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請負人が破産すると仕掛中の請負工事や請負仕事はどうなるのか?

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。

破産法の画像
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仕掛中の請負工事が残っている状態で請負人が破産手続開始を申し立てる場合、注文者または破産管財人によって契約が解除されると、仕掛中の工事は未完成のまま、請負契約は終了することになります。

解除されない場合には、破産管財人が、破産者に指示または破産者の元従業員を雇用するなどして、工事を完成させることになります。

請負人の破産手続開始時に請負工事が未了の場合

事業活動において、請負契約を締結しているという場合は少なくありません。例えば、建設・建築業者などであれば、建設・建築を請け負うことを業務としていますし、製造業なども物品の製造を請け負っています。

言うまでもなく、請負人は、仕事を完成させる法的義務を負っています。

しかし、請け負っている仕事が完成する前に、資金繰りが間に合わないなどの事情から、請負人が破産手続開始を申し立てる場合があります。

もちろん、請負工事をすべて完成させた上で破産手続開始を申し立てる方が、注文者にも負担を課さずに済みますし、破産手続も円滑に進むことは間違いありません。

しかし、そうであるからといって、仕掛中の仕事が残っているために破産手続の開始が認められないということはありません。仕掛中の請負工事未了のまま破産手続開始を申し立てることもあります。

この場合、仕事が完成されることはないということであれば、相手方である注文者は、新たに請負人を探さなければならないなど大きな負担を負うことになります。請負工事の規模によっては、著しく大きな負担となる可能性もあるでしょう。

そのため、仕掛中の請負工事未了のまま請負人について破産手続が開始された場合、その未完成の仕事をどのように処理すべきかは大きな問題となることがあります。

破産手続における仕掛中の請負工事の処理

破産法 第53条

  • 第1項 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。
  • 第2項 前項の場合には、相手方は、破産管財人に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか、又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、破産管財人がその期間内に確答をしないときは、契約の解除をしたものとみなす。
  • 第3項 前項の規定は、相手方又は破産管財人が民法第631条前段の規定により解約の申入れをすることができる場合又は同法第642条第1項前段の規定により契約の解除をすることができる場合について準用する。

請負人について破産手続が開始された場合であっても、請負契約は当然に終了するわけではありません。破産管財人または注文者によって契約が解除されるまで契約は継続します。

注文者は、仕事が完成するまでの間であればいつでも、破産管財人に対して損害賠償を支払って契約を解除できます(民法641条)。

もっとも、請負人の破産によって、仕事が完成しない可能性があるという不利益を被っている上に、損害賠償を支払ってまで契約を解除するということはあまり考えられません。

したがって、実際には、破産管財人が契約を解除することによって請負契約を終了させるのが一般的でしょう。

ただし、破産管財人は、常に請負契約を解除できるわけではありません。

「当該請負契約の目的である仕事が破産者以外の者において完成することのできない性質のものであるため、破産管財人において破産者の債務の履行を選択する余地のないとき」には、破産管財人は、破産法53条1項に基づいて請負契約を解除することはできないと解されています(最高裁判所第一小法廷昭和62年11月26日判決)。

破産管財人が契約を解除できない場合、または、契約解除は可能であるけれどもあえて請負契約の履行請求を選択した場合には、当該請負契約は存続することになります。

破産管財人が、契約の解除と履行請求のいずれを選択するかは、破産管財人が、破産財団の状況、工事の内容や進行具合、報酬回収の可能性や時期等を考慮して判断されることになります。

請負契約が解除された場合

請負契約が注文者または破産管財人によって解除された場合、請負契約は消滅します。したがって、仕掛中の工事は完成されないまま終了することになります。

請負工事が未完成なわけですから、注文者は新たに請負人を探すなどして工事を完成させることになります。その際に発生した、追加工事費用などの損害賠償請求権は破産債権となり、配当に加わることになります。

