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破産手続開始前における債務者財産の散逸防止のための保全処分とは?

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破産手続開始の申立てから破産手続開始決定までの間に、債務者の財産が散逸するのを防止するため、破産法は、破産手続開始前における債務者財産散逸防止のための保全処分を用意しています。

破産手続開始前における債務者財産散逸防止のための保全処分としては、①債務者財産に関する処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分(破産法28条1項)と②保全管理命令の制度(破産法91条以下)があります。

破産手続開始前における債務者財産散逸防止のための保全処分

裁判所に破産手続を開始してもらうためには、破産手続開始の申立てをする必要があります。

破産手続開始の申立て後、裁判所の審査を経て破産手続が開始されると、破産者の財産管理処分権は裁判所によって選任された破産管財人に専属することになり、破産者自身であっても財産を処分することはできなくなります。

しかし、破産手続開始の申立てから破産手続開始決定までの間には、若干のタイムラグがあります。この間は破産管財人がまだ選任されていません。

そのため、このタイムラグの間に、債務者の財産が散逸してしまうおそれがあります。

例えば、債務者が債権者から厳しい取り立てを受けて財産を処分してしまったり、財産を隠匿するために第三者に譲渡してしまうなどの可能性があります。

債務者の財産は、破産手続開始後、破産財団として管理・換価処分され、債権者に対する弁済または配当の原資となりますから、財産の散逸は極力防止しなければなりません。

そこで、破産手続開始の申立てから破産手続開始決定までの間に破産者の財産が散逸することを防ぐため、破産法では、債務者財産散逸防止のための保全処分が用意されています。

具体的には、以下の債務者財産散逸防止のための保全処分が用意されています。

債務者財産散逸防止のための保全処分

債務者の財産に関する保全処分

破産法 第28条

  • 第1条 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合には、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、その財産の処分禁止の仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。
  • 第2条 裁判所は、前項の規定による保全処分を変更し、又は取り消すことができる。
  • 第3条 第1項の規定による保全処分及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
  • 第4条 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。
  • 第5条 第3項に規定する裁判及び同項の即時抗告についての裁判があった場合には、その裁判書を当事者に送達しなければならない。この場合においては、第10条第3項本文の規定は、適用しない。
  • 第6条 裁判所が第1項の規定により債務者が債権者に対して弁済その他の債務を消滅させる行為をすることを禁止する旨の保全処分を命じた場合には、債権者は、破産手続の関係においては、当該保全処分に反してされた弁済その他の債務を消滅させる行為の効力を主張することができない。ただし、債権者が、その行為の当時、当該保全処分がされたことを知っていたときに限る。

破産手続開始前に債務者の財産散逸を防止するための保全処分の1つに「債務者の財産に関する保全処分」があります(破産法28条1項)。

すなわち、債務者の財産に関する保全処分とは、利害関係人の申立てによりまたは職権で、裁判所が、債務者の財産に関して、処分禁止の仮処分その他の必要な処分をするよう命じることをいいます。

例えば、債務者の特定の財産について、仮差押え、処分禁止の仮処分、占有移転禁止の仮処分などを命じることができます。

保全管理命令

破産法 第91条

  • 第1項 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、債務者(法人である場合に限る。以下この節、第148条第4項及び第152条第2項において同じ。)の財産の管理及び処分が失当であるとき、その他債務者の財産の確保のために特に必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより又は職権で、破産手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、債務者の財産に関し、保全管理人による管理を命ずる処分をすることができる。
  • 第2項 裁判所は、前項の規定による処分(以下「保全管理命令」という。)をする場合には、当該保全管理命令において、一人又は数人の保全管理人を選任しなければならない。
  • 第3項 前二項の規定は、破産手続開始の申立てを棄却する決定に対して第33条第1項の即時抗告があった場合について準用する。
  • 第4項 裁判所は、保全管理命令を変更し、又は取り消すことができる。
  • 第5項 保全管理命令及び前項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
  • 第6項 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

破産手続開始前に債務者の財産散逸を防止するための保全処分の1つに「保全管理命令」があります(破産法91条以下)。

すなわち、保全管理命令とは、利害関係人の申立てまたは職権で、裁判所が、債務者の財産に関して、保全管理人による管理をするように命じることをいいます。

保全管理命令がなされると、破産手続開始前であっても、債務者は財産の管理処分権をはく奪され、裁判所によって選任された保全管理人に財産の管理処分権が付与されます。

そして、保全管理命令発令から破産手続開始までの間は、その保全管理人が、債務者の財産を管理・保全することになります。

つまり、破産手続開始後に破産管財人が破産者の財産の管理処分権を与えられるのと同様の効果を破産手続開始前に発生させるのが、保全管理命令です。

ただし、保全管理命令が発令されるためには、債務者による財産の管理・処分が失当であるとき、または、その他債務者の財産の確保のために特に必要があるときに限られます(破産法91条1項)。

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