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破産手続開始原因とは?

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「破産手続開始原因」がなければ、破産手続は開始されません。破産手続開始原因とは、債務者について、破産手続を開始する必要があると認められる財産状態の悪化の事由のことをいいます

具体的には、「支払不能」と「債務超過」の2つの破産手続開始原因があります。法人破産の場合には、支払不能と債務超過のいずれも破産手続開始原因になります。個人破産の場合には、支払不能のみが破産手続開始原因となります。

破産手続開始原因とは?

破産法 第30条

  • 第1項 裁判所は、破産手続開始の申立てがあった場合において、破産手続開始の原因となる事実があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、破産手続開始の決定をする。
  • 第1号 破産手続の費用の予納がないとき(第23条第1項前段の規定によりその費用を仮に国庫から支弁する場合を除く。)。
  • 第2号 不当な目的で破産手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき。
  • 第2項 前項の決定は、その決定の時から、効力を生ずる。

破産手続は、裁判所の破産手続開始決定によって開始されます。

もっとも、破産手続開始の申立てをすれば当然に開始されるわけではありません。この破産手続開始決定も裁判所による裁判ですから、一定の法律要件を充たしていなければ決定は出されません。

破産手続開始の要件には形式的要件実体的要件があります。この実体的要件の1つとして、「債務者に破産手続開始原因があること」が求められます(破産法30条1項柱書)。

破産手続開始原因とは、債務者について、破産手続を開始する必要があると認められる財産状態の悪化の事由のことをいいます

具体的には、「支払不能」と「債務超過」の2つの破産手続開始原因があります。

そもそも破産手続は、債務者の財産状況が悪化したために通常の支払いができなくなり、債権者が十分な満足を得られなくなったために、債務者の財産を換価処分して、完全な満足は得られないとしても、各債権者に公平に配当・弁済することによって、債権債務の清算をするという手続です。

したがって、財産状況が悪化しているとはいえない債務者についてまで破産手続の開始を認めるべきではありませんし、その必要もありません。

そこで、破産手続を開始するためには、破産手続開始原因が必要とされているのです。

破産手続開始原因となる「支払不能」

破産法 第2条

  • 第11項 この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成18年法律第108号)第2条第9項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

破産法 第15条

  • 第1項 債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第30条第1項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。
  • 第2項 債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する。

破産法 第16条

  • 第1項 債務者が法人である場合に関する前条第1項の規定の適用については、同項中「支払不能」とあるのは、「支払不能又は債務超過(債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態をいう。)」とする。
  • 第2項 前項の規定は、存立中の合名会社及び合資会社には、適用しない。

上記破産法15条1項のとおり、破産手続開始原因の1つに「支払不能」があります。

支払不能は、債務者が個人(自然人)であっても法人であっても破産手続開始原因となります(なお、相続財産破産の場合には、支払不能は破産手続開始原因になりません。)。

支払不能とは、債務者が支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものについて、一般的かつ継続的に弁済をすることができない客観的状態にあることをいいます(破産法2条11項)。

支払不能と認められるためには、以下の要件を満たしている必要があります。

支払不能の要件
  • 支払能力を欠いていること
  • 弁済期にある債務を弁済できないこと
  • 一般的かつ継続的に債務を弁済することができないこと

これらの要件は客観的に判断されます。

したがって、債務者自身は弁済できると考えていても、客観的にみて一般的かつ継続的な弁済は不能であると判断されれば、支払不能であると判定されます。

逆に、債務者自身は弁済できないと考えていても、客観的にみれば弁済はまだ可能であると判断されれば、支払不能ではないと判断されることになります。

支払不能を推定させる「支払不能」

前記破産法15条2項によれば、「債務者が支払を停止したときは、支払不能にあるものと推定する」ものと規定されています。この「債務者が支払を停止したとき」のことを「支払停止」といいます。

具体的に言うと、支払停止とは、「債務者が資力欠乏のため債務の支払をすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為」のことをいいます(最一小判昭和60年2月14日集民144号109頁)。

支払停止は、破産手続開始原因ではありません。しかし、支払停止が生じた場合には、破産手続開始原因である支払不能であることが推定されることになります。

支払停止として典型的な場合としては、債務者代理人弁護士から各債権者に対して支払いを停止する旨の通知がされた場合や、手形不渡りにによって銀行取引停止処分がされた場合などが挙げられます。

破産手続開始原因となる「債務超過」

破産手続開始原因には、支払不能のほかに「債務超過」があります(破産法16条1項)。

この債務超過は、支払不能と異なり、債務者が法人(ただし、存立中の合名会社・合資会社の場合は除きます。)である場合(および相続財産破産の場合)に破産手続開始原因になります。

債務者が個人(自然人)である場合には、債務超過は破産手続開始原因になりません(したがって、個人の破産の場合は、支払不能だけが破産手続開始原因になります。)。

債務超過とは、債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態のことをいいます。より詳しく言うと、債務額の総計が資産額の総計を超過している客観的状態にあるということです。

会社など法人であれば、決算書の貸借対照表や損益計算書などで赤字になっていれば、債務超過と判断されやすいでしょう。

>> 破産手続開始原因となる債務超過とは?

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