もっとも、契約解除までの間に部分的にでも仕事が完成している場合には、破産管財人は、注文者に対して、その出来高に応じた報酬を請求し、それを破産財団に組み入れます。

請負契約が継続される場合

注文者も破産管財人も契約を解除しなかった場合、請負契約は破産手続開始後も継続されます。

この場合、破産管財人は仕事を完成させなければなりません。そこで、破産者に指示したり、破産者の元従業員を雇用したり、または別の会社に注文するなどして、仕掛中の工事を完成させることになります。

仕事が完成した場合、破産管財人は、注文者に対して、請負報酬を請求し、それを破産財団に組み入れます。

破産手続開始を申し立てる場合の準備

前記のとおり、請負工事が未完成のまま請負人が破産をすると、破産手続においてさまざまな処理や対応が必要となってきます。また、注文者には大きな不利益を被らせることになります。

したがって、仕掛中の工事はできる限り完成をさせてから破産手続を開始させるのが望ましいことは言うまでもありません。

しかし、事情によっては、やむを得ず、仕掛中の工事の状態のままで破産手続開始を申し立てることもあります。

その場合には、破産管財人においてすみやかに契約解除か履行請求かの判断ができるように、仕掛中の工事の内容や工事の完成の程度が分かる資料等を準備しておく必要があります。

例えば、請負契約書、請負工事の工程表・施工図・計画書・材料資材の一覧等の関係書類、現場写真、費用の見積書等をあらかじめ用意しておく必要があるでしょう。

この記事は、法トリ(元弁護士)が書いています。
この記事が参考になれば幸いです。

破産法と資格試験

倒産法は、司法試験(本試験)や司法試験予備試験の選択科目とされています。この倒産法の基本となる法律が、破産法です。

民事再生法など他の倒産法は破産法をもとにした法律した法律ですので、破産法を理解していることが前提となってきます。そのため、学習する順番としては、まずは破産法からでしょう。

もっとも、出題範囲が限られているとはいえ、破産法もかなりのボリュームです。効率的に試験対策をするには、予備校や通信講座などを利用するのもひとつの方法でしょう。

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参考書籍

破産法を深く知りたい方やもっと詳しく勉強したい方のために、破産法の参考書籍を紹介します。

破産法・民事再生法(第5版)
著者:伊藤 眞 出版:有斐閣
倒産法研究の第一人者による定番の体系書。民事再生法と一体になっているので分量は多めですが、読みやすいです。難易度は高めですが、第一人者の著書であるため、信頼性は保証されています。

条解破産法(第3版)
著者:伊藤眞ほか 出版:弘文堂
条文ごとに詳細な解説を掲載する逐条の注釈書。破産法の辞書と言ってよいでしょう。破産法の条文解釈に関して知りたいことは、ほとんどカバーできます。持っていて損はありません。金額面を除けば、誰にでもおすすめです。

破産実務Q&A220問
編集:全国倒産処理弁護士ネットワーク 出版:きんざい
破産実務を取り扱う弁護士などだけでなく、裁判所でも使われている実務書。本書があれば、破産実務のだいたいの問題を知ることができるのではないでしょうか。

司法試験・予備試験など資格試験向けの参考書籍としては、以下のものがあります。

倒産処理法入門(第6版)
著者:山本和彦  出版:有斐閣
倒産法の入門書。「入門」ではありますが、ボリュームはそれなりにあります。倒産法全体を把握するために利用する本です。

倒産法講義
著者:野村剛司ほか 出版:日本加除出版
こちらも法学大学院生や司法試験・予備試験受験生向けに書かれた教科書。著者が実務家であるため、実務的な観点が多く含まれていて、手続をイメージしやすいメリットがあります。

倒産法(第3版)伊藤真試験対策講座15
著者:伊藤塾 出版:弘文堂
いわゆる予備校本。予備校本だけあって、実際の出題傾向に沿って内容が絞られており、分かりやすくまとまっています。学習のスタートは、予備校本から始めてもよいのではないでしょうか。

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