・申立代理人の郵便番号・電話番号・FAX番号

破産手続開始の申立書の添付資料

破産手続開始の申立書には、最高裁判所規則で定める事項を記載した「債権者一覧表」も添付して提出する必要があります(破産法20条2項本文、破産規則14条1項)。

破産法20条2項但し書きには「ただし、当該申立てと同時に債権者一覧表を提出することができないときは、当該申立ての後遅滞なくこれを提出すれば足りる。」と規定されていますが、実務では、申立書に添付して提出するのがほとんど必須とされています。

また、債権者一覧表のほか、以下の書類・資料の申立書への添付も必要とされています(破産規則14条3項)。

法人破産の場合の添付書類
  • 法人の登記事項証明書
  • 破産手続開始の申立ての日の直近において法令の規定に基づき作成された債務者の貸借対照表・損益計算書
  • 債務者の財産目録
個人破産の場合の添付書類
  • 住民票の写し(本籍の記載が省略されていないもの)
  • 破産手続開始の申立ての日の直近において法令の規定に基づき作成された債務者の貸借対照表・損益計算書
  • 債務者の破産手続開始の申立て前1か月間の収入・支出を記載した書面
  • 確定申告書、源泉徴収票写しその他の債務者の収入の額を明らかにする書面
  • 債務者の財産目録

これらの書類に限らず、裁判所は、申立てに際して、「破産手続開始の決定がされたとすれば破産債権となるべき債権及び破産財団に属すべき財産の状況に関する資料その他破産手続の円滑な進行を図るために必要な資料の提出を求めることができる」とされています(破産規則15条)。

実務では、上記破産法・破産規則に定められた添付書類だけでなく、報告書や各種の疎明資料の添付を求められるのが通常です。

破産手続開始の申立ての管轄裁判所

法人・会社の破産手続開始の申立ては、どこの裁判所に行ってもよいというものではありません。どこの裁判所に申立てをするのかは、破産法によって定められています。

まず、破産事件の事物管轄は、地方裁判所にあるとされています。したがって、地方裁判所に申し立てる必要があります。

また、破産事件の土地管轄は、原則として、当該法人の主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所です。

例えば、主たる営業所が東京都千代田区にあれば、管轄の裁判所は東京地方裁判所ということになります。

外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄裁判所になります。

営業所がない場合には、普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄裁判所です。

具体的には、個人破産の場合は、その個人の住所地です。法人破産の場合は、法人の代表者や主たる業務担当者の住所を管轄する地方裁判所です。

なお、実際に営業所が無い場合でも、登記簿上の本店所在地を管轄する地方裁判所に申立てをすることができます。

それでも管轄が決まらない場合には、債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄裁判所になります。

破産手続開始の申立ての手数料

破産手続開始の申立てに当たっては、手数料を裁判所に納付しなければなりません。手数料は、現金ではなく、収入印紙によって納付します。

破産手続開始申立ての手数料は、以下のとおりです(民事訴訟費用等に関する法律)。

破産手続開始の申立ての手数料
  • 債権者申立ての場合 2万0000円
  • 自己破産・準自己破産申立ての場合 1000円

なお、実務上は、破産手続開始の申立ての際に、手数料のほか、郵券や官報公告費用の予納もしなければなりません。

また、個人の自己破産の場合には、破産手続開始の申立てのほか、免責許可申立ての手数料も必要となります。免責許可申立ての手数料は500円です。

申立てから開始決定までの手続

破産手続開始の申立てがなされると、裁判所において、破産手続を開始するための法的要件を満たしているかどうかの審査が開始されます。

審査は、提出された破産手続開始の申立書およびその添付資料をもとに行われます。

ただし、裁判所によっては、書面審査にとどまらず、裁判官による申立人や債務者に対する審尋(破産審尋)が行われ、そこで事情聴取がされることもあります。

東京地方裁判所本庁の場合、弁護士が代理人であるときは、申立書の提出と同日(または3日以内)に、裁判官と代理人による即日面接が行われ、そこで要件の審査がなされるというスピーディな運用になっています(大規模事件の場合には、別途、審尋が行われることもあります。)。

審査の結果、申立ての方式を遵守していない、申立書の記載や添付書類に不足があるなど、形式的要件を充たしていないと判断された場合、裁判所から申立人に対して申立書等についての不備の補正が求められます。

補正できないほどの重大な不備があった場合や補正に応じなかった場合には、申立ては却下されます。

形式的要件を満たしていても、破産手続開始原因がない、破産障害事由があるなど、実体的要件を満たしていない場合には、申立ては棄却されます。

形式的要件・実体的要件いずれも満たしていると判断された場合には、裁判所によって破産手続開始決定がなされ、破産手続が開始されることになります。

